17 / 133
17 マッチョさん、補給する
しおりを挟む
「鶏卵と小麦粉はありますね。では調理場をお借りします。」
なにができるんだろう。
ギルドの詰所は、冒険者にギルド職員、それに防衛戦に参加した人たちでいっぱいになった。美味しそうにハムを食べている。いいなぁ。私の分も残しておいて欲しい。
「マッチョさん、マジ凄かったっす!」
「マッチョさん、ゴチっす!ハム激ウマっす!」
「マッチョさん、一生ついていきます!」
一生ついてこられても困るなぁ。
戦勝のお祝いだ。はっちゃける人たちもいるだろう。
「しかしマッチョ、お前スゴいな。パワーだけで身体強化魔法を使う魔物を倒すなんて話、聞いたことが無いぞ。というか固有種自体が珍しいんだけれどもな。」
フェイスさん、もう飲んでる。ルリさんも飲み始めた。
私も水分補給をしておこう。クエン酸を入れたいところだが、胃が受け付けない気がする。いつもの温かいお茶を飲むことにした。水分補給だけしっかりしておこう。
「フェイスさん、以前固有種と戦ったことがあるんですよね?」
「俺の時はパーティだったからな。その時も身体強化魔法を使う魔物だったんだが、魔法ってのはずっと使い続けられるワケじゃねぇんだ。だからひたすら打ち込んで、相手の魔法切れまで粘ってやっと倒したんだよ。今回のより小物だったしな。」
「逃げても良かったんですけれど、珍しいからやりたいって言って聞かなかったんですよね・・・」
ルリさんにとってはあんまりいい思い出ではないらしい。
「ま、まぁ今回は経験が生きただろう?やっておくモンなんだよ、チャンスがあれば、ああいうのは。」
「まぁたしかに今回はあの時の経験に助けられましたけれどもね・・・」
機嫌が悪いなぁ。話を変えよう。
「他の魔法を使う魔物ともやったことがあるんですか?」
「固有種自体が珍しいからな。俺は身体強化魔法のやつしか知らない。風の魔法を使うとか、火の魔法を使うとか、とんでもなく手強いやつもいるらしい。」
魔法、あるじゃないか。
「なんで人間は魔法が使えないんでしょうかね?」
「いや、なんで魔物は魔法が使えるんだ?」
ああ、そうか。そうだよな。魔物だけがなんで魔法を使えるんだろう?
「人間が魔法を使えるようにならないか、という研究もあったことはあったんですよね。でも魔法自体がどういうものなのか分からなかったんです。魔物は魔法が使えるものなんだっていう理解で止まっていますね。」
「ああそうだ、思い出した。魔法を使える魔物ってのは絶対に魔石ってのを持っている。魔物の体内にある石なんだが、これの正体がまったく分からない。で、初代王からの伝統で、魔石はすべて王都で保管することになっている。あれに魔物が寄ってくることは分かっているからな。王都の迎撃部隊で魔物をまとめて倒せばいいっていうワケだ。」
「魔石自体の研究も行われていますし、私もそちらの文献を読んだりもしたのですが、実際のところアレがなにを意味するのか分かっていないというのが現状ですね。なぜ魔物が寄ってくるのかも分かっていません。」
(へぇー、そうなんだ。)
(俺らの知らない話ばっかりだなぁ。)
「お前らには関係ないだろ。ソロウの生まれでソロウの育ちなんだ。辺境まで行ける冒険者なんかいないだろうが。」
「まぁそうすねぇ~」
「俺らじゃなぁ。マッチョさんやギルマスくらい強ければ行ってみたいけれどなぁ・・・」
旅か。私もこの街を離れてどこかに旅立つ時が来るんだろうか?
「できましたぞー!」
調理場から村長さんが一皿運んできてくれた。
これは・・・ハンバーグ?
「どうぞマッチョさん。これなら食べられるでしょう。」
食べられそうだ。
「いただきます。」
一口食べる。
旨い!
この世界に飛ばされてから一番旨い料理だった。なんだこの絶妙な香辛料の組み合わせは。つくねのような味を想像していたが、これは鶏肉のハンバーグだ。養鶏の手腕といい、料理の腕といい、この村長はどれだけデキる男なのだ。
「旨いです!」
(いいなぁ、マッチョさん・・・)
(いい匂いするもんなぁ・・・俺らも食いたいよなぁ・・・)
(一口でいいから、俺も食いたいなぁ・・・)
うーん、ひとりで食べづらい雰囲気になってきた。
「あのー、あと何皿くらいできますか?もっと食べたいんですが。」
「十皿はいけますぞ!すぐに焼き上げますから!」
「じゃー私にはもう一皿だけください。残りはみなさんで食べてください!」
また歓声が上がる。肉に対して歓声が上がる光景は嫌いではない。
「珍しい料理だな。名前はあるのか?」
「かの地ではハムブルクと呼ばれていましたね。辺境の地を旅していたときに、余った豚の肉片をミンチにして焼き上げていました。今回は鶏肉で代用して、タベルナ村秘伝のスパイスを混ぜ合わせてあります。」
「へぇー、旨そうだ。俺にも一皿頼めるか?」
「もちろんですぞ!」
ハンバーグという点がいい。ミンチにした分だけ肉の消化にエネルギーを使わずに済むからだ。その分だけ吸収率も上がる。BCAAほどの効能は無いにしても、これなら明日の筋肉痛を最小限に抑えられるはずだ。
なにができるんだろう。
ギルドの詰所は、冒険者にギルド職員、それに防衛戦に参加した人たちでいっぱいになった。美味しそうにハムを食べている。いいなぁ。私の分も残しておいて欲しい。
「マッチョさん、マジ凄かったっす!」
「マッチョさん、ゴチっす!ハム激ウマっす!」
「マッチョさん、一生ついていきます!」
一生ついてこられても困るなぁ。
戦勝のお祝いだ。はっちゃける人たちもいるだろう。
「しかしマッチョ、お前スゴいな。パワーだけで身体強化魔法を使う魔物を倒すなんて話、聞いたことが無いぞ。というか固有種自体が珍しいんだけれどもな。」
フェイスさん、もう飲んでる。ルリさんも飲み始めた。
私も水分補給をしておこう。クエン酸を入れたいところだが、胃が受け付けない気がする。いつもの温かいお茶を飲むことにした。水分補給だけしっかりしておこう。
「フェイスさん、以前固有種と戦ったことがあるんですよね?」
「俺の時はパーティだったからな。その時も身体強化魔法を使う魔物だったんだが、魔法ってのはずっと使い続けられるワケじゃねぇんだ。だからひたすら打ち込んで、相手の魔法切れまで粘ってやっと倒したんだよ。今回のより小物だったしな。」
「逃げても良かったんですけれど、珍しいからやりたいって言って聞かなかったんですよね・・・」
ルリさんにとってはあんまりいい思い出ではないらしい。
「ま、まぁ今回は経験が生きただろう?やっておくモンなんだよ、チャンスがあれば、ああいうのは。」
「まぁたしかに今回はあの時の経験に助けられましたけれどもね・・・」
機嫌が悪いなぁ。話を変えよう。
「他の魔法を使う魔物ともやったことがあるんですか?」
「固有種自体が珍しいからな。俺は身体強化魔法のやつしか知らない。風の魔法を使うとか、火の魔法を使うとか、とんでもなく手強いやつもいるらしい。」
魔法、あるじゃないか。
「なんで人間は魔法が使えないんでしょうかね?」
「いや、なんで魔物は魔法が使えるんだ?」
ああ、そうか。そうだよな。魔物だけがなんで魔法を使えるんだろう?
「人間が魔法を使えるようにならないか、という研究もあったことはあったんですよね。でも魔法自体がどういうものなのか分からなかったんです。魔物は魔法が使えるものなんだっていう理解で止まっていますね。」
「ああそうだ、思い出した。魔法を使える魔物ってのは絶対に魔石ってのを持っている。魔物の体内にある石なんだが、これの正体がまったく分からない。で、初代王からの伝統で、魔石はすべて王都で保管することになっている。あれに魔物が寄ってくることは分かっているからな。王都の迎撃部隊で魔物をまとめて倒せばいいっていうワケだ。」
「魔石自体の研究も行われていますし、私もそちらの文献を読んだりもしたのですが、実際のところアレがなにを意味するのか分かっていないというのが現状ですね。なぜ魔物が寄ってくるのかも分かっていません。」
(へぇー、そうなんだ。)
(俺らの知らない話ばっかりだなぁ。)
「お前らには関係ないだろ。ソロウの生まれでソロウの育ちなんだ。辺境まで行ける冒険者なんかいないだろうが。」
「まぁそうすねぇ~」
「俺らじゃなぁ。マッチョさんやギルマスくらい強ければ行ってみたいけれどなぁ・・・」
旅か。私もこの街を離れてどこかに旅立つ時が来るんだろうか?
「できましたぞー!」
調理場から村長さんが一皿運んできてくれた。
これは・・・ハンバーグ?
「どうぞマッチョさん。これなら食べられるでしょう。」
食べられそうだ。
「いただきます。」
一口食べる。
旨い!
この世界に飛ばされてから一番旨い料理だった。なんだこの絶妙な香辛料の組み合わせは。つくねのような味を想像していたが、これは鶏肉のハンバーグだ。養鶏の手腕といい、料理の腕といい、この村長はどれだけデキる男なのだ。
「旨いです!」
(いいなぁ、マッチョさん・・・)
(いい匂いするもんなぁ・・・俺らも食いたいよなぁ・・・)
(一口でいいから、俺も食いたいなぁ・・・)
うーん、ひとりで食べづらい雰囲気になってきた。
「あのー、あと何皿くらいできますか?もっと食べたいんですが。」
「十皿はいけますぞ!すぐに焼き上げますから!」
「じゃー私にはもう一皿だけください。残りはみなさんで食べてください!」
また歓声が上がる。肉に対して歓声が上がる光景は嫌いではない。
「珍しい料理だな。名前はあるのか?」
「かの地ではハムブルクと呼ばれていましたね。辺境の地を旅していたときに、余った豚の肉片をミンチにして焼き上げていました。今回は鶏肉で代用して、タベルナ村秘伝のスパイスを混ぜ合わせてあります。」
「へぇー、旨そうだ。俺にも一皿頼めるか?」
「もちろんですぞ!」
ハンバーグという点がいい。ミンチにした分だけ肉の消化にエネルギーを使わずに済むからだ。その分だけ吸収率も上がる。BCAAほどの効能は無いにしても、これなら明日の筋肉痛を最小限に抑えられるはずだ。
0
お気に入りに追加
46
あなたにおすすめの小説


元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
2回目の人生は異世界で
黒ハット
ファンタジー
増田信也は初めてのデートの待ち合わせ場所に行く途中ペットの子犬を抱いて横断歩道を信号が青で渡っていた時に大型トラックが暴走して来てトラックに跳ね飛ばされて内臓が破裂して即死したはずだが、気が付くとそこは見知らぬ異世界の遺跡の中で、何故かペットの柴犬と異世界に生き返った。2日目の人生は異世界で生きる事になった
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生令嬢の食いしん坊万罪!
ねこたま本店
ファンタジー
訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。
そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。
プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。
しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。
プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。
これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。
こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。
今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。
※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。
※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。
稀代の悪女として処刑されたはずの私は、なぜか幼女になって公爵様に溺愛されています
水谷繭
ファンタジー
グレースは皆に悪女と罵られながら処刑された。しかし、確かに死んだはずが目を覚ますと森の中だった。その上、なぜか元の姿とは似ても似つかない幼女の姿になっている。
森を彷徨っていたグレースは、公爵様に見つかりお屋敷に引き取られることに。初めは戸惑っていたグレースだが、都合がいいので、かわい子ぶって公爵家の力を利用することに決める。
公爵様にシャーリーと名付けられ、溺愛されながら過ごすグレース。そんなある日、前世で自分を陥れたシスターと出くわす。公爵様に好意を持っているそのシスターは、シャーリーを世話するという口実で公爵に近づこうとする。シスターの目的を察したグレースは、彼女に復讐することを思いつき……。
◇画像はGirly Drop様からお借りしました
◆エール送ってくれた方ありがとうございます!

授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草
ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)
10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。
親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。
同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……──
※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました!
※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる