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15 マッチョさん、完全に追い込む
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私の名前とフェイスさんの名前が何度も歓呼されている。
そうか。私が倒したのか。なんだか実感が湧かないな。
呼吸が落ち着かない。心臓の鼓動も静かにならない。
フェイスさんは早くも呼吸が落ち着いてきた。さすがだな。
「アイツら浮かれすぎだな。まだ300近くはいるぞ。まだ終わってねぇ。」
「大丈夫そうですよ。オークたちは軍の方へ向かっていきましたから。フェイスさん、マッチョさん、おつかれさまでした。」ルリさんが城壁から降りて迎えてくれた。
「状況が見たい。誰か肩を貸してくれ。マッチョ、お前も登ってこい。」
「私も誰か手を貸してください。」
完全に追い込み切った。自力で立てる気がしない。
「あ、俺やります!マッチョさん凄かったです!」見知った顔が肩を貸してくれた。
「ふぉっ、重っ!マッチョさん、斧だけでも置いて行ってもらえませんか?」
右手に斧を持ったままだった。少し硬直して手放しづらい。斧を置いて城壁へと向かった。さすがにあれだけ目立つ斧を盗む人間はいないだろう。
「やるな。一点突破から分断して、一気に包囲戦か。練兵も見事だな。」
「スクルトさんあたりですかね?馬の使い方から見て。ほら、あの重装馬兵の使い方とか。」
「あー、スクルトっぽいな。あの動きは。」
城壁に上がると、ルリさんに肩を預けてフェイスさんが話している。ああ、こういう関係だったのか、この二人。なんだか話しかけづらいな。
あれだけ大変そうに見えたオークの集団が、あっという間に蹴散らされていく。数の力でもあるが、軍という組織自体が強いのだろう。完全に組織された人間集団は、意思を持つひとつの生物に見える。統率されていない集団など敵ではないだろう。
「マッチョ、見てるか?魔物災害ってのは、本来はああやって軍隊で倒すもんなんだ。今回は特別にしんどかっただけだ。」
あれを特別にしんどいの一言で片づけるフェイスさんも、少しおかしい人だと思った。
「明日以降はバキバキだな。カラダの痛みが取れたら王都に行くぞ。さすがに今回の件はグランドマスターに報告する必要がある。お前が倒したあれ、たぶんオークキングだ。」
(オークキング?伝説の?)
(マジで存在してたのかよ。子どもを怖がらせるおとぎ話だと思ってた。)
(つーかマッチョさんハンパねぇな。伝説を倒しちゃったよ・・・)
すごくザワついている。強いとは思ったけれども、ケタ外れに強い魔物だったのか。
「あ、終わりましたね。さすが独立遊撃部隊です。」
「騎馬だけ先行させて来たんだろうな。100もいないぞ。三倍を蹴散らしたか。」
立派な鎧を装備した騎士が、馬に乗って南門へと向かってきた。
「開門!独立遊撃部隊隊長、スクルト中将です!」
「開門しろ!周辺警戒を怠るな!」
軍隊が入ってきた。歓声が上がり、手を上げてスクルト中将がそれに応えた。いちだんと歓声が大きくなる。
「お久しぶりです。センパイ。ルリさんもご無沙汰です。」
「スクルトさん、お久しぶりです。」
「おー、スクルト。いい動きだったな。見てたぞ。」
「ははっ!もと将軍にそこまで言われたら恐縮です。ところで城門近くであれだけの数のオークを、センパイが倒したんですか?200近く倒されてましたけれど・・・」
「俺とコイツな。マッチョっていうウチの新人だ。」
「相変わらず無茶しますね・・・」
「本当に・・・見ている方も気が気じゃないですよ。」
「今回は無茶しなくちゃいけなかったからな。しかしまぁいいタイミングで来てくれて助かった。久しぶりに死ぬかと思った。マッチョ、コイツはスクルト。俺の後輩で、お前の兄弟子ってことになるな。」
私はフェイスさんの弟子になっていたのか。
身長175cm程度、体重70㎏、体脂肪率はやはり15%程度というところだろうか。うーん、私も体脂肪率を上げた方がいいのだろうか?あとでじっくりと考えてみたい。
「マッチョです。初めまして、スクルトさん。」
握手のひとつもしたいところだが、追い込み過ぎで手が上がらない。
「スクルトです。現在の階級は中将で、対魔物用の遊撃部隊を率いています。しょうぐ・・・センパイとは剣や戦術の師匠という関係です。」
先輩と後輩。え、さっき将軍とか言ってた?
「フェイスさん、将軍だったんですか?」
「あー、言ってなかった気がするな。俺もルリも元々は軍属だ。んで冒険者になって、ギルドの管理人になった。」
「今回みたいなこともありますからね。ギルドには緊急の時に指揮ができる元軍属の配置が義務付けられているんですよ。」
へー。だからルリさんもあれだけの腕だったのか。で、この高さの城壁からオークを狙撃してたのか。
・・・絶対に怒らせないようにしよう。斧と弓では勝てる気がしない。
そうか。私が倒したのか。なんだか実感が湧かないな。
呼吸が落ち着かない。心臓の鼓動も静かにならない。
フェイスさんは早くも呼吸が落ち着いてきた。さすがだな。
「アイツら浮かれすぎだな。まだ300近くはいるぞ。まだ終わってねぇ。」
「大丈夫そうですよ。オークたちは軍の方へ向かっていきましたから。フェイスさん、マッチョさん、おつかれさまでした。」ルリさんが城壁から降りて迎えてくれた。
「状況が見たい。誰か肩を貸してくれ。マッチョ、お前も登ってこい。」
「私も誰か手を貸してください。」
完全に追い込み切った。自力で立てる気がしない。
「あ、俺やります!マッチョさん凄かったです!」見知った顔が肩を貸してくれた。
「ふぉっ、重っ!マッチョさん、斧だけでも置いて行ってもらえませんか?」
右手に斧を持ったままだった。少し硬直して手放しづらい。斧を置いて城壁へと向かった。さすがにあれだけ目立つ斧を盗む人間はいないだろう。
「やるな。一点突破から分断して、一気に包囲戦か。練兵も見事だな。」
「スクルトさんあたりですかね?馬の使い方から見て。ほら、あの重装馬兵の使い方とか。」
「あー、スクルトっぽいな。あの動きは。」
城壁に上がると、ルリさんに肩を預けてフェイスさんが話している。ああ、こういう関係だったのか、この二人。なんだか話しかけづらいな。
あれだけ大変そうに見えたオークの集団が、あっという間に蹴散らされていく。数の力でもあるが、軍という組織自体が強いのだろう。完全に組織された人間集団は、意思を持つひとつの生物に見える。統率されていない集団など敵ではないだろう。
「マッチョ、見てるか?魔物災害ってのは、本来はああやって軍隊で倒すもんなんだ。今回は特別にしんどかっただけだ。」
あれを特別にしんどいの一言で片づけるフェイスさんも、少しおかしい人だと思った。
「明日以降はバキバキだな。カラダの痛みが取れたら王都に行くぞ。さすがに今回の件はグランドマスターに報告する必要がある。お前が倒したあれ、たぶんオークキングだ。」
(オークキング?伝説の?)
(マジで存在してたのかよ。子どもを怖がらせるおとぎ話だと思ってた。)
(つーかマッチョさんハンパねぇな。伝説を倒しちゃったよ・・・)
すごくザワついている。強いとは思ったけれども、ケタ外れに強い魔物だったのか。
「あ、終わりましたね。さすが独立遊撃部隊です。」
「騎馬だけ先行させて来たんだろうな。100もいないぞ。三倍を蹴散らしたか。」
立派な鎧を装備した騎士が、馬に乗って南門へと向かってきた。
「開門!独立遊撃部隊隊長、スクルト中将です!」
「開門しろ!周辺警戒を怠るな!」
軍隊が入ってきた。歓声が上がり、手を上げてスクルト中将がそれに応えた。いちだんと歓声が大きくなる。
「お久しぶりです。センパイ。ルリさんもご無沙汰です。」
「スクルトさん、お久しぶりです。」
「おー、スクルト。いい動きだったな。見てたぞ。」
「ははっ!もと将軍にそこまで言われたら恐縮です。ところで城門近くであれだけの数のオークを、センパイが倒したんですか?200近く倒されてましたけれど・・・」
「俺とコイツな。マッチョっていうウチの新人だ。」
「相変わらず無茶しますね・・・」
「本当に・・・見ている方も気が気じゃないですよ。」
「今回は無茶しなくちゃいけなかったからな。しかしまぁいいタイミングで来てくれて助かった。久しぶりに死ぬかと思った。マッチョ、コイツはスクルト。俺の後輩で、お前の兄弟子ってことになるな。」
私はフェイスさんの弟子になっていたのか。
身長175cm程度、体重70㎏、体脂肪率はやはり15%程度というところだろうか。うーん、私も体脂肪率を上げた方がいいのだろうか?あとでじっくりと考えてみたい。
「マッチョです。初めまして、スクルトさん。」
握手のひとつもしたいところだが、追い込み過ぎで手が上がらない。
「スクルトです。現在の階級は中将で、対魔物用の遊撃部隊を率いています。しょうぐ・・・センパイとは剣や戦術の師匠という関係です。」
先輩と後輩。え、さっき将軍とか言ってた?
「フェイスさん、将軍だったんですか?」
「あー、言ってなかった気がするな。俺もルリも元々は軍属だ。んで冒険者になって、ギルドの管理人になった。」
「今回みたいなこともありますからね。ギルドには緊急の時に指揮ができる元軍属の配置が義務付けられているんですよ。」
へー。だからルリさんもあれだけの腕だったのか。で、この高さの城壁からオークを狙撃してたのか。
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