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39 高揚
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家に帰って風呂に入ってサーシャを抱いていたら、唐突に射精欲が湧いてきてきっちり射精してしまった。死を目前にして身体が子孫を残そうとしているんだろうか?こういうセックスは久しぶりだ。眠いし疲れているんだけれども、俺もちんこも落ち着かない。
「俺は初めて戦争に参加したんだ。戦争ってああいうものなのか」
まだ昂っている感覚だな。スポーツ選手が大きな大会で勝利すると眠れなくなる、などと言う話を聞いたことがある。オリンピックの選手村で消費されるコンドームの量が話題になったりしたな。こういう感覚なのかもしれない。
「敵を倒したら女の身体が欲しくなる、というのは殿方として普通のことです。お望みでしたら私の身体を好きなように使ってください」
「じゃあ次はサーシャが動いて俺を愉しませてくれ」
サーシャの髪からはまだ戦場の埃っぽい香りが残っていた。静かに揺れる整った乳房の味を楽しみ、美しい金髪が揺れる姿を見て愉しみ、漏れ出る喘ぎ声を聞きながら愉しんではいるのだが、どこかセックスに集中できずにいる。
実際に自分の手で人を殺したわけではない。だが、俺が作った武器があっさりと敵を無力化した。
あんなに簡単に人は死ぬのか。
同時に一騎討ちを好むというこの国の男たちの気持ちがわずかに理解できた気がした。手に武器を持ち敵を屈服させる感覚の昂りは、戦略や新兵器で敵を倒す昂りとは比べものにはならないだろう。ステゴロが俺が居た21世紀でもどこかで美徳とされていたのは、より原始的な勝利が性欲や生存と直接に結びついているからなのだろうな。
二度ほどサーシャが達した頃には、面倒なことを考えようとも思わなくなった。
イキ続けるサーシャの腰を上下させ、俺は二度目の射精をしたあと、ぷつりとスイッチが切れたように眠った。
どうやら爆睡していたらしい。
起きてみると長く光る髪の毛が俺の隣に落ちているのが見え、サーシャと過ごした夜であったことを物語っている。
収穫祭の喧噪、防衛戦の熱気、俺らしからぬ射精優先型セックス。なんだかまだ夢の中に居るようだ。身体と気持ちに残っている疲労感が非日常を経験したことを物語っている。
起き上がって窓代わりに塞いであった戸板を外した。明かり取り用に障子のようなものを作った方がいいかもしれないな。昼間は明るくなるし、夜は戸板をはめたらいい。
いい天気だが、もう昼過ぎなんじゃないのか?寝室のドアをノックする音が聞こえた。
「どうぞ」
「失礼します。おはようございますアラヒト様」
ちょっと肌艶がいいがいつものサーシャだ。俺の妙な昂りは一晩で消えたか。
「君の方から部屋に来るのは珍しいな。王様か王妃様から召し出されたかな?」
「いえ。軍からまだ王城に来るには及ばないとの報告がありましたので、取り急ぎお伝えしようと思いまして。あの後なのですが、王様が率いた軍によって掃討戦が行われ、そのままチュノス国境の砦を攻略し物資をペテルグへ運んでいる途中だそうです」
まだ寝起きなせいか、あんまり頭が回らない。
「その砦を壊したり占拠したりはしないのか」
「もともとはペテルグの砦だった場所ですが、さらに先を統治する力が無いとムサエフ将軍と王様は考えたのでしょう。チュノスの軍事力を分散させますし悪くない考えだと思います。またマハカムを攻撃していたチュノス本隊も国の後方を突かれたかたちになりましたので撤退したそうです。わが国の勝利です」
大きく国が動いたな。少し俺の手が震えている。
ああ。分かってはいた。分かってはいたけれど、俺が国を動かしたんだな。
英雄なら記念すべき初勝利を祝う夜だったのだろうが、あまりに現実感が無くて俺にとっては幻のような夜だった。
「お食事をお持ちしますね」
「サーシャ。君は昨日、俺と寝たんだよな?」
「ええ。いつもと少し違いましたが、猛々しいアラヒト様も素敵でしたよ」
サーシャの微笑みは夜を愉しんだ女性特有の悦びがこぼれていた。
やっぱり現実だったのか。
「各家からも街道を通じて予想よりも早く国境に到着しました。ほとんど空でしたし見知った砦なので攻略は簡単でした」
午後には昨日案内してくれた将校が事後の説明にわざわざ来てくれた。ムサエフ将軍が気を使ってくれたようだ。
「かなり捕虜が獲れたので、前の戦争の時に捕虜になった人間が戻ってきます。王家直轄軍が増員再編されることと新兵器が王家の専有であることで、地方の名家との力関係はやや王家の方が強くなりましたね」
戦争をしながら内政をやっていたということか。そういえば王様はわざわざ敵将を捕縛していたな。あれも捕虜交換の材料だったのだろう。
「今後の展開について、ムサエフ将軍や王様はなにか言ってましたか?」
「特別なことはなにも言っていなかったと思います。内政部も絡んで戦後補償の話になりますし。これから論功行賞が行われるでしょうが、特級はやはりアラヒトさんでしょうね。あんなにあっさり勝てるとは誰も思っていなかったですから。なにか欲しいものありますか?」
鉄は早く欲しいが・・・
「私の国内での位置づけは、王や軍に助言する国賓という立場で間違いないでしょうか?」
「今はそうですね」
「うーん・・・」
王家直轄軍と諜報部と内政部が分割されて王の直下にあることは分かっている。司法は王が前例をふまえた上で行い、立法は内政部と王妃が協力して行っていて、行政は王が行っていることに(建前上は)なっている。王家直轄軍はムサエフが練兵から工房まで抑えている。
「とりあえず鉄でしょうかね?次の戦争ではなにかしらこちらの武器の攻略法を考えてくるでしょうし」
「新兵器開発ということであればムサエフ将軍も優先的にアラヒトさんに鉄を回すと思いますよ。ただ鉄だけでは褒賞として足りないですね。領地やら地位やらを求めるのが一般的です。特級より下の褒賞をもらう人たちが要求しづらくなりますよ」
不自然じゃない程度の褒美を考えろ、というムサエフ将軍からの宿題か。
国賓という立場からより動きやすいポジションを国内でもらおうかと思ったが、単純に俺が面倒に巻き込まれたり暗殺されるリスクが高くなるだけのような気もする。
「まぁなにか考えておきます」
あまりに欲も無く欲しがらない人間は意味もなく不気味に思われるだろう。
どうしたものかなあぁ・・・
「俺は初めて戦争に参加したんだ。戦争ってああいうものなのか」
まだ昂っている感覚だな。スポーツ選手が大きな大会で勝利すると眠れなくなる、などと言う話を聞いたことがある。オリンピックの選手村で消費されるコンドームの量が話題になったりしたな。こういう感覚なのかもしれない。
「敵を倒したら女の身体が欲しくなる、というのは殿方として普通のことです。お望みでしたら私の身体を好きなように使ってください」
「じゃあ次はサーシャが動いて俺を愉しませてくれ」
サーシャの髪からはまだ戦場の埃っぽい香りが残っていた。静かに揺れる整った乳房の味を楽しみ、美しい金髪が揺れる姿を見て愉しみ、漏れ出る喘ぎ声を聞きながら愉しんではいるのだが、どこかセックスに集中できずにいる。
実際に自分の手で人を殺したわけではない。だが、俺が作った武器があっさりと敵を無力化した。
あんなに簡単に人は死ぬのか。
同時に一騎討ちを好むというこの国の男たちの気持ちがわずかに理解できた気がした。手に武器を持ち敵を屈服させる感覚の昂りは、戦略や新兵器で敵を倒す昂りとは比べものにはならないだろう。ステゴロが俺が居た21世紀でもどこかで美徳とされていたのは、より原始的な勝利が性欲や生存と直接に結びついているからなのだろうな。
二度ほどサーシャが達した頃には、面倒なことを考えようとも思わなくなった。
イキ続けるサーシャの腰を上下させ、俺は二度目の射精をしたあと、ぷつりとスイッチが切れたように眠った。
どうやら爆睡していたらしい。
起きてみると長く光る髪の毛が俺の隣に落ちているのが見え、サーシャと過ごした夜であったことを物語っている。
収穫祭の喧噪、防衛戦の熱気、俺らしからぬ射精優先型セックス。なんだかまだ夢の中に居るようだ。身体と気持ちに残っている疲労感が非日常を経験したことを物語っている。
起き上がって窓代わりに塞いであった戸板を外した。明かり取り用に障子のようなものを作った方がいいかもしれないな。昼間は明るくなるし、夜は戸板をはめたらいい。
いい天気だが、もう昼過ぎなんじゃないのか?寝室のドアをノックする音が聞こえた。
「どうぞ」
「失礼します。おはようございますアラヒト様」
ちょっと肌艶がいいがいつものサーシャだ。俺の妙な昂りは一晩で消えたか。
「君の方から部屋に来るのは珍しいな。王様か王妃様から召し出されたかな?」
「いえ。軍からまだ王城に来るには及ばないとの報告がありましたので、取り急ぎお伝えしようと思いまして。あの後なのですが、王様が率いた軍によって掃討戦が行われ、そのままチュノス国境の砦を攻略し物資をペテルグへ運んでいる途中だそうです」
まだ寝起きなせいか、あんまり頭が回らない。
「その砦を壊したり占拠したりはしないのか」
「もともとはペテルグの砦だった場所ですが、さらに先を統治する力が無いとムサエフ将軍と王様は考えたのでしょう。チュノスの軍事力を分散させますし悪くない考えだと思います。またマハカムを攻撃していたチュノス本隊も国の後方を突かれたかたちになりましたので撤退したそうです。わが国の勝利です」
大きく国が動いたな。少し俺の手が震えている。
ああ。分かってはいた。分かってはいたけれど、俺が国を動かしたんだな。
英雄なら記念すべき初勝利を祝う夜だったのだろうが、あまりに現実感が無くて俺にとっては幻のような夜だった。
「お食事をお持ちしますね」
「サーシャ。君は昨日、俺と寝たんだよな?」
「ええ。いつもと少し違いましたが、猛々しいアラヒト様も素敵でしたよ」
サーシャの微笑みは夜を愉しんだ女性特有の悦びがこぼれていた。
やっぱり現実だったのか。
「各家からも街道を通じて予想よりも早く国境に到着しました。ほとんど空でしたし見知った砦なので攻略は簡単でした」
午後には昨日案内してくれた将校が事後の説明にわざわざ来てくれた。ムサエフ将軍が気を使ってくれたようだ。
「かなり捕虜が獲れたので、前の戦争の時に捕虜になった人間が戻ってきます。王家直轄軍が増員再編されることと新兵器が王家の専有であることで、地方の名家との力関係はやや王家の方が強くなりましたね」
戦争をしながら内政をやっていたということか。そういえば王様はわざわざ敵将を捕縛していたな。あれも捕虜交換の材料だったのだろう。
「今後の展開について、ムサエフ将軍や王様はなにか言ってましたか?」
「特別なことはなにも言っていなかったと思います。内政部も絡んで戦後補償の話になりますし。これから論功行賞が行われるでしょうが、特級はやはりアラヒトさんでしょうね。あんなにあっさり勝てるとは誰も思っていなかったですから。なにか欲しいものありますか?」
鉄は早く欲しいが・・・
「私の国内での位置づけは、王や軍に助言する国賓という立場で間違いないでしょうか?」
「今はそうですね」
「うーん・・・」
王家直轄軍と諜報部と内政部が分割されて王の直下にあることは分かっている。司法は王が前例をふまえた上で行い、立法は内政部と王妃が協力して行っていて、行政は王が行っていることに(建前上は)なっている。王家直轄軍はムサエフが練兵から工房まで抑えている。
「とりあえず鉄でしょうかね?次の戦争ではなにかしらこちらの武器の攻略法を考えてくるでしょうし」
「新兵器開発ということであればムサエフ将軍も優先的にアラヒトさんに鉄を回すと思いますよ。ただ鉄だけでは褒賞として足りないですね。領地やら地位やらを求めるのが一般的です。特級より下の褒賞をもらう人たちが要求しづらくなりますよ」
不自然じゃない程度の褒美を考えろ、というムサエフ将軍からの宿題か。
国賓という立場からより動きやすいポジションを国内でもらおうかと思ったが、単純に俺が面倒に巻き込まれたり暗殺されるリスクが高くなるだけのような気もする。
「まぁなにか考えておきます」
あまりに欲も無く欲しがらない人間は意味もなく不気味に思われるだろう。
どうしたものかなあぁ・・・
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