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第11章
夏といえば
しおりを挟む「ん~~っ、海なのだぁーーー!!」
サンサンと降り注ぐ暑い太陽。
光を反射して水面はキラキラ輝き、雲一つない青空は水平線の彼方まで澄んだ青色を見せる。
南国を思わせる木々が心地よいそよ風に揺られ、その葉をゆらゆらと小さく揺らした。
太陽の熱を受け、まるで鉄板のように熱くなった砂浜。
水色のポニーテールを揺らしながら一番乗りで駆け抜け、ノエルは勢いよく海へと飛び込んだ。
水しぶきが飛び散り、少しして水面から笑顔満開のノエルが笑い声を上げ顔を見せた。
「おおー!すごいのだ、底まで見えるのだ!」
大はしゃぎでもう一度水中に潜り、その恐ろしい身体能力を駆使して自由自在に泳ぎ回る姿は、もはや魚人と言われても違和感がない。
人間ってあんな風に泳げるんだな………。
───────さて。
澄んだ海、どこまでも広がる地平線、はしゃぐ嫁。
まさに南国へ旅行に来たかのような、夏にピッタリの贅沢な空間。
にも関わらず、俺は無言&ジト目で水平線を見つめていた。
「プライベートビーチって言うか、プライベートランドじゃん………」
およそ一週間前、俺が暮らすオルメスト王国の現国王、ルイスが我が家に尋ねてきた。
話を聞くとどうも王都ではきな臭い出来事が起こっていたらしく、彼と師弟関係にあった俺は彼の娘であるエイナの護衛を依頼された。
その時に依頼を受ける代わりに、とある要求をしたのだ。
その後、無事に事件も解決したので、こうして俺が願った"静かな海で皆と遊びたい"と言う要求を実現してもらったのだが…………。
確かにここなら俺の要求を満たしている上に、むしろ予想以上に綺麗な海で感謝しかない。
だけどさ?
「さすが王様、やることのスケールが違いすぎる」
誰が島を丸ごと貸し出されると思うよ。
本当にびっくりだわ。
いや確かにね、場所がオルメストとジパングの中間にあるって時点で、だいぶ雲行きが怪しかったもんね。
最初ここに連れてこられた時に言葉を失ったのは言うまでもない。
なんか妙に自慢げな顔のルイスがすごくウザかった。
「真白ーー!真白も一緒に泳ごうなのだー!」
「おう、今行く!」
まぁせっかくこんな場所を提供してくれたんだし、今さら色々考えるのも無粋だろう。
若干豪華すぎて気が引けるが、ありがたく楽しませてもらうとしよう。
…………て言うか水着の美少女が目の前にいるのに、野郎の事をいつまでも考えてるなんて普通に勿体ないの極みだ。
野郎はいいんだよ野郎は。
早速ノエルの水着をじっくりと脳裏に刻まなければ。
ぐへへ………皆の水着を拝むのも楽しみだぜ………!
今はまだ着替え中だが、たぶんもう少ししたら皆もテントから出てくるだろう。
ちなみにノエルは水色の可愛らしい水着(ビキニ)で、腰に南国風の模様のパレオを巻いている。
とにかくめちゃくちゃ可愛い。
いつも後ろに流してる髪をポニーテールにしているため、妙に艶かしいうなじが露わになっているのも、これまた大変素晴らしい。
対して紺色のシンプルな海パンを履いた俺は、ラッシュガードのようなラフなパーカーを着たまま、砂浜を蹴ってノエルの近くにダイブした。
ひんやりとした冷たさを感じると共に、透き通った景色が俺を迎える。
すごいな、海ってこんな遠くまで見渡せるものだっけ…………。
「ふふふ、どっちが速いか競走なのだ!」
「よしきた!」
ゴールは沖の方に見える海面から突き出した岩。
スタートの合図と共に、どちらも手加減なしのガチ泳ぎでゴールまで突っ切る。
いやー、やっぱりこんだけ綺麗な海で泳ぐのは気持ちいいねー………。
時々見たこと無い色の魚が居たりして面白いし。
え?競走?
もちろん普通に負けましたが?
完敗でした。
ちょこっと休憩した後は二人で海底まで潜って、砂に埋もれた貝の欠片を探したり魚を観察したりした。
途中ものすっごい変な色のサンゴみたいなのを見つけたんだけど、目の前でそれに触れた魚が痙攣したかと思えば、白目を剥いて動かなくなったので見なかったことにした。
後で調べて分かったのだが、どうもあれは刺激を与えると、毒性の強い針を先端から発射して威嚇する生物だったらしい。
威嚇がもはや威嚇じゃないのは言うまでもない。
ひとまず探索を終わりにした俺とノエルは、一度砂浜に戻って自作の浮き輪を膨らませ、二人してのんびりぷかぷか漂っていた。
割とちゃんとしたやつを作ったので、このように俺の上にノエルが腰掛けても十分浮かぶだけの浮力はあった。
あー、良いわこれ………。
太陽の日差しが結構暑いけど、その分、海水が冷たくて気持ち良い。
波に弄ばれながらくつろぐのがこんなに気持ち良いとは…………。
「お兄ちゃーんっ!!」
「おわぁ!?」
「ぬわっ!?」
突如、そんな聞き覚えのある声が降ってきたかと思うと、それは目の前の水面に着弾。
発生した大きな波に飲まれ、バランスを崩した俺とノエルは浮き輪ごとひっくり返って海の中に落下した。
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