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第3章 出会い イナリ編 (60〜97話)
キツネっ娘イナリ②
しおりを挟む「そもそも何者なのだお前は!これみよがしに胸を押し付けおって…………当て付けか!?」
「ち、違いますよぉ!私はただご主人様に会えたのが嬉しくて………!」
そう言いながらもさりげなく自慢の巨乳を押し付けてくる少女。
無意識なのは分かってる。
だが、胸の大きさにコンプレックスを感じているノエルの前でそれは最悪の行動だった。
ノエルの瞳のハイライトが消える。
「………………」
ノエルの右手がすっ、と差し出された。
「え………?あっ!もしかして、認めてくれたんですか!?なんだぁ、それならそうとちゃんと言ってアバババババッババッ!?」
ノエルの手に触れた瞬間、キツネっ子が感電してスパークを迸らせながら悲鳴を上げる。
電圧と電流は調節してあるはず(たぶん)なので死にはしないだろうが、確実にしばらく動けなくなる程度の威力はある。
少女の耳やしっぽの毛がピンッと逆立ち、お尻を突き出しながらシュー………と煙を上げて崩れ落ちた。
ビクンビクン痙攣している。
「………真白は、大きい方が好きか?」
「…………………ノエル。大事なのは胸の大きさじゃない、愛の大きさだ」
当たり障りのない、かつふわっとした返答でお茶を濁す俺。
本音を言えば大きい方が好きと答えたいところだったが、そんな事を言ってしまった暁には、そこの残念なキツネっ子と同じ運命を辿ってしまうこと間違いなしだ。
それに、たとえ胸が無くともノエルは十分すぎるほど魅力的な女の子なのだ。
皆違って皆いい。
それで良いじゃないの………。
「う、うぅ………こんな状態の私を置いてイチャイチャするとは…………まったく、ご主人様もノエルさんも酷いです!」
キツネっ子復活。
ゾンビのように地面から這い上がった少女が犬のように左右に体を震わして焦げを振り払う。
この子、頑丈だな……………ノエルの電撃を喰らってこんなに早く動けるようになるとは………。
一周まわって関心してきた。
もはや乙女が見せちゃいけない格好をしていた少女は失うものが無いらしく、防ごうとしたクロを巻き込んでまたもや俺に抱きついてきた。
俺と少女にサンドイッチされたクロがむぅっ、と小さな悲鳴を上げる。
「…………そもそも、なんで主をご主人様って呼ぶ?」
「あっ、それを聞きますか!しょうがないですねぇ、どうしても聞きたいのなら教えてばべるん!?」
クロが挟まれたままジト目で疑問を投げかけるが、あからさまに話したがってた少女に嫌そうな顔でビンタを一つ。
不意打ちをもろに喰らった少女は涙目だ。
「さっさと話す」
「はい、ずみまぜんでじた…………」
涙目の少女がコホンと咳払いをして。
「ええとですね。ご主人様はケガをした私を治してくれて、微笑みながらギュってしてくれたんです。とっても温かくて、かっこよくて…………えへへ、あの時はキュンキュンしちゃいました!その時に、私の全てをこの人に捧げようって決めて………だからご主人様なんです!」
「……………真白?」
「……………主?」
「……………ご主人様?」
「すみませんちょっと待ってください」
少女が頬を赤らめてクネクネしながら放ったまさかの言葉に、ノエルとアイリスがこちらを振り返って、ハイライトの消えた瞳で静かに問い詰めてくる。
背後の般若さんも、「返答によっては今すぐ処す!」とでも言いたげに包丁をとんとん。
怖い。怖すぎる。
クロもノエルとアイリスほどでは無いが、やはり事情を説明して欲しい様子でこちらを見つめていた。
いや、俺も説明できるのなら説明したいんだけどさ…………全く心当たりがないのよ、ほんとに。
村にキツネの獣人は住んでなかったはずだし、そもそも初対面なのだから知っているはずがない。
こんなに可愛いキツネっ子に会っていたのなら、俺が忘れるわけないからな。
改めて少女の顔をじっと見つめるが、微塵も見覚えが…………………………ん?
ふと何かが頭を過った気がした。
無意識に首を傾げると、正面の少女も頭上に?マークを浮かべながら俺に合わせるようにこてんと首を傾けた。
小麦色で先端が真っ白の耳としっぽ…………俺がこの子のケガを治してギュってした…………。
────────もしかして?
俺の思考の中で、この前助けたとある子狐がひょっこり顔を覗かせた。
「君、まさかあの時の子狐………?」
「え?そうですよ?ほら、これが証拠です!」
「ぶっ!?」
今更何を言ってるんだ?みたいなきょとんとした顔の少女が、俺に跨ったまま巫女装束似の服の裾を持ち上げ、包帯に包まれた健康的な太ももを露わにする。
「どうですか!」とドヤ顔な少女はさておき、そのためらいの無さに驚きを隠せない。
必要以上にガバッと持ち上げたため、純白のパンツと小さなおへそが丸見えだ。
新手の露出魔か君は…………。
衝撃的すぎて思わず二度見してしまったありがとうございます!
身の危険を感じてすぐに視線を逸らしたけど、純白のパンツと健康的な太ももはすでに脳裏に刻み込んである。
非常に眼福でした。
……………さて、とりあえずそれは置いておいて。
ついでに確認したあの包帯は、間違いなく俺がケガをした子狐につけてあげたものだった。
どういう原理か分からないが、本当にこの子はあの時の子狐らしい。
「なるほどね………」
「納得して貰えましたか!?」
「うんまぁ、何となく分かった…………………けどね?」
「ほえ?」
嬉しそうに手をぶんぶん振ってはしゃぐ少女の頭を両拳で挟むと。
「そう言うのは先に言えやァァーーーっ!」
「いやぁあああっ!?」
般若さんやら皆のハイライトの消えた瞳やらで怖い思いをさせられた報いとして、頭グリグリの刑に処した。
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