38 / 133
38 マッチョさん、ランクル岡田の声を聞く
しおりを挟む
二人がかりで接近戦を挑む。里長が前衛、私が後衛だ。さすがドワーフの長だけある。コボルトに片手斧は刺さらないが、着実にダメージを蓄積させているようだ。苛立ちを隠せないコボルトの声がその証左だ。里長がダメージを与え続け、魔法は私が捌く。そのうち魔法切れになるだろう。その時こそ倒すタイミングだ。ドロスさんが来たら三人がかりで倒してもいい。
前衛と後衛を入れ替えてみた。ダメージは私の方が大きく入れられるようだが、魔法を捌くのは里長の片手斧では難しいらしい。すぐに前衛と後衛を切り替えた。しかしなかなか素早さがある。適切な距離の取り方をしないと、別の戦場に影響を与えそうだ。
ん?
里長と私の間に入って来た。私から落としに来たのか?
いや違う!魔法を弾き返しづらい距離に陣取ったのだ。こちらの消極策が見抜かれていたか。
「魔法が来る前に落とします!」
「分かった!」
私の渾身の一撃と、里長の一撃が入った。が、身体強化魔法の影響か、倒れない。
マズい。魔法が発射される。スクルトさんの騎馬隊の方向だ。
「クッソ、魔法を止めやがれ、このイカレコボルトが!」
間に合わない。しかも今までより大きい氷の槍だ。この魔法は溜めて威力を強化できるのか!
ふとランドクルーザー岡田の言葉を思い出した。
”筋肉は生活のほぼすべてに有益である。しかし万能ではない。”
いまその言葉は必要無い。
”しかし万能ではない。”
いま筋肉が有効ではないその局面なのだ。なにか手が無いものか?
”万能ではない。”
ええい鬱陶しい!ちょっと黙っていろ!私の脳内のランクル岡田!
走馬燈のように脳内をいくつもの考えが浮かんだが、有効な手立てが無い。犠牲者を出してしまうのか?魔法がスクルトさんの部隊に向かって発射されてしまった。クッソぉ!
「うおおおお!」
急に現れたドワーフが、高速で飛んでいく大きな氷の槍を、手斧でぶった切った。
誰だ?
「助かったが、お前誰だ?」
里長も知らないのか。
里長の問いに答えないまま、そのドワーフはものすごいスピードで中型固有種へ突っ込んでいき、脳天に斧を食らわせ一撃で倒した。わずかに光を放っている。見事な筋肉だ。身長155cm、体脂肪率7%、体重70kgというところか。これほど立派なドワーフを見ていたら、さすがに気づかないはずがない。どういうワケだ?
固有種の頭をもう一度カチ割りトドメを刺したところで、そのドワーフは光を失い、見たことのあるドワーフになった。里に着く前に最初に会った、あの牛飼いのドワーフだ。身体も小さくなった。
「光だ・・・」
「デカくなって、強くなったぞ・・・」
「・・・精霊の恩寵だ。精霊の恩寵だぞ!俺たちドワーフにやって来たんだ!」
「勇者だ!俺たちドワーフに勇者が出たぞ!」
ドワーフたちが湧き立つ。ドロスさんも大型固有種を倒してこちらにやって来た。一人であのサイズを片づけてしまった。私とフェイスさんを合わせたよりもドロスさんは強い。
「ちょっと見逃してしまったが、もしかして彼が一撃で倒してしまったのかの?」
「一撃でした。凄かったです。」
「里長。精霊の恩寵かの?」
「たぶんそうだろう。ってことは、やはり復活するのか、魔王・・・」
里長は複雑な表情をしている。ドワーフ族に勇者が出たことはめでたいが、それは魔王復活を意味する。牛飼いのドワーフは、自分がなにをやったのかまだ気づいていないようだ。スクルトさんたちは掃討戦に出た。敵の指揮系統が乱れたのであれば、残りは任せてしまっても大丈夫だろう。
「おい、たしかロキだったな。お前、身体は大丈夫か?」
「里長・・・」
「大丈夫かって聞いている。どこかおかしなところは無いか?」
「無いです。僕、なにをしたんですか?」
「お前が固有種を倒したんだ。一撃で。」
「僕が・・・いや、たしかに倒しましたね。そうか。僕が倒したのか・・・」
なんだか安定していないな。精霊の力というものは、こういうものなのだろうか?
「少し混乱しているようじゃの。里長、彼は城壁内で休ませた方が良いのではないのかな。残りは掃討戦になる。下げても問題無いじゃろう。」
「そうだな。ロキ、城壁の中に入ってドクターに診てもらえ。ドクターの許可が出てから話を聞く。おい!誰かロキを手助けしてやれ!」
ロキがふらりとした後に倒れそうになったので、私が抱きかかえた。たんに極度の疲労から意識を失っているようだ。こんな小さな身体で固有種の身体強化魔法を貫通して倒すだけのエネルギーを出したのだ。疲弊していてもおかしくない。
しかしさっきの肉体はいったいなんだったのだ?もう少し体脂肪率を絞ってキレを見せることができるとしたら、どんな大会で優勝できてもおかしくない。
前衛と後衛を入れ替えてみた。ダメージは私の方が大きく入れられるようだが、魔法を捌くのは里長の片手斧では難しいらしい。すぐに前衛と後衛を切り替えた。しかしなかなか素早さがある。適切な距離の取り方をしないと、別の戦場に影響を与えそうだ。
ん?
里長と私の間に入って来た。私から落としに来たのか?
いや違う!魔法を弾き返しづらい距離に陣取ったのだ。こちらの消極策が見抜かれていたか。
「魔法が来る前に落とします!」
「分かった!」
私の渾身の一撃と、里長の一撃が入った。が、身体強化魔法の影響か、倒れない。
マズい。魔法が発射される。スクルトさんの騎馬隊の方向だ。
「クッソ、魔法を止めやがれ、このイカレコボルトが!」
間に合わない。しかも今までより大きい氷の槍だ。この魔法は溜めて威力を強化できるのか!
ふとランドクルーザー岡田の言葉を思い出した。
”筋肉は生活のほぼすべてに有益である。しかし万能ではない。”
いまその言葉は必要無い。
”しかし万能ではない。”
いま筋肉が有効ではないその局面なのだ。なにか手が無いものか?
”万能ではない。”
ええい鬱陶しい!ちょっと黙っていろ!私の脳内のランクル岡田!
走馬燈のように脳内をいくつもの考えが浮かんだが、有効な手立てが無い。犠牲者を出してしまうのか?魔法がスクルトさんの部隊に向かって発射されてしまった。クッソぉ!
「うおおおお!」
急に現れたドワーフが、高速で飛んでいく大きな氷の槍を、手斧でぶった切った。
誰だ?
「助かったが、お前誰だ?」
里長も知らないのか。
里長の問いに答えないまま、そのドワーフはものすごいスピードで中型固有種へ突っ込んでいき、脳天に斧を食らわせ一撃で倒した。わずかに光を放っている。見事な筋肉だ。身長155cm、体脂肪率7%、体重70kgというところか。これほど立派なドワーフを見ていたら、さすがに気づかないはずがない。どういうワケだ?
固有種の頭をもう一度カチ割りトドメを刺したところで、そのドワーフは光を失い、見たことのあるドワーフになった。里に着く前に最初に会った、あの牛飼いのドワーフだ。身体も小さくなった。
「光だ・・・」
「デカくなって、強くなったぞ・・・」
「・・・精霊の恩寵だ。精霊の恩寵だぞ!俺たちドワーフにやって来たんだ!」
「勇者だ!俺たちドワーフに勇者が出たぞ!」
ドワーフたちが湧き立つ。ドロスさんも大型固有種を倒してこちらにやって来た。一人であのサイズを片づけてしまった。私とフェイスさんを合わせたよりもドロスさんは強い。
「ちょっと見逃してしまったが、もしかして彼が一撃で倒してしまったのかの?」
「一撃でした。凄かったです。」
「里長。精霊の恩寵かの?」
「たぶんそうだろう。ってことは、やはり復活するのか、魔王・・・」
里長は複雑な表情をしている。ドワーフ族に勇者が出たことはめでたいが、それは魔王復活を意味する。牛飼いのドワーフは、自分がなにをやったのかまだ気づいていないようだ。スクルトさんたちは掃討戦に出た。敵の指揮系統が乱れたのであれば、残りは任せてしまっても大丈夫だろう。
「おい、たしかロキだったな。お前、身体は大丈夫か?」
「里長・・・」
「大丈夫かって聞いている。どこかおかしなところは無いか?」
「無いです。僕、なにをしたんですか?」
「お前が固有種を倒したんだ。一撃で。」
「僕が・・・いや、たしかに倒しましたね。そうか。僕が倒したのか・・・」
なんだか安定していないな。精霊の力というものは、こういうものなのだろうか?
「少し混乱しているようじゃの。里長、彼は城壁内で休ませた方が良いのではないのかな。残りは掃討戦になる。下げても問題無いじゃろう。」
「そうだな。ロキ、城壁の中に入ってドクターに診てもらえ。ドクターの許可が出てから話を聞く。おい!誰かロキを手助けしてやれ!」
ロキがふらりとした後に倒れそうになったので、私が抱きかかえた。たんに極度の疲労から意識を失っているようだ。こんな小さな身体で固有種の身体強化魔法を貫通して倒すだけのエネルギーを出したのだ。疲弊していてもおかしくない。
しかしさっきの肉体はいったいなんだったのだ?もう少し体脂肪率を絞ってキレを見せることができるとしたら、どんな大会で優勝できてもおかしくない。
0
お気に入りに追加
46
あなたにおすすめの小説

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。


元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
2回目の人生は異世界で
黒ハット
ファンタジー
増田信也は初めてのデートの待ち合わせ場所に行く途中ペットの子犬を抱いて横断歩道を信号が青で渡っていた時に大型トラックが暴走して来てトラックに跳ね飛ばされて内臓が破裂して即死したはずだが、気が付くとそこは見知らぬ異世界の遺跡の中で、何故かペットの柴犬と異世界に生き返った。2日目の人生は異世界で生きる事になった
悪役令嬢に仕立て上げたいなら、ご注意を。
黎
ファンタジー
幼くして辺境伯の地位を継いだレナータは、女性であるがゆえに舐められがちであった。そんな折、社交場で伯爵令嬢にいわれのない罪を着せられてしまう。そんな彼女に隣国皇子カールハインツが手を差し伸べた──かと思いきや、ほとんど初対面で婚姻を申し込み、暇さえあれば口説き、しかもやたらレナータのことを知っている。怪しいほど親切なカールハインツと共に、レナータは事態の収拾方法を模索し、やがて伯爵一家への復讐を決意する。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生令嬢の食いしん坊万罪!
ねこたま本店
ファンタジー
訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。
そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。
プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。
しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。
プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。
これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。
こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。
今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。
※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。
※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる