異世界マッチョ

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5 マッチョさん、トレーニングをする

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 ギルドが指定した宿は思っていたよりも安くて清潔だった。
 村長とはあとで合流して、筋トレのあとに浴場へ行く。
 まずはお金を確認する。金貨三枚と銀貨五枚。
 装備と服一式に金貨一枚。宿代が銅貨五枚。ウサギの香草焼が銀貨二枚。ゆで卵を村長に奢ってもらったが、十個で銅貨一枚だそうだ。卵もけっこう高い。やはりこの街もタンパク質が不足しているようだ。
 えーと、残りはだいたい銀貨24枚程度か。昼食と夕食にウサギを三皿食べたら、四日で無くなる計算だ。
 これはけっこう厳しい。装備ができたらすぐにでも魔物退治をしなくては。
 こんなにタンパク質が高価な世界では、私の筋肉が維持できない。
 コンビニで安価かつ良質なプロテインやサラダチキンが売っているって凄いことだったんだなぁ。
 
 さて。異世界に来て初めてのトレーニングだ。
 道具が無いのだから自重トレーニングしかやれない。
 まずはスクワット。ゆっくりと時間をかけて5秒かけてしゃがんで、5秒かけて戻す。うん、効いてきたな。最後に追い込みで高速プッシュ。10回、あと5回イケるか?ふぅ、なんとか追い込めた。
 次はプッシュアップだ。腕の間隔を調整して、やはり時間をかけて戻す。うん。ゆっくりやればそれなりに効果はあるじゃないか。最後に追い込みで高速プッシュ。10回が限度か。
 これをそれぞれ3セットでとりあえず筋トレ終了としよう。
 腹筋もやっておこうかと思ったが、そもそもこの手の運動の強度でどの程度の筋肉痛が出るのか分からない。トレーニング機材が無いと広背筋を鍛えるのも難しい。うーん、縄登りでもやった方がいいのだろうか。
 まぁ考えるのはあとにして、今回はこれで様子を見よう。明日の筋肉痛と相談しながら、メニューを考えていけばいい。
 部屋に置いてあった水差しで水を飲み、プロテイン代わりにゆで卵を五個食べておいた。最後にもう一杯水を飲む。
 「ふう・・・」
 肉体が別人になってこの世界に転生していたら、私は最初の魔物に殺されていたかもしれないな・・・
 今日ほど筋トレをしっかりやっていて良かったと思ったことは無かった。初めて大会で入賞した時も、ここまで筋肉に感謝していなかった。
 蓄積された努力は、しっかりと筋肉という実用的なかたちで実っている。

 が、しかし。しかしだ。
 トレーニングに迷いがある。
 私の筋肉は競技用の筋肉であって、運動や戦闘のための筋肉ではない。魅せるためのものだ。
 パワーだけならいいだろう。
 しかしスタミナは?アジリティは?
 そもそも今の一ケタに近い体脂肪率が適当であるのかすら分からない。
 なんなら筋肉よりも、有酸素運動による肺の強化が必要になるのかもしれない。
 トレーナーがいれば聞けるのだが、異世界にトレーナーはいないだろう。
 いや、迷ったら負けだ。
 トレーニングの方法も、強度も、リカバリーの方法も、試行錯誤するしかない。

 部屋を出て宿の待合室にいた村長と合流した。
 「なんか、ずいぶんと汗をかかれているんですが、激しいお祈りのようですねぇ。」
 「ええ、そうなんですよ。」
 たしかに筋トレは宗教だ。
 ところで着替えはどうしようか。着の身着のまま汗だくだ。
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