24 / 284
第2章 出会い アイリス、クロ編 (16話〜48話)
ダグラスさん②
しおりを挟む「たしかに確認致しました。こちら報酬の金貨二十枚になります」
受け取ると、ずっしりとした重みが手に伝わってくる。
これで依頼は完了だ。
よーし、久々の一仕事おーわりっと。
俺は思わず感じた安堵にため息をつく。
いやー、今回は機密文書とかいう、無くしたら取り返しのつかないどころじゃないレベルの物だったからさ。
万が一にもそんな事は起こさないつもりだけど、それでもいつもより緊張しちゃってた。
機密文書とか持ってるだけで手が震える。
そんな事を内心考えていた俺の横で、お茶を入れた女性は一礼し、トレーを持って部屋から出ていく。
「では、ここからは仕事の話は終わりにして、お互い楽に話しましょうか」
「あはは………そうしてもらえると助かります………」
正直、二百年以上経った今でも昔のように人と話すのが苦手な俺は、同じくさっきみたいな丁寧な口調で話すのも苦手なのだ。
つまりコミュ障は健在。
苦手なことを克服するのは簡単じゃないのよ、うん。
今まで何回かお偉いさんからの依頼も受けたことがあるのだが、毎回ボロを出さないかドキドキしている。
だいたい最初は大丈夫なんだけど、話すにつれてしどろもどろになって化けの皮が剥がされる。
なので、こうして楽にしていいと言われると本当にありがたい。
たぶんダグラスさんにはその事が見透かされていたのだろう。
「まずはお礼を。道中、アイリス達が大変お世話になったようで…………」
「ああいえ、お気になさらず。むしろ彼女達と一緒に来れて楽しかったですし」
笑顔でそう答えてから、お茶と一緒に差し出された高そうなお菓子を一口食べる。
あー、糖分が疲れた体に染み渡るぅ…………。
「マシロ様は、胸がお好きなのですか?」
「ぶふっ!?」
危うく口に含んでいたお菓子を吹き出しそうになった。
え、ちょ、え?
ダグラスさんからの予想外すぎる質問に思わず困惑してしまう。
ごめん、楽にして話そうってのがそっち方向の話題だとは思わなかったんですが…………。
もしかしてダグラスさん大きいのが好きなの?そうなの?
だからさっきの人も巨乳だったのかちきしょう!
羨ましい。
「いえ、先程から彼女達の胸に視線が行っていたので、もしや………と。彼女達もうちの商品です、お眼鏡に適いましたか?」
「よく見てるのね…………」
たしかにさっきお茶を入れてくれた女性の胸を見ていなかったと言えば嘘になる。
駄菓子菓子!
あんなに胸元の開いた服で目の前でかがみこんだら、そりゃ男なら誰だって視線が吸い寄せられるでしょうが!
これはもう男の性なのよ…………。
女の子でも思わず見ちゃうよね?
今考えると、あれすらダグラスさんの戦略だったのかもしれない。
一応言っておくが、決して俺が胸が大好きという訳ではないはずだ。
たぶん。
…………て言うか、凄いなダグラスさん。
あんな美女がそばに居て、変な気を起こしたりしないのだろうか。
「そんな気は起こせませんよ。商売は信用が一番。もしそんな事をしていると知られたら、商品が売れなくなるどころの話ではありません。商人としての人生が絶たれてしまいます。特にここ、王都アインズベルンではね」
「なるほど…………」
「ええ。ですから、私はマシロ様にも何か感謝の印を送りたいのです」
ダグラスは一口お茶を飲んで一息つくと、改めて俺の目を見てこう切り出した。
「どうでしょう、アイリスはうちの中でも随一の商品です。彼女を…………半額で身受けしていただけないでしょうか」
「………………………ほほう?」
ここで少し乗り気な返事をした俺を許して欲しい。
だってアイリスと一緒に居ると楽しかったし、あのレベルの料理が出来る人が一人家に居るのと居ないのでは、生活の質が天と地ほど変わる。
それに、最近(今更)もう少し人手が欲しいとノエルと話したばっかりなのだ。
タイミング的にはバッチリな事この上ない。
「彼女は家事が出来ますし、戦闘も行えます。そしてなにより……………処女でございます」
「ごくり…………って、その情報を与えられてどう反応しろと!?」
「ご想像にお任せします」
「むぅ…………というか、アイリスはこの商会で大切な人材じゃないの?たしか補佐って言ってたけど………」
「たしかに彼女を失うのは痛手です。ですが、それだけのメリットがあると私は思っています。あなたとは良い関係を築いていたい。そうでしょう?"草原の剣聖"様」
「…………………」
124
お気に入りに追加
573
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
称号は神を土下座させた男。
春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」
「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」
「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」
これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。
主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。
※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。
※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。
※無断転載は厳に禁じます
異世界で作ろう!夢の快適空間in亜空間ワールド
風と空
ファンタジー
並行して存在する異世界と地球が衝突した!創造神の計らいで一瞬の揺らぎで収まった筈なのに、運悪く巻き込まれた男が一人存在した。
「俺何でここに……?」「え?身体小さくなってるし、なんだコレ……?[亜空間ワールド]って……?」
身体が若返った男が異世界を冒険しつつ、亜空間ワールドを育てるほのぼのストーリー。時折戦闘描写あり。亜空間ホテルに続き、亜空間シリーズとして書かせて頂いています。採取や冒険、旅行に成長物がお好きな方は是非お寄りになってみてください。
毎日更新(予定)の為、感想欄の返信はかなり遅いか無いかもしれない事をご了承下さい。
また更新時間は不定期です。
カクヨム、小説家になろうにも同時更新中
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる