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59 マッチョさん、スッキリする
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朝だ。野営とはいえ久々にぐっすりと眠ったら頭がスッキリした。身体も軽い。
きちんとした食事、トレーニング、睡眠の三つは何がなんでも欠かせないものだな。
軽くストレッチをする。疲労感はあるが、悪くは無い。
万全とは言えない状態で何体も魔物を倒したと思うと、少しだけ強さというものへの実感が湧いてくる。体幹トレーニングを取り入れたタイミングが転換点だったと思う。あれをしっかりやり続けていたからこそ、大斧が思ったところに無意識で運べる。
睡眠不足が酷くなるにつれて不機嫌というか無感情になってしまっていたが、フェイスさんに旅に誘われたことを感謝しないといけないな。とはいえやはりしっかりと眠りたいが。
外に出るとフェイスさんが起きていた。もしかして一晩中歩哨をしていたのか?
「よう、起きたか。」
「フェイスさん、おはようございます。ずっと起きていたんですか?」
「龍族の連中がオカしかったからなぁ。なにか仕掛けてくるとしたら夜だと思ったんだが、なにも無かったな。ツイグはどうした?」
「まだ寝てますよ。よっぽど疲れていたのでしょう。」
それは私もおなじだ。毎日こうまで歩いて戦闘を繰り返していたら、やはり足に来る。精神的にもキツくなる。
「俺も少し眠っておく。一時間経ったら起こしてくれ。なにも起きないだろうが、いちおう歩哨頼むぞ。」
「分かりました。」
食事を作って食べながらでいいだろう。私は廃墟の入り口で朝食を作って食べた。ふたりの分は準備だけして、起きてから食べさせたらいいだろう。
あれ。龍族の一人がこちらに来た。私はいちおう斧に手を伸ばす。
「争う気は無い。話に来た。」
無骨な物言いだな。
「私とでしょうか、フェイスさんにでしょうか?」
「あの石碑のことを知っている人間なら、誰でもいい。」
じゃぁ私でいいか。フェイスさんは寝たばかりだしな。
「あの石碑についてどこまで知っている?」
答えてもいいだろう。
「女性と子どものお墓、ということまでしか知りません。そもそもあの女性が誰なのかも分かっていません。」
「お前たち以外に誰か石碑について知っている人間はいるか?」
「石碑の存在自体は数人の人族が知っているはずです。書かれた内容については昨日知りました。」
フェイスさんがパーティでここに来たときに見つけたのだ。パーティの一人であったルリさんも知っているだろうし、他のメンバーも知っているだろう。
「・・・そうか。人間王は知っているのか?」
「私には分かりません。」
ん?王家が先祖のお墓を知らないなどということがあるのだろうか?
「・・・そうか。朝食の邪魔をしたな。一時間後にはここを出て里に向かう。」
「一時間半後にしてください。フェイスさんに伝えておきます。」
朝食を摂る時間くらい大切にしなければ。
「承知した。・・・フェイス?あの御仁はもしや鬼人フェイスか?」
あの人そういう名前で呼ばれていたのか。
「たぶん本人だと思います。」
鬼人とまで呼ばれる人族はフェイスさん以外にいないだろう。
フェイスさんが起きてツイグも起こし、朝食を食べてもらった。
「さっき龍族の人が来て、お墓について少し聞かれましたよ。」
「あー、うとうとしながら聞いてた。龍族の宗教が絡むと面倒だな。」
「彼らの宗教とあの石碑は、なにか関係があるんでしょうか?」
「分からん。それも族長に聞いてみないとな。」
「マッチョさん、龍族ってほかの種族よりも精霊信仰が深いらしいんすよ。」
ツイグでも知っている事なのか。深いというと?
「アイツらの宗教では、水と一体化する修行を二百年以上続けて水の精霊の恩寵を受けられるという考え方のはずだ。長く辛い修行自体がアイツらの生活の一部でもある。」
なるほど。私の龍族に対しての第一印象は、僧兵だ。あながち間違いでも無いだろう。
「実際にその修行で水の精霊の恩寵が受けられたのでしょうか?」
「さぁな。肝心なところは、そこまでやらないと精霊に認められないと、アイツらが本気で考えている点だ。精霊至上主義みたいな言い方をしてもいいかもな。」
二百年の修行か。
私は二百年も筋トレを続けられるだろうか?
いや、愚問だな。
寿命が続く限り、肉体が動く限り、私はトレーニングを続けるだろう。
彼らにとって修行が生活の一部であるように、トレーニーにとって筋トレは人生の一部であるのだ。
きちんとした食事、トレーニング、睡眠の三つは何がなんでも欠かせないものだな。
軽くストレッチをする。疲労感はあるが、悪くは無い。
万全とは言えない状態で何体も魔物を倒したと思うと、少しだけ強さというものへの実感が湧いてくる。体幹トレーニングを取り入れたタイミングが転換点だったと思う。あれをしっかりやり続けていたからこそ、大斧が思ったところに無意識で運べる。
睡眠不足が酷くなるにつれて不機嫌というか無感情になってしまっていたが、フェイスさんに旅に誘われたことを感謝しないといけないな。とはいえやはりしっかりと眠りたいが。
外に出るとフェイスさんが起きていた。もしかして一晩中歩哨をしていたのか?
「よう、起きたか。」
「フェイスさん、おはようございます。ずっと起きていたんですか?」
「龍族の連中がオカしかったからなぁ。なにか仕掛けてくるとしたら夜だと思ったんだが、なにも無かったな。ツイグはどうした?」
「まだ寝てますよ。よっぽど疲れていたのでしょう。」
それは私もおなじだ。毎日こうまで歩いて戦闘を繰り返していたら、やはり足に来る。精神的にもキツくなる。
「俺も少し眠っておく。一時間経ったら起こしてくれ。なにも起きないだろうが、いちおう歩哨頼むぞ。」
「分かりました。」
食事を作って食べながらでいいだろう。私は廃墟の入り口で朝食を作って食べた。ふたりの分は準備だけして、起きてから食べさせたらいいだろう。
あれ。龍族の一人がこちらに来た。私はいちおう斧に手を伸ばす。
「争う気は無い。話に来た。」
無骨な物言いだな。
「私とでしょうか、フェイスさんにでしょうか?」
「あの石碑のことを知っている人間なら、誰でもいい。」
じゃぁ私でいいか。フェイスさんは寝たばかりだしな。
「あの石碑についてどこまで知っている?」
答えてもいいだろう。
「女性と子どものお墓、ということまでしか知りません。そもそもあの女性が誰なのかも分かっていません。」
「お前たち以外に誰か石碑について知っている人間はいるか?」
「石碑の存在自体は数人の人族が知っているはずです。書かれた内容については昨日知りました。」
フェイスさんがパーティでここに来たときに見つけたのだ。パーティの一人であったルリさんも知っているだろうし、他のメンバーも知っているだろう。
「・・・そうか。人間王は知っているのか?」
「私には分かりません。」
ん?王家が先祖のお墓を知らないなどということがあるのだろうか?
「・・・そうか。朝食の邪魔をしたな。一時間後にはここを出て里に向かう。」
「一時間半後にしてください。フェイスさんに伝えておきます。」
朝食を摂る時間くらい大切にしなければ。
「承知した。・・・フェイス?あの御仁はもしや鬼人フェイスか?」
あの人そういう名前で呼ばれていたのか。
「たぶん本人だと思います。」
鬼人とまで呼ばれる人族はフェイスさん以外にいないだろう。
フェイスさんが起きてツイグも起こし、朝食を食べてもらった。
「さっき龍族の人が来て、お墓について少し聞かれましたよ。」
「あー、うとうとしながら聞いてた。龍族の宗教が絡むと面倒だな。」
「彼らの宗教とあの石碑は、なにか関係があるんでしょうか?」
「分からん。それも族長に聞いてみないとな。」
「マッチョさん、龍族ってほかの種族よりも精霊信仰が深いらしいんすよ。」
ツイグでも知っている事なのか。深いというと?
「アイツらの宗教では、水と一体化する修行を二百年以上続けて水の精霊の恩寵を受けられるという考え方のはずだ。長く辛い修行自体がアイツらの生活の一部でもある。」
なるほど。私の龍族に対しての第一印象は、僧兵だ。あながち間違いでも無いだろう。
「実際にその修行で水の精霊の恩寵が受けられたのでしょうか?」
「さぁな。肝心なところは、そこまでやらないと精霊に認められないと、アイツらが本気で考えている点だ。精霊至上主義みたいな言い方をしてもいいかもな。」
二百年の修行か。
私は二百年も筋トレを続けられるだろうか?
いや、愚問だな。
寿命が続く限り、肉体が動く限り、私はトレーニングを続けるだろう。
彼らにとって修行が生活の一部であるように、トレーニーにとって筋トレは人生の一部であるのだ。
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