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28 マッチョさん、王家の謎に迫る
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王が大きなため息をついた。
「やはりそうか。筋肉の付き方が俺以外の他の人間とあまりに違うのでな。俺が知る限り、この大陸で俺に似たような筋肉の付き方をしている人間はいないハズだ。歴代王家に伝わる手法で肉体を作るからな。」
「なぜ王家だけの手法なのですか?」筋トレは広く知られるべきものだと思う。
「肉が足りないのだよ。私が知っている手法で鍛えているならば、意味は分かるはずだ。」
なるほど。タンパク質が足りないから、末端まで筋トレをさせることはできない。タンパク質が不足したまま筋トレをすると、筋肉が縮小してしまうこともあるからだ。しかし王や王家が弱体化することは避けなければこの世界は混乱する。だから筋トレは王家のものであり、一般庶民がやすやすとできるものではないのか。
私は知らず知らずのうちに、この世界の王族の嗜みを身につけていたようだ。
「筋肉がデカいって、そんな大仰な話なんですか?」
「適切な食事とトレーニングを知るには、栄養学に数学も必要だ。人間の身体構造を理解するということはそんな簡単なものではないし、カネもかかる。」
まったくもって同意する。脳筋とまで言われることもあるが、そもそも頭が良くない人間では計画的に肉体を作ることができないのだ。しかし、うーん・・・
「カラダを鍛えることが特殊なことだとしたら、私は拘束されたりするんでしょうか?」
あるいは殺されるとか。
「いや、ただの確認だ。俺が統治している街のひとつを救ってくれた恩人を拘束などするワケが無いだろう。オークキングを倒した人間に私ひとりで会いにきたことを誠意と捉えてくれ。」
ひとまず良識的な王様で助かった。王政で強権発動をされたら、いくら筋肉があったところで敵うワケがない。軍隊や警察を相手にするために筋肉を鍛えたワケではない。
「オマエ、異世界ってか、別の世界から来たのか。へぇー。」
フェイスさんはピンと来ていないらしい。
「異世界人がやってくることは吉兆でもあり凶兆でもある。多くのものをもたらしてくれるが、この世界を歪めているのではないかという説もある。実際に初代王が人間の国を統一した頃に、魔物が出始めてきて人間や他の種族を襲ってきたらしいという記録があるからな。」
「マッチョ。オマエ自分から異世界人だとか言わない方がいいぞ。まぁヘンなやつだと思って相手にされないだろうけどな。」
「言いませんよ。でも、筋肉で異世界人であると疑ったのであれば、ルリさんには伝えておいた方がいいと思います。王様と私の筋肉が似ているとか、たぶん気づいてますよ。」ただの筋肉フェチではなく、あの聡明さで王に似た筋肉が気になったのかも・・・いや。あの目はガチの筋肉フェチだ。
「そうだな。アイツ、筋肉スキだからなぁ・・・」
おそらく並外れたスキではない。
「話を戻そう。君がこの世界に来た時には、もう魔物はいたのか。それともいなかったのか。」
私がこの世界に来たことで、魔物も一緒に出現したと思われているのか。いや、思われているというよりもただの確認だな。
「私は気づいたらタベルナ村の近くにいました。そして魔物とすぐに戦闘になって、魔物が逃げました。つまり、私がいる前から魔物がいたということになります。その後はすぐにソロウのギルドにお世話になって、今に至ります。」
「ふむ。あまり気を悪くしないでくれ。ただの確認だ。魔物の大量発生、異世界人の出現、大型固有種の出現となると、本格的に魔王復活について対策と検討をしなくてはいけないからな。」
「そもそも魔王って、どういう相手というか、敵なのでしょうか?」
「あんまり分かってねぇんだ。初代人間王が封印したことは分かっているが、人間国内で跡目争いが起きてな。初代王の頃の記録なんかもその時かなり消えてしまったって聞いてる。」
「そこで本題だ。これを見て欲しい。こればかりは俺個人が王妃に頼み込んで、借りないといけないものでな。」
人間王が箱からなにかを出した。ティアラだ。さっき王妃が身につけていたものだろう。
「初代王が造らせたと言われるティアラだ。いまは王妃の象徴として、さっきのような公式の場で王妃が身につけなくてはいけないことになっている。手に取って見てみて欲しい。」
ローマ字、いや英語っぽいな。彫られた文字なので数百年永らえたのだろう。
「文字らしきものが書かれているだろう?初代人間王が記録用に用いていたとされる暗号文だ。この文字の解読がまったく進んでいない。この暗号文で書かれた手記がいくつか残っていて、魔王への対策を練ることができるかもしれない。私も魔王についてきちんと知りたいのだよ。」
「むかし見た遺跡にも、こんな記号が彫ってましたね。これ初代王の暗号だったんですか。」
With All of my Love to Sxxxx
最後の文字が読めないな。
「女性に送ったもののようですね。私のいた世界で広く使われていた言語のひとつです。」
「読めるのか!その文字が!」
「簡単なものであればなんとか読めます。サシスセソで始まる女性の名前に心当たりはありますか?」
「いや・・・そういう女性の記録は無かったな。」
そうなのか。じゃぁ誰なんだろうな。Sさん。
「それが誰であるにせよ、読めるということが大切だ。これで魔王のことが多少なりとも分かるだろう。」数百年のあいだ謎だった文字が解読されようとしているのだ。人間王は満足そうだ。
「初代王の古い手記を元に、魔王の対策をするんですか?諸侯が納得しますかね?」
「建前としては魔物の対策としておく。魔物の襲来は諸侯にとっても頭痛のタネだからな。いずれにしてもこれは王家の務めだ。魔物の大量発生、大型固有種の出現、そして異世界人の到来。このタイミングで精霊の恩寵まで出てきたら、あとは魔王がいつこの世界を襲って来てもおかしくはない。」
私の存在が魔王出現にまでつながるのか。
「申し訳ないが、マッチョ。改めてお願いする。王家の手記の解読に手を貸してくれないだろうか?」
人間の最高権力者の願いだ。断れるワケがない。が、私も初代王の業績とやらに興味がある。
「分かりました。協力させていただきます。」
代々受け継がれてきた異世界での筋トレの方法。用があるのはこちらの方だ。
まさか異世界で筋トレをやっていた先人がいるとは思ってもみなかった。
「やはりそうか。筋肉の付き方が俺以外の他の人間とあまりに違うのでな。俺が知る限り、この大陸で俺に似たような筋肉の付き方をしている人間はいないハズだ。歴代王家に伝わる手法で肉体を作るからな。」
「なぜ王家だけの手法なのですか?」筋トレは広く知られるべきものだと思う。
「肉が足りないのだよ。私が知っている手法で鍛えているならば、意味は分かるはずだ。」
なるほど。タンパク質が足りないから、末端まで筋トレをさせることはできない。タンパク質が不足したまま筋トレをすると、筋肉が縮小してしまうこともあるからだ。しかし王や王家が弱体化することは避けなければこの世界は混乱する。だから筋トレは王家のものであり、一般庶民がやすやすとできるものではないのか。
私は知らず知らずのうちに、この世界の王族の嗜みを身につけていたようだ。
「筋肉がデカいって、そんな大仰な話なんですか?」
「適切な食事とトレーニングを知るには、栄養学に数学も必要だ。人間の身体構造を理解するということはそんな簡単なものではないし、カネもかかる。」
まったくもって同意する。脳筋とまで言われることもあるが、そもそも頭が良くない人間では計画的に肉体を作ることができないのだ。しかし、うーん・・・
「カラダを鍛えることが特殊なことだとしたら、私は拘束されたりするんでしょうか?」
あるいは殺されるとか。
「いや、ただの確認だ。俺が統治している街のひとつを救ってくれた恩人を拘束などするワケが無いだろう。オークキングを倒した人間に私ひとりで会いにきたことを誠意と捉えてくれ。」
ひとまず良識的な王様で助かった。王政で強権発動をされたら、いくら筋肉があったところで敵うワケがない。軍隊や警察を相手にするために筋肉を鍛えたワケではない。
「オマエ、異世界ってか、別の世界から来たのか。へぇー。」
フェイスさんはピンと来ていないらしい。
「異世界人がやってくることは吉兆でもあり凶兆でもある。多くのものをもたらしてくれるが、この世界を歪めているのではないかという説もある。実際に初代王が人間の国を統一した頃に、魔物が出始めてきて人間や他の種族を襲ってきたらしいという記録があるからな。」
「マッチョ。オマエ自分から異世界人だとか言わない方がいいぞ。まぁヘンなやつだと思って相手にされないだろうけどな。」
「言いませんよ。でも、筋肉で異世界人であると疑ったのであれば、ルリさんには伝えておいた方がいいと思います。王様と私の筋肉が似ているとか、たぶん気づいてますよ。」ただの筋肉フェチではなく、あの聡明さで王に似た筋肉が気になったのかも・・・いや。あの目はガチの筋肉フェチだ。
「そうだな。アイツ、筋肉スキだからなぁ・・・」
おそらく並外れたスキではない。
「話を戻そう。君がこの世界に来た時には、もう魔物はいたのか。それともいなかったのか。」
私がこの世界に来たことで、魔物も一緒に出現したと思われているのか。いや、思われているというよりもただの確認だな。
「私は気づいたらタベルナ村の近くにいました。そして魔物とすぐに戦闘になって、魔物が逃げました。つまり、私がいる前から魔物がいたということになります。その後はすぐにソロウのギルドにお世話になって、今に至ります。」
「ふむ。あまり気を悪くしないでくれ。ただの確認だ。魔物の大量発生、異世界人の出現、大型固有種の出現となると、本格的に魔王復活について対策と検討をしなくてはいけないからな。」
「そもそも魔王って、どういう相手というか、敵なのでしょうか?」
「あんまり分かってねぇんだ。初代人間王が封印したことは分かっているが、人間国内で跡目争いが起きてな。初代王の頃の記録なんかもその時かなり消えてしまったって聞いてる。」
「そこで本題だ。これを見て欲しい。こればかりは俺個人が王妃に頼み込んで、借りないといけないものでな。」
人間王が箱からなにかを出した。ティアラだ。さっき王妃が身につけていたものだろう。
「初代王が造らせたと言われるティアラだ。いまは王妃の象徴として、さっきのような公式の場で王妃が身につけなくてはいけないことになっている。手に取って見てみて欲しい。」
ローマ字、いや英語っぽいな。彫られた文字なので数百年永らえたのだろう。
「文字らしきものが書かれているだろう?初代人間王が記録用に用いていたとされる暗号文だ。この文字の解読がまったく進んでいない。この暗号文で書かれた手記がいくつか残っていて、魔王への対策を練ることができるかもしれない。私も魔王についてきちんと知りたいのだよ。」
「むかし見た遺跡にも、こんな記号が彫ってましたね。これ初代王の暗号だったんですか。」
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最後の文字が読めないな。
「女性に送ったもののようですね。私のいた世界で広く使われていた言語のひとつです。」
「読めるのか!その文字が!」
「簡単なものであればなんとか読めます。サシスセソで始まる女性の名前に心当たりはありますか?」
「いや・・・そういう女性の記録は無かったな。」
そうなのか。じゃぁ誰なんだろうな。Sさん。
「それが誰であるにせよ、読めるということが大切だ。これで魔王のことが多少なりとも分かるだろう。」数百年のあいだ謎だった文字が解読されようとしているのだ。人間王は満足そうだ。
「初代王の古い手記を元に、魔王の対策をするんですか?諸侯が納得しますかね?」
「建前としては魔物の対策としておく。魔物の襲来は諸侯にとっても頭痛のタネだからな。いずれにしてもこれは王家の務めだ。魔物の大量発生、大型固有種の出現、そして異世界人の到来。このタイミングで精霊の恩寵まで出てきたら、あとは魔王がいつこの世界を襲って来てもおかしくはない。」
私の存在が魔王出現にまでつながるのか。
「申し訳ないが、マッチョ。改めてお願いする。王家の手記の解読に手を貸してくれないだろうか?」
人間の最高権力者の願いだ。断れるワケがない。が、私も初代王の業績とやらに興味がある。
「分かりました。協力させていただきます。」
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