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[第8章]スクープ
12 モブ山side (新聞部員)
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手元に残った号外を小脇に挟み、首から下げた一眼レフカメラを両手で握りしめる。決して盗撮じゃなく、新聞部のスクープ写真を撮っていると分かるように左腕には新聞部の腕章を着けている。
「やった。初めてのスクープだ」
ただ、このスクープ写真を撮ったのが僕だとは誰も思わないだろう。と言うか新聞部員って腕章をしているものの、この地味な見た目では人混みでも背景に溶けてしまっているはずだ。
『ようこそ、新聞部へ!』
新聞部の入部資格の一つが地味で目立たない生徒であることで、去年の今頃、まだ新入生だった僕は部長からのスカウトもあり、新聞部のドアを叩いたのだった。
僕の通う柴咲学園には学園の創立当初から新聞部があり、娯楽の一環としてゴシップ新聞が発行されている。今の時代、新聞よりWebニュースやLINEで配信するほうが手軽で速いが、報道部が配信しているそれらは新聞が発行された後に配信される取り決めになっている。
新聞の発行には手間暇が掛かるし、発行部数にも限りがある。その点、電子ニュースを配信するのは簡単にできるし、配信部数も新聞の記事のように制約もない。
「先生、褒めてくれるかな……」
実は、森先生が顧問だったから僕は新聞部に入った。部長にその地味な見た目は報道カメラマン向きだと言われたのもあるけど、本当は写真部に入るつもりでいた。
それが去年の新歓の部活勧誘の受付で先生を見掛け、一目惚れした僕は新聞部に入ったのだ。
「ってか、僕が男の先生を好きになるなんてね」
思わず独りごちる。実は僕は高等部からの外部入学組で、当然、今まで同性を好きになったことはなかった。一目惚れって経験も初めてだし、朱に交われば赤くなるってまさにこのことだ。
スクープ写真を撮るために、球技大会のあの日、僕は生徒会の皆様をカメラで追っていた。すると、会長様が脳震盪で倒れ、鷹司様が倒れた会長様を保健室へ運ぶ場面に遭遇したのだ。
そのまま後をつけ、保健室の窓から中を覗いてみた。今にも雨が降りそうな天候だったからか幸いにもカーテンは開け放たれ、中が丸見えの状態だった。
「……!」
親身になって会長様を見舞う鷹司様を何枚か写真に撮って退散しようと思ったが、そのまま眠ってしまった鷹司様の寝顔があまりにも綺麗だったので見惚れていたら、あの場面に遭遇したのだ。
腕を強く引き寄せ、唇を寄せる鷹司様に驚くも、会長様もやがてゆっくり目を伏せて。鷹司様に負けず劣らずお美しい会長様とのツーショットがあまりにも綺麗で、唇が触れた瞬間を狙って写真を撮った。
「それにしても、お綺麗でお似合いのお二人だったな……」
僕がもし写真部に入っていたならコンクールに応募したであろう出来栄えのその一枚は、まだキスを知らない僕にとって、先生と両思いになるためのお守りとなり。
この一枚の写真が数人の運命を変えてしまうことに、この時の僕が気づくことはなかった。
「やった。初めてのスクープだ」
ただ、このスクープ写真を撮ったのが僕だとは誰も思わないだろう。と言うか新聞部員って腕章をしているものの、この地味な見た目では人混みでも背景に溶けてしまっているはずだ。
『ようこそ、新聞部へ!』
新聞部の入部資格の一つが地味で目立たない生徒であることで、去年の今頃、まだ新入生だった僕は部長からのスカウトもあり、新聞部のドアを叩いたのだった。
僕の通う柴咲学園には学園の創立当初から新聞部があり、娯楽の一環としてゴシップ新聞が発行されている。今の時代、新聞よりWebニュースやLINEで配信するほうが手軽で速いが、報道部が配信しているそれらは新聞が発行された後に配信される取り決めになっている。
新聞の発行には手間暇が掛かるし、発行部数にも限りがある。その点、電子ニュースを配信するのは簡単にできるし、配信部数も新聞の記事のように制約もない。
「先生、褒めてくれるかな……」
実は、森先生が顧問だったから僕は新聞部に入った。部長にその地味な見た目は報道カメラマン向きだと言われたのもあるけど、本当は写真部に入るつもりでいた。
それが去年の新歓の部活勧誘の受付で先生を見掛け、一目惚れした僕は新聞部に入ったのだ。
「ってか、僕が男の先生を好きになるなんてね」
思わず独りごちる。実は僕は高等部からの外部入学組で、当然、今まで同性を好きになったことはなかった。一目惚れって経験も初めてだし、朱に交われば赤くなるってまさにこのことだ。
スクープ写真を撮るために、球技大会のあの日、僕は生徒会の皆様をカメラで追っていた。すると、会長様が脳震盪で倒れ、鷹司様が倒れた会長様を保健室へ運ぶ場面に遭遇したのだ。
そのまま後をつけ、保健室の窓から中を覗いてみた。今にも雨が降りそうな天候だったからか幸いにもカーテンは開け放たれ、中が丸見えの状態だった。
「……!」
親身になって会長様を見舞う鷹司様を何枚か写真に撮って退散しようと思ったが、そのまま眠ってしまった鷹司様の寝顔があまりにも綺麗だったので見惚れていたら、あの場面に遭遇したのだ。
腕を強く引き寄せ、唇を寄せる鷹司様に驚くも、会長様もやがてゆっくり目を伏せて。鷹司様に負けず劣らずお美しい会長様とのツーショットがあまりにも綺麗で、唇が触れた瞬間を狙って写真を撮った。
「それにしても、お綺麗でお似合いのお二人だったな……」
僕がもし写真部に入っていたならコンクールに応募したであろう出来栄えのその一枚は、まだキスを知らない僕にとって、先生と両思いになるためのお守りとなり。
この一枚の写真が数人の運命を変えてしまうことに、この時の僕が気づくことはなかった。
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