最強ご主人様はスローライフを送りたい

卯月しろ

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第1章 異世界へ (1話〜15話)

創造神ノエル②

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よくよく見ると辺りには一切人も他の神様らしき存在も居らず、ただ遠くに古代ギリシアのような家が一軒あるのみ。

ここはきっと、何か特別な空間的な場所なんじゃないだろうか。
そんな場所にわざわざ俺を連れてきた理由は一体…………。




「おー、そうなのだ!一番大事なのをまだ言ってなかったな。……………夢咲真白、ワタシと!なのだ!!」



「……………………え?」



サラッと言うには予想外すぎる返答に、思わず思考停止してしまったのは言うまでもない。
なんとか捻り出した声は自分でもびっくりするくらい裏返っていた。

時が止まったかのように身動きが取れない俺とノエルの間を静寂せいじゃくが支配する。


「む?真白、どうしたのだ。聞こえなかったのか?ならもう一度─────」
「い、いや、大丈夫!ちゃんと聞こえてた。ただ………どうして俺を?って思ってさ」


自分で言ってて悲しいが、俺はゲーム以外なんの取り柄もない男だ。

勉強も程々だし、容姿も大したことない。
特出とくしゅつしたことなんて何一つないのだ。

そんな俺が、全ての神の長であるノエルに好かれる理由が分からない。


「真白は自分を悲観し過ぎなだけなのだ。ワタシはちゃんと真白のかっこいい所も、優しい所も知っている。例えば、街中で迷子になっていた銀髪の女の子を助け、そのまま満足するまで遊んでくれたこと、とかな!」

「?……………あ、あぁ!思い出した、あの時の!」


最初はノエルが何を言っているか心当たりがなかったが、すぐに記憶の奥底から一つの出来事が鮮明せんめいよみがえった。

たしか俺が高二の時だったから、約五年前のこと。


それだけ前なのにすぐに思い出せたのは、きっとあの出来事が相当印象深かったからだろう。



俺はあの時、とあるイベントに参加するために秋葉原に行っていた。


山手線やまのてせんを降りていざ会場に向かおうとすると、ふと視界の隅に挙動不審きょどうふしんに辺りをキョロキョロ見回す幼女の姿があった。

日本人離れした容姿に銀髪だったため、初めは外国人だと思っていた。
しかし、周りに両親が見つからないので迷子かと思い勇気を振り絞って話しかけると、思いのほか流暢りゅうちょうな日本語を話すので驚かされた。

それからその幼女が一人でここに来たことを聞き、さすがにほっとけなかったので、苦渋の決断でイベントをすっぽかして一日中幼女に付き合ったのだ。
一緒にゲームセンターに行ったり、買い物したりね。


で、日が暮れる頃には幼女が住んでいるというマンションに送り届けて別れた。
その時の幼女が、今目の前にいるノエルにそっくりなのだ。


翼を失くして髪の水色を抜けば完全にそのまんま。
逆に今まで気がつけなかったのがおかしいくらいだ。


「そう、あの時の女の子がワタシなのだ!いやー、あの時は仕事をサボって遊びに行ったは良いが、人が多すぎて迷子になってしまってな」
「あれサボり中だったんだ…………」


それかなり衝撃的なカミングアウトなんですが。
大事なはずの仕事をサボって秋葉原で遊ぶ………それでいいのか創造神。


「と、とにかく!そこでワタシは真白に惚れたのだ!本当は現世で伝えたかったのだが、その前に交通事故で死んでしまった。だからここに呼んだのだ。………ふふふ、あの軽自動車を運転していたやからには、とんでもない天罰を喰らわせてやるのだ………!」

「まぁ、程々にね……?」


目が笑ってない笑みで物騒な事を口にするノエル。
完全に私怨しえんが混ざった天罰だけど、そういうのって神様的に大丈夫なんだろうか。


「…………さて、ワタシのことも思い出したようだから、そろそろ答えを聞かせて欲しいのだ」


「………………ごめん、結婚はできない」

「!?」


ギリギリまで迷ったすえの俺の結論に、ノエルは雷に撃たれたかのような衝撃を受けてこちらを見る。

頭上のアホ毛もピンッ!と逆立って驚きを隠せない様子を表していた。
どうやら彼女のアホ毛は自身の感情とリンクして動きを変えるらしい。




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