32 / 133
32 マッチョさん、人間王に頼まれる
しおりを挟む
冗談のようにマズいプロテインだったが、さすがにこちらからお願いしてもらったものを残すワケにはいかない。ぜんぶ飲み切った。口直しに水が欲しくなる味だ。
「さて、二人とも少し外してくれないか。マッチョに重要な話がある。」
「はい、父上。」
「では失礼します。マッチョさん、後日お話をよろしくお願いします。」
「はい。楽しみにしています。」
わざわざ王宮の人間を外しての会話だ。なんだろう。
「まぁそう固くなるな。ちょっと軍を連れて旅に出てもらいたい。ドワーフ国だ。」
軍を連れての旅などまた剣呑な話だな。リラックスしろというのが無理な話だ。ドワーフ国になぜ軍が必要なのだろうか?
「順を追って話そう。俺とドワーフ王はこれらの機械を通じて交流があるのだが、ドワーフたちとの交流はあまり多くない。まぁ種族が違うのだから交換するもの自体があまり無いということもある。しかし魔物や魔王の脅威が明らかになったのだ。より強い武器や防具はドワーフに頼んで作ってもらうことになる。」
なるほど。武器に防具。それを作ってもらうためにドワーフと話をつけなくてはいけないのか。
「しかし、ドワーフの里に行くにはけっこうな山道を通らなくてはいけなくてな。交流が少なすぎて、街道がほとんど整備されていないままなのだ。魔物も出るし、一般人が通れる道ではない。マッチョには軍を引き連れて、ドワーフ国までの街道整備を頼みたい。まぁ実質的には工兵がやるから、お前が実際に街道を作る必要はない。」
ふむふむ。道に問題があるからドワーフの里まで軍を用いて道を作れと。
「街道整備の話や軍隊が行くことについては、ドワーフ王へ連絡しておく。で、ここからが本題だ。ドワーフ国で野生の牛から畜産に成功したらしい。ドワーフ王を口説いて、その技術者と種牛を我々人間国に持ってきてもらいたい。」
さらに畜産のために人を派遣してほしいと。肉は食べたいが、おそろしく重要な内容だ。
「いくら山道を通るとはいえ、それは私ではなく大臣クラスの外交官の方が行くべきなのではないでしょうか?」
人間国内で余計な敵を作りたくない。ましてや王宮に敵などもってのほかだ。いくら人間王のおぼえがよろしいとは言っても、宮廷での権力闘争などに巻き込まれたら私などひとたまりもなく潰されてしまうだろう。宮廷作法も権謀術策も私は持ち合わていない。特殊な技能を持った人間ということになっているから、ここに居られるのだ。
「ドワーフたちはな、筋肉質な肉体の人間を好むのだ。俺が直接行ければいいのだが、王が直接行くというのも、いろいろと面倒なことでな。ドワーフ王がこちらに来て機械の調子を見るのも、慣例として行っているからやれることであって本来は簡単に来てもらえるものではないのだ。」
なるほど。まるで属国の人間が奉仕に来た、という風に見られるのは一国の王として具合が悪い話だ。
「大臣たちではあまりにカラダが貧相で交渉にすらならないだろう。将軍クラスの人間が行くにしても、交渉に向いているというタイプではないし、お前ほど筋肉質でもない。大きな声では言えないが、あまり賢くないフェイスみたいな人間を想像してもらえればいい。」
賢くないフェイスさんか。ただの戦闘狂だな。あのイった時の目を思い出した。
「で、私が適任であると。大臣や外交官の方々も承知している話なのですよね?それに軍を動かすとなると軍の方からも私になにか圧力があるのではないでしょうか?」
「その辺は心配ない。もともと文官たちはドワーフ国に行きたがらないからな。軍の方も問題ない。お前の強さは知れ渡っているからな。むしろスクルトの中隊が名乗りを上げたぞ。お前とフェイスに助けられたようなものだからな。」
ああ、そういえばフェイスさんが言ってたな。固有種には軍隊が効かないって。
手記の解読作業も途中なのだが、牛が育つまでには時間がかかる。食糧事情というよりもタンパク質事情を早めに解決して、より精強な軍隊を作りたいという気持ちはよく分かる。
しかしこの状況、私はあまりにも王宮に関与しすぎてないだろうか?もめ事に巻き込まれたりしたら、私にはどうする事もできない。
いや、考えすぎか。私もこの世界の人間から見たら戦力のひとつなのだ。役に立っているうちは私に手だしはできないだろう。ややこしそうになったら王都を離れて、また冒険者になればいいだけの話だ。
「それに、ドワーフ達の肉体はマッチョも興味があるんじゃないのか?ソロウ周辺しか知らないのであれば、まだ見たことが無いだろう。デカいぞ。」
なにそれ見たい。
「その仕事、お受けします。」
未知の人種?亜人種?の未知の筋肉だ。
どういうトレーニングをして、どういう発達の仕方をしているのだろう。
昂るんじゃない、大胸筋。落ち着いて一緒に未知の筋肉と出会おう。
「さて、二人とも少し外してくれないか。マッチョに重要な話がある。」
「はい、父上。」
「では失礼します。マッチョさん、後日お話をよろしくお願いします。」
「はい。楽しみにしています。」
わざわざ王宮の人間を外しての会話だ。なんだろう。
「まぁそう固くなるな。ちょっと軍を連れて旅に出てもらいたい。ドワーフ国だ。」
軍を連れての旅などまた剣呑な話だな。リラックスしろというのが無理な話だ。ドワーフ国になぜ軍が必要なのだろうか?
「順を追って話そう。俺とドワーフ王はこれらの機械を通じて交流があるのだが、ドワーフたちとの交流はあまり多くない。まぁ種族が違うのだから交換するもの自体があまり無いということもある。しかし魔物や魔王の脅威が明らかになったのだ。より強い武器や防具はドワーフに頼んで作ってもらうことになる。」
なるほど。武器に防具。それを作ってもらうためにドワーフと話をつけなくてはいけないのか。
「しかし、ドワーフの里に行くにはけっこうな山道を通らなくてはいけなくてな。交流が少なすぎて、街道がほとんど整備されていないままなのだ。魔物も出るし、一般人が通れる道ではない。マッチョには軍を引き連れて、ドワーフ国までの街道整備を頼みたい。まぁ実質的には工兵がやるから、お前が実際に街道を作る必要はない。」
ふむふむ。道に問題があるからドワーフの里まで軍を用いて道を作れと。
「街道整備の話や軍隊が行くことについては、ドワーフ王へ連絡しておく。で、ここからが本題だ。ドワーフ国で野生の牛から畜産に成功したらしい。ドワーフ王を口説いて、その技術者と種牛を我々人間国に持ってきてもらいたい。」
さらに畜産のために人を派遣してほしいと。肉は食べたいが、おそろしく重要な内容だ。
「いくら山道を通るとはいえ、それは私ではなく大臣クラスの外交官の方が行くべきなのではないでしょうか?」
人間国内で余計な敵を作りたくない。ましてや王宮に敵などもってのほかだ。いくら人間王のおぼえがよろしいとは言っても、宮廷での権力闘争などに巻き込まれたら私などひとたまりもなく潰されてしまうだろう。宮廷作法も権謀術策も私は持ち合わていない。特殊な技能を持った人間ということになっているから、ここに居られるのだ。
「ドワーフたちはな、筋肉質な肉体の人間を好むのだ。俺が直接行ければいいのだが、王が直接行くというのも、いろいろと面倒なことでな。ドワーフ王がこちらに来て機械の調子を見るのも、慣例として行っているからやれることであって本来は簡単に来てもらえるものではないのだ。」
なるほど。まるで属国の人間が奉仕に来た、という風に見られるのは一国の王として具合が悪い話だ。
「大臣たちではあまりにカラダが貧相で交渉にすらならないだろう。将軍クラスの人間が行くにしても、交渉に向いているというタイプではないし、お前ほど筋肉質でもない。大きな声では言えないが、あまり賢くないフェイスみたいな人間を想像してもらえればいい。」
賢くないフェイスさんか。ただの戦闘狂だな。あのイった時の目を思い出した。
「で、私が適任であると。大臣や外交官の方々も承知している話なのですよね?それに軍を動かすとなると軍の方からも私になにか圧力があるのではないでしょうか?」
「その辺は心配ない。もともと文官たちはドワーフ国に行きたがらないからな。軍の方も問題ない。お前の強さは知れ渡っているからな。むしろスクルトの中隊が名乗りを上げたぞ。お前とフェイスに助けられたようなものだからな。」
ああ、そういえばフェイスさんが言ってたな。固有種には軍隊が効かないって。
手記の解読作業も途中なのだが、牛が育つまでには時間がかかる。食糧事情というよりもタンパク質事情を早めに解決して、より精強な軍隊を作りたいという気持ちはよく分かる。
しかしこの状況、私はあまりにも王宮に関与しすぎてないだろうか?もめ事に巻き込まれたりしたら、私にはどうする事もできない。
いや、考えすぎか。私もこの世界の人間から見たら戦力のひとつなのだ。役に立っているうちは私に手だしはできないだろう。ややこしそうになったら王都を離れて、また冒険者になればいいだけの話だ。
「それに、ドワーフ達の肉体はマッチョも興味があるんじゃないのか?ソロウ周辺しか知らないのであれば、まだ見たことが無いだろう。デカいぞ。」
なにそれ見たい。
「その仕事、お受けします。」
未知の人種?亜人種?の未知の筋肉だ。
どういうトレーニングをして、どういう発達の仕方をしているのだろう。
昂るんじゃない、大胸筋。落ち着いて一緒に未知の筋肉と出会おう。
0
お気に入りに追加
46
あなたにおすすめの小説


元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
2回目の人生は異世界で
黒ハット
ファンタジー
増田信也は初めてのデートの待ち合わせ場所に行く途中ペットの子犬を抱いて横断歩道を信号が青で渡っていた時に大型トラックが暴走して来てトラックに跳ね飛ばされて内臓が破裂して即死したはずだが、気が付くとそこは見知らぬ異世界の遺跡の中で、何故かペットの柴犬と異世界に生き返った。2日目の人生は異世界で生きる事になった
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生令嬢の食いしん坊万罪!
ねこたま本店
ファンタジー
訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。
そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。
プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。
しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。
プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。
これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。
こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。
今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。
※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。
※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。
稀代の悪女として処刑されたはずの私は、なぜか幼女になって公爵様に溺愛されています
水谷繭
ファンタジー
グレースは皆に悪女と罵られながら処刑された。しかし、確かに死んだはずが目を覚ますと森の中だった。その上、なぜか元の姿とは似ても似つかない幼女の姿になっている。
森を彷徨っていたグレースは、公爵様に見つかりお屋敷に引き取られることに。初めは戸惑っていたグレースだが、都合がいいので、かわい子ぶって公爵家の力を利用することに決める。
公爵様にシャーリーと名付けられ、溺愛されながら過ごすグレース。そんなある日、前世で自分を陥れたシスターと出くわす。公爵様に好意を持っているそのシスターは、シャーリーを世話するという口実で公爵に近づこうとする。シスターの目的を察したグレースは、彼女に復讐することを思いつき……。
◇画像はGirly Drop様からお借りしました
◆エール送ってくれた方ありがとうございます!

授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草
ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)
10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。
親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。
同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……──
※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました!
※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる