最強ご主人様はスローライフを送りたい

卯月しろ

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第13章

ハニートラップ

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二人から…………と言うか主にシュカからされたお願いは、"土蜘蛛"という妖怪を捕獲する手助けをして欲しい、との事だった。
土蜘蛛と言えば、最近鬼人のクニ周辺で若い男性をターゲットにした誘拐事件を引き起こしており、シュカが頭を悩ませていると聞いた。

ついこの前イナリとシュカが追い詰めたものの、後ちょっとのところで邪魔が入り、逃げられてしまったそうだ。
その後は原初の男が乱入したりでてんやわんや。
すっかり気配を見失ってしまった。

土蜘蛛は隠密がかなり得意らしく、何の手がかりも無い状態だと見つけ出すのは至難の業なのだとか。
そのため、若干の諦めムードが彼女達の間に漂っていた………………のだが。

つい先日、再び目撃情報があった。
とある村の少女からだ。
真夜中、村の男が不思議な女性と共にどこかへ行くのを見た、と。

もしただの逢い引きの現場だったなら申し訳ない。
しかし、その少女の証言から得られた女性の像は、そのまんま土蜘蛛だったという。
どうやらまだ懲りずに若い男を漁っているらしい。
まぁおかげで手がかりを掴めた訳だが………。

彼女が目撃されたのは、つい最近まで使っていた住処から北に数キロ行った場所の、小さな村だという。
やはりこういう目撃される可能性が少ない、もしくは目撃されてもシュカに情報の行きずらい場所を選んで潜伏しているのだろう。
道理で見つけられないはずである。



……………さて、ではここからはどうやって土蜘蛛を捕まえるかだ。

まず相手の武器は自在に動く鋭い脚と硬い糸。
それに基本的な妖術を始めとした戦法。
その他にも色々とあるものの、とりあえずここら辺か。

…………まぁこれに関しては、見つけさえすれば俺のパワープレイで捕まえられるはずだ。
たとえ抵抗されても、さすがに三人がかりでやれば抑えられる。

後はどうやって誘い出すかだ。
そもそも、土蜘蛛が逃げに徹してしまえば捕まえるも何もない。
だから何か策を用意し、土蜘蛛自ら姿を現してくれるようにしないといけない。

ベタなので言うと罠を設置するとかかな?
しかし相手はただの動物ではないので、生半可な罠では様子見すらしないだろう。
むしろかえって警戒心を与えてしまう。

土蜘蛛にとって魅力的かつ、あからさまな罠だとバレない仕掛けがベストだ。



「─────だから、一回考え直してはくれないだろうか」


長々とした説明のあとに、一呼吸置いてからジト目で目の前のマスコット二体を見つめる。


「却下じゃ」


しかし黒猫から放たれた無情な言葉でぶった切られた。

ここはただの森の中。
例のただの森である。
周囲が多少開けて陽の差すこの空間に、俺は座っている。
…………………当然のように縄に縛られて。


「まぁまぁ~。土蜘蛛なら絶対に食いつくからさ~」


二頭身シュカが呑気に笑い声を上げる。
さて、なぜこのような異様な状態になってしまったのか。
おそらく勘のいい人達は気づいているのではないだろうか。

……………そう、俺が罠に設置された餌でした。
縄でぐるぐるに縛られ、その端っこを結んだ木の枝もちゃんと地面にぶっ刺して固定。
もう完全に逃げられない。

まさか自分がハニートラップに使われるとは。
お願いだから正気に戻って欲しい。
こんなので捕まる訳ないじゃん…………。

しかも罠は、設置された棒を引っこ抜くことで結界が発動するという、シンプルかつ極めて原始的なもの。
たぶん一発でバレる。


「大丈夫、まだ時間はある。ゆっくり考えて、せめてもっとマシな物を……………」
「じゃあ頑張ってね~」
「ワシらは遠くで見守っておるからの」
「あっ、ちょ、放置は酷くないですかね!?」


俺の冷静な話し合いの提案は、もはや聞く耳すら持たれず砕け散った。
どこからその自信が出てくるのか知りたい。


………………え、待って、もしかして本当にこのまま放置?
何してりゃ良いの?
まさか土蜘蛛が引っかかるまで、ずっとここに居ろってことはないよな………。

ちらりと視線を向けると、遠くの茂みの中でこっそりこちらを覗く二対の瞳と目が合った。
可愛い。
草木の間から顔を出す黒猫と二頭身シュカは可愛い。
当たり前か。

若干ほっこりした気持ちで二人の姿を眺めること数十分。
早速暇になってきた。
と言うかお尻痛い。

このままでは"何の成果も得られませんでした!"と言う羽目になってしまいそうだ。
気が早いって?
皆も縛られたままずっと座ってたら、この虚しさを理解できると思うよ………。

周りに変化が無い分、退屈な授業を受けている時よりもっと苦痛に感じる。
いっそもう寝てしまおうか。

割と本気でそんな事を考えていると、ついに変化が訪れた。


「…………うふふ。坊や、こんな所で何をしているのかしらぁ?」
「え」


まさか。
そう思って視線を移した先には、まさかの着物を着た女性の姿があった。
少しくせっ毛の黒髪で、彼岸花のような模様の着物を着た女性。
まさに先程聞いた土蜘蛛の容姿そのまんまだった。



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