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2、謁見
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家に近づくにつれ、俺は不安になってきた。
ずいぶんとボロい家だ。
木で柱を立てて、泥に近いモルタルかなんかで仕上げたのか?ところどころ剥がれてきている。
窓らしきものも無いな。木製の小さな扉のようなものがついているだけだ。ガラスですらない。
家というよりもほとんど小屋だな。近づいて声をかけてみる。
「すみませーん」
中から人が出てくる気配がした。
「あらぁ、どちら様かねぇ?」
日本語は通じるようだ。少しほっとした。
出て来たのは初老の女性だった。しかし粗末な身なりだな・・・全体的に貧しい土地に来たのかもしれない。が、それ以上に目を引くものがあった。
この女性、金髪に碧眼だ。日本語が通じるのにか?
「こんにちは。私どうやら道に迷ったみたいでして」
「あれまぁ!あれまぁ!」
なにか取り乱しているようだ。俺の何がそんな反応を起こしたのだ?
「アンタぁ、村長呼んできておくれよ!こりゃお触れにあった人だよ!」
お触れ?
「お触れというのはなんですか?」
「他の世界から人が来るっていうお触れだよ!アンタ知らないのかい?って来た本人がお触れの話を知るわけ無いわねぇ・・・」
他の世界。日本語が通じる金髪碧眼。見慣れない建物。
・・・やっぱり俺は死んだのか?
で、別の世界に来てしまったのか?
異世界転生というやつか。いや、異世界転移か。
異世界ってのは死なないと行けないらしいからなぁ。
金髪碧眼の渋い顔付きの旦那さんが村長のところまで俺を連れて行ってくれた。
で、金髪碧眼の若い時のヤンチャっぷりを隠し切れない村長が、俺をこの国の国王のところまで連れてきてくれた。
そして今、金髪碧眼の小男の国王と、あまりの美貌にひれ伏したくなる金髪碧眼の王女の前に座って村長と謁見しているワケだ。
「アレクセイ四世である」
「鍬物アラヒトと申します」
「異世界人のようだな。持ち物、身なり、伝承の通りだ」
どういう伝承なのか知らないが、すぐさまリンチに遭うといった具合では無さそうだ。
「アラヒト。伝承では異世界人はこの世の秩序を乱すとも、この世に富をもたらすとも言われている。そなたはどちらかな?」
「分かりません。私は呼ばれて来ただけですから」
実際には刺されたんだけれどね。
「殿下。まずはアラヒト様には休息と説明が必要かと思われます」
「ふーむ・・・まぁ妃の言う通りだろうな。アラヒト。今日のところは下がって休め」
状況も分からないまま太い取引先の社長に話されても、せいぜいこんなところだろう。まずは休息、次に情報収集だ。
異世界転生あるある的に俺にはなにかチート能力が与えられるものかと思っていたら、そういう甘いものでは無かった。おそらく最高級のヒトやモノが集められているであろう王城にしても、やけに古臭いというか文明の香りがしない。色々と前に居た世界のことを思い出して現代知識を国王に与えつつ、なんとか生き延びるしかないか。
部屋が用意され、使用人もひとりつけてもらえた。
金髪碧眼。アラサーだと思うが肌に張りがあるな。
「下女として遣わされました。サーシャと申します。なんなりとご命令を」
お手付きしてもいいということか。
だがサーシャの所作と動き。暗殺者や護衛、諜報員の類だな。
遊びとはいえ総合格闘技を学んでおいて良かった。体重差は15kg以上あるし相手は女性なのだが、絶対に俺が勝てる相手じゃない。
しかし本当に美しいな。均整な肉体、透き通るような肌、吸い込まれそうな碧眼、無意識に触れてしまいそうになる金髪。眉毛どころかまつ毛まで金髪じゃないか。
「・・・なにか?」
見とれていても仕方ないか。異世界に飛んできていきなり知らない女性に手をつける気にはなれない。
「サーシャ、で合っているか?この国について知っている事、近隣の国について知っている事、すべて教えてほしい。」
「はい、アラヒト様」
疲れてはいるが、まずは食い扶持のメドが欲しい。
知識というものはどこでどう使うのかで、効果がまったく違うものだ。
思いつくままに使ったり教えればいいというものでも無い。
ずいぶんとボロい家だ。
木で柱を立てて、泥に近いモルタルかなんかで仕上げたのか?ところどころ剥がれてきている。
窓らしきものも無いな。木製の小さな扉のようなものがついているだけだ。ガラスですらない。
家というよりもほとんど小屋だな。近づいて声をかけてみる。
「すみませーん」
中から人が出てくる気配がした。
「あらぁ、どちら様かねぇ?」
日本語は通じるようだ。少しほっとした。
出て来たのは初老の女性だった。しかし粗末な身なりだな・・・全体的に貧しい土地に来たのかもしれない。が、それ以上に目を引くものがあった。
この女性、金髪に碧眼だ。日本語が通じるのにか?
「こんにちは。私どうやら道に迷ったみたいでして」
「あれまぁ!あれまぁ!」
なにか取り乱しているようだ。俺の何がそんな反応を起こしたのだ?
「アンタぁ、村長呼んできておくれよ!こりゃお触れにあった人だよ!」
お触れ?
「お触れというのはなんですか?」
「他の世界から人が来るっていうお触れだよ!アンタ知らないのかい?って来た本人がお触れの話を知るわけ無いわねぇ・・・」
他の世界。日本語が通じる金髪碧眼。見慣れない建物。
・・・やっぱり俺は死んだのか?
で、別の世界に来てしまったのか?
異世界転生というやつか。いや、異世界転移か。
異世界ってのは死なないと行けないらしいからなぁ。
金髪碧眼の渋い顔付きの旦那さんが村長のところまで俺を連れて行ってくれた。
で、金髪碧眼の若い時のヤンチャっぷりを隠し切れない村長が、俺をこの国の国王のところまで連れてきてくれた。
そして今、金髪碧眼の小男の国王と、あまりの美貌にひれ伏したくなる金髪碧眼の王女の前に座って村長と謁見しているワケだ。
「アレクセイ四世である」
「鍬物アラヒトと申します」
「異世界人のようだな。持ち物、身なり、伝承の通りだ」
どういう伝承なのか知らないが、すぐさまリンチに遭うといった具合では無さそうだ。
「アラヒト。伝承では異世界人はこの世の秩序を乱すとも、この世に富をもたらすとも言われている。そなたはどちらかな?」
「分かりません。私は呼ばれて来ただけですから」
実際には刺されたんだけれどね。
「殿下。まずはアラヒト様には休息と説明が必要かと思われます」
「ふーむ・・・まぁ妃の言う通りだろうな。アラヒト。今日のところは下がって休め」
状況も分からないまま太い取引先の社長に話されても、せいぜいこんなところだろう。まずは休息、次に情報収集だ。
異世界転生あるある的に俺にはなにかチート能力が与えられるものかと思っていたら、そういう甘いものでは無かった。おそらく最高級のヒトやモノが集められているであろう王城にしても、やけに古臭いというか文明の香りがしない。色々と前に居た世界のことを思い出して現代知識を国王に与えつつ、なんとか生き延びるしかないか。
部屋が用意され、使用人もひとりつけてもらえた。
金髪碧眼。アラサーだと思うが肌に張りがあるな。
「下女として遣わされました。サーシャと申します。なんなりとご命令を」
お手付きしてもいいということか。
だがサーシャの所作と動き。暗殺者や護衛、諜報員の類だな。
遊びとはいえ総合格闘技を学んでおいて良かった。体重差は15kg以上あるし相手は女性なのだが、絶対に俺が勝てる相手じゃない。
しかし本当に美しいな。均整な肉体、透き通るような肌、吸い込まれそうな碧眼、無意識に触れてしまいそうになる金髪。眉毛どころかまつ毛まで金髪じゃないか。
「・・・なにか?」
見とれていても仕方ないか。異世界に飛んできていきなり知らない女性に手をつける気にはなれない。
「サーシャ、で合っているか?この国について知っている事、近隣の国について知っている事、すべて教えてほしい。」
「はい、アラヒト様」
疲れてはいるが、まずは食い扶持のメドが欲しい。
知識というものはどこでどう使うのかで、効果がまったく違うものだ。
思いつくままに使ったり教えればいいというものでも無い。
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