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38 マッチョさん、ランクル岡田の声を聞く
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二人がかりで接近戦を挑む。里長が前衛、私が後衛だ。さすがドワーフの長だけある。コボルトに片手斧は刺さらないが、着実にダメージを蓄積させているようだ。苛立ちを隠せないコボルトの声がその証左だ。里長がダメージを与え続け、魔法は私が捌く。そのうち魔法切れになるだろう。その時こそ倒すタイミングだ。ドロスさんが来たら三人がかりで倒してもいい。
前衛と後衛を入れ替えてみた。ダメージは私の方が大きく入れられるようだが、魔法を捌くのは里長の片手斧では難しいらしい。すぐに前衛と後衛を切り替えた。しかしなかなか素早さがある。適切な距離の取り方をしないと、別の戦場に影響を与えそうだ。
ん?
里長と私の間に入って来た。私から落としに来たのか?
いや違う!魔法を弾き返しづらい距離に陣取ったのだ。こちらの消極策が見抜かれていたか。
「魔法が来る前に落とします!」
「分かった!」
私の渾身の一撃と、里長の一撃が入った。が、身体強化魔法の影響か、倒れない。
マズい。魔法が発射される。スクルトさんの騎馬隊の方向だ。
「クッソ、魔法を止めやがれ、このイカレコボルトが!」
間に合わない。しかも今までより大きい氷の槍だ。この魔法は溜めて威力を強化できるのか!
ふとランドクルーザー岡田の言葉を思い出した。
”筋肉は生活のほぼすべてに有益である。しかし万能ではない。”
いまその言葉は必要無い。
”しかし万能ではない。”
いま筋肉が有効ではないその局面なのだ。なにか手が無いものか?
”万能ではない。”
ええい鬱陶しい!ちょっと黙っていろ!私の脳内のランクル岡田!
走馬燈のように脳内をいくつもの考えが浮かんだが、有効な手立てが無い。犠牲者を出してしまうのか?魔法がスクルトさんの部隊に向かって発射されてしまった。クッソぉ!
「うおおおお!」
急に現れたドワーフが、高速で飛んでいく大きな氷の槍を、手斧でぶった切った。
誰だ?
「助かったが、お前誰だ?」
里長も知らないのか。
里長の問いに答えないまま、そのドワーフはものすごいスピードで中型固有種へ突っ込んでいき、脳天に斧を食らわせ一撃で倒した。わずかに光を放っている。見事な筋肉だ。身長155cm、体脂肪率7%、体重70kgというところか。これほど立派なドワーフを見ていたら、さすがに気づかないはずがない。どういうワケだ?
固有種の頭をもう一度カチ割りトドメを刺したところで、そのドワーフは光を失い、見たことのあるドワーフになった。里に着く前に最初に会った、あの牛飼いのドワーフだ。身体も小さくなった。
「光だ・・・」
「デカくなって、強くなったぞ・・・」
「・・・精霊の恩寵だ。精霊の恩寵だぞ!俺たちドワーフにやって来たんだ!」
「勇者だ!俺たちドワーフに勇者が出たぞ!」
ドワーフたちが湧き立つ。ドロスさんも大型固有種を倒してこちらにやって来た。一人であのサイズを片づけてしまった。私とフェイスさんを合わせたよりもドロスさんは強い。
「ちょっと見逃してしまったが、もしかして彼が一撃で倒してしまったのかの?」
「一撃でした。凄かったです。」
「里長。精霊の恩寵かの?」
「たぶんそうだろう。ってことは、やはり復活するのか、魔王・・・」
里長は複雑な表情をしている。ドワーフ族に勇者が出たことはめでたいが、それは魔王復活を意味する。牛飼いのドワーフは、自分がなにをやったのかまだ気づいていないようだ。スクルトさんたちは掃討戦に出た。敵の指揮系統が乱れたのであれば、残りは任せてしまっても大丈夫だろう。
「おい、たしかロキだったな。お前、身体は大丈夫か?」
「里長・・・」
「大丈夫かって聞いている。どこかおかしなところは無いか?」
「無いです。僕、なにをしたんですか?」
「お前が固有種を倒したんだ。一撃で。」
「僕が・・・いや、たしかに倒しましたね。そうか。僕が倒したのか・・・」
なんだか安定していないな。精霊の力というものは、こういうものなのだろうか?
「少し混乱しているようじゃの。里長、彼は城壁内で休ませた方が良いのではないのかな。残りは掃討戦になる。下げても問題無いじゃろう。」
「そうだな。ロキ、城壁の中に入ってドクターに診てもらえ。ドクターの許可が出てから話を聞く。おい!誰かロキを手助けしてやれ!」
ロキがふらりとした後に倒れそうになったので、私が抱きかかえた。たんに極度の疲労から意識を失っているようだ。こんな小さな身体で固有種の身体強化魔法を貫通して倒すだけのエネルギーを出したのだ。疲弊していてもおかしくない。
しかしさっきの肉体はいったいなんだったのだ?もう少し体脂肪率を絞ってキレを見せることができるとしたら、どんな大会で優勝できてもおかしくない。
前衛と後衛を入れ替えてみた。ダメージは私の方が大きく入れられるようだが、魔法を捌くのは里長の片手斧では難しいらしい。すぐに前衛と後衛を切り替えた。しかしなかなか素早さがある。適切な距離の取り方をしないと、別の戦場に影響を与えそうだ。
ん?
里長と私の間に入って来た。私から落としに来たのか?
いや違う!魔法を弾き返しづらい距離に陣取ったのだ。こちらの消極策が見抜かれていたか。
「魔法が来る前に落とします!」
「分かった!」
私の渾身の一撃と、里長の一撃が入った。が、身体強化魔法の影響か、倒れない。
マズい。魔法が発射される。スクルトさんの騎馬隊の方向だ。
「クッソ、魔法を止めやがれ、このイカレコボルトが!」
間に合わない。しかも今までより大きい氷の槍だ。この魔法は溜めて威力を強化できるのか!
ふとランドクルーザー岡田の言葉を思い出した。
”筋肉は生活のほぼすべてに有益である。しかし万能ではない。”
いまその言葉は必要無い。
”しかし万能ではない。”
いま筋肉が有効ではないその局面なのだ。なにか手が無いものか?
”万能ではない。”
ええい鬱陶しい!ちょっと黙っていろ!私の脳内のランクル岡田!
走馬燈のように脳内をいくつもの考えが浮かんだが、有効な手立てが無い。犠牲者を出してしまうのか?魔法がスクルトさんの部隊に向かって発射されてしまった。クッソぉ!
「うおおおお!」
急に現れたドワーフが、高速で飛んでいく大きな氷の槍を、手斧でぶった切った。
誰だ?
「助かったが、お前誰だ?」
里長も知らないのか。
里長の問いに答えないまま、そのドワーフはものすごいスピードで中型固有種へ突っ込んでいき、脳天に斧を食らわせ一撃で倒した。わずかに光を放っている。見事な筋肉だ。身長155cm、体脂肪率7%、体重70kgというところか。これほど立派なドワーフを見ていたら、さすがに気づかないはずがない。どういうワケだ?
固有種の頭をもう一度カチ割りトドメを刺したところで、そのドワーフは光を失い、見たことのあるドワーフになった。里に着く前に最初に会った、あの牛飼いのドワーフだ。身体も小さくなった。
「光だ・・・」
「デカくなって、強くなったぞ・・・」
「・・・精霊の恩寵だ。精霊の恩寵だぞ!俺たちドワーフにやって来たんだ!」
「勇者だ!俺たちドワーフに勇者が出たぞ!」
ドワーフたちが湧き立つ。ドロスさんも大型固有種を倒してこちらにやって来た。一人であのサイズを片づけてしまった。私とフェイスさんを合わせたよりもドロスさんは強い。
「ちょっと見逃してしまったが、もしかして彼が一撃で倒してしまったのかの?」
「一撃でした。凄かったです。」
「里長。精霊の恩寵かの?」
「たぶんそうだろう。ってことは、やはり復活するのか、魔王・・・」
里長は複雑な表情をしている。ドワーフ族に勇者が出たことはめでたいが、それは魔王復活を意味する。牛飼いのドワーフは、自分がなにをやったのかまだ気づいていないようだ。スクルトさんたちは掃討戦に出た。敵の指揮系統が乱れたのであれば、残りは任せてしまっても大丈夫だろう。
「おい、たしかロキだったな。お前、身体は大丈夫か?」
「里長・・・」
「大丈夫かって聞いている。どこかおかしなところは無いか?」
「無いです。僕、なにをしたんですか?」
「お前が固有種を倒したんだ。一撃で。」
「僕が・・・いや、たしかに倒しましたね。そうか。僕が倒したのか・・・」
なんだか安定していないな。精霊の力というものは、こういうものなのだろうか?
「少し混乱しているようじゃの。里長、彼は城壁内で休ませた方が良いのではないのかな。残りは掃討戦になる。下げても問題無いじゃろう。」
「そうだな。ロキ、城壁の中に入ってドクターに診てもらえ。ドクターの許可が出てから話を聞く。おい!誰かロキを手助けしてやれ!」
ロキがふらりとした後に倒れそうになったので、私が抱きかかえた。たんに極度の疲労から意識を失っているようだ。こんな小さな身体で固有種の身体強化魔法を貫通して倒すだけのエネルギーを出したのだ。疲弊していてもおかしくない。
しかしさっきの肉体はいったいなんだったのだ?もう少し体脂肪率を絞ってキレを見せることができるとしたら、どんな大会で優勝できてもおかしくない。
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