最強ご主人様はスローライフを送りたい

卯月しろ

文字の大きさ
上 下
249 / 290
第13章

惨状

しおりを挟む





仕方が無いので、酔った二人を布団に移動させてからまた後日来ることにした。
あのままではべろんべろんに酔った二人に何をされるか分かったもんじゃない。

ついでにちゃんと部屋の片付けもして、分別したゴミを端っこに詰め込んでから一旦帰った。
そして翌日の朝。
俺は再びシュカの自室を訪れた………………のだが。



「うぅ………頭が痛いよぉ~……」
「奇遇よの………ワシもじゃ………」


二人が死んだように床に転がっていた。
寝相が悪かったのか、起きてそのままぶっ倒れたのか、布団の周辺でうつ伏せに寝っ転がったシュカとセンリが呻き声を上げる。
ちらっと覗く顔はこれでもかと青ざめており、顰められた眉が頭痛の酷さを如実に表す。

どうやら動くのすら辛い様子だ。
せめてそのはだけた衣服を直してくれ………。
パンツ見えてんぞ。

体の火照りもあり、きっと夜中に蒸し暑く感じたのだろう。
衣服がはだけて存分にシミ一つない肌を露出し、普通見えちゃいけない部分まで丸見えだ。
眼福ですありがとうございます。

絵面的にかなり不味いであろう光景。
しかし完全に二日酔いに陥った二人には、それを直す余力すら残されていないらしい。


「まったく、何やってんのさ………」
「おぉ、マシロ…………昨日はすまんかったの………」


比較的、まだ症状が軽めだったセンリがのっそり体を起こして申し訳なさそうな表情をする。


「良いって良いって、気にすんな。それより今日はゆっくりしな。あんまり二日酔いで動きすぎると、ろくな事にならないからね」


経験則だから説得力は抜群ぞ?

ある時、何かのお祝いでサークルの先輩と飲みに行ったのだが、そりゃあもう酷い目にあった。
具体的な発言は避けるが、進められるままお酒を飲みまくったらダメだという教訓を得た。
もう二度とあの先輩とは飲みに行かないと決めた瞬間である。
大学入りたてとか、特に新卒社会人は気を付けた方が良いぞ。
こういう先輩や上司はどこにでも居るからな…………たぶん。


「ふっ、安心するのじゃマシロ……。二日連続でお主に無駄足はさせんよ」


へろへろな声でそう言うが否や、センリからポンッと白い煙が巻き上がった。
おっと、これは見たことあるぞ。
すると予想通り、煙の中から尾が二叉に別れた一匹の黒猫がてしてし歩いてきた。
センリが人型から猫に化けた姿である。

黒猫は毛繕いのためか何度か自身の体を舐めてから、ひょいっと身軽に俺の肩に飛び乗った。


「ふぅ。これで何とかいつも通り動けるのじゃ」
「え、なに、その姿になると痛覚無効とかされんの?」
「そんな訳無かろう。ちょいと解毒の妖術を使ってな。徐々にアルコールは抜けるんじゃが、使用中はこの姿にならんと燃費が悪いんじゃよ」


いわく、体内に含まれたアルコールの割合は、人型の状態でも猫になっても同じらしい。
つまり同じ割合でも、体が小さい猫の方が結果的に含まれるアルコールの総量は少なくなる。
故にこの方が早く解毒が終わるんだと。
解毒の妖術も中々に疲れるらしいし、そりゃ使う時間が少ない方が楽だわな………。
肩でくつろぐセンリの頭を撫でる。


「あっ、センリだけずるいよ~………うぷ」
「シュカは大人しく寝てた方が良いぞ、これは」
「いやだ!センリ、ボクにも"変化"かけて~………」
「まったく………今回だけじゃぞ」
「やったー……!」


やれやれと器用に肩をすくめたセンリ。
青い顔を突っ伏したまま、シュカが弱々しく握りこぶしを掲げる。
死にかけじゃねぇか。
個人的には、二人とも無理しないで休んでて欲しいんだけどなぁ………。


「よっ」
「ふぎゅっ………」
「容赦ないな」


肩から飛び降りたセンリが、何の容赦もなくシュカの後頭部に着地した。
おかげでシュカから潰れた悲鳴が漏れ、うつ伏せのまま猫に潰されるというなんともシュールな絵面が出来上がった。

一応病人(?)だということを忘れてはないだろうか。
微妙な気持ちでそれを眺めていると、再びポンッと白い煙が上がった。


「……………や~、こんなに引きずったのは久しぶりだよ~……」
「昨日は妙に酒が進んだからのぅ」
「ねぇ~」
「呑気か。二人とも、次は気をつけなよ?」
「はぁ~い」
「うむ」


返事だけは元気良いな。
黒猫と、二頭身と化した実に可愛らしいシュカが手を挙げて元気良く返事をする。

マスコットみたいだ。
鬼人のクニのご当地キャラかな?
非常に微笑ましい。


「じゃあ二人とも大丈夫ってことで良いのね?」
「うむ。それで、"原初の大妖魔"…………九尾の狐についてじゃったな」
「そうそう。二人は何か知ってる?」


座って、肩や頭の上でゴロゴロする二人に問いかける。
すると。


「う~ん、話すのは全然構わないんだけど………その前に、ちょっと手伝って欲しい事があるだ~」
「おう。ギブアンドテイクだよな?」
「あはは、そう言うこと~」
「お主もちゃっかりしとるな………」


シュカはにかっと元気に笑った。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。

いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成! この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。 戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。 これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。 彼の行く先は天国か?それとも...? 誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。 小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中! 現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

処理中です...