60 / 103
[第5章]ラブレター
13
しおりを挟む
日向と廊下を歩いてると、周りから男子校らしからぬ黄色い歓声が飛ぶ。
「きゃーっ、日向様ぁ!」
「抱いてぇー!」
「はいはい、また今度ねー」
そんな中、
「わ、会長様も一緒だ!」
最近、少しずつ俺のことも気に留めてくれるようになって来た。
「ねえねえ。会長様のお名前ってなんだっけ?」
「馬鹿っ。羽柴様だよ!」
「ああ、そうそう羽柴様!」
ただ、まだまだ認知度は低くて、なかなか俺の名前が出て来ないんだよなあ。まあ、生徒会長だって認識してくれてるだけでも有り難いけど、やっぱ名前を覚えて欲しかったりする。
「やっぱ俺ってまだまだだな……」
「ん? なんか言った?」
「あ、いや。なんでもない」
生徒会室に向かう前に学校の前にあるコンビニで、久しぶりに出来合いのお惣菜と紅茶のお茶受けの洋菓子を買った何か簡単なものでも作って来ようと思ってたんだけど、進学テストが近くてゆっくり料理している暇がない。
「あ、待ってこれも買う!」
「ほどほどにしとけよ。今から生徒会室に行くんだから」
「うん」
最近、日向がコンビニに嵌まっていることが知れ渡って、一部のエリート組の生徒の間でコンビニブームが起きている。その生徒は日向と同じようなエリートの生徒達で、日向と同じ、コンビニに行ったことがなかった生徒達だ。
お湯を入れるだけで麺料理やスープが完成するのが珍しいらしく、レンチンやお湯を入れるインスタント料理が流行っているらしかった。今までキッチンを使わなかった生徒もポットやレンジ、トースターだけは使うようになったようで、それを料理だと呼んでいる生徒も少なくはない。
「あった! これこれ」
そう言って日向が手に取ったのはお湯を入れるだけのポタージュスープで、
「昨日はコーンにしたから、今日はポテトにしようかな。けど、クラムチャウダーとミネストローネも捨てがたい」
食パンをトーストするのを覚えた日向は、朝からレストランに行ったりデリバリーを頼まず、朝食を自分の部屋で取るようにしたらしかった。日向はインスタント珈琲や紅茶のティーバッグを買って自分で紅茶や珈琲を淹れているらしく、シリアルに牛乳を注ぐのも日向にとっては立派な料理の一つだ。
「温朝食ってコマーシャル、あの朝食が自分で作れるのってすごいよねー」
ご機嫌な日向はまだコンロや包丁は使ったことがないようで、進学テストと球技大会が終わったら、簡単な料理を教える約束になっている。うちの学校に調理実習があったのは初等部の高学年の頃だけで、ピアノやバイオリン教室に通う生徒が少なくない柴咲学園では生徒に包丁を持たせると親からクレームが来るんだよな。
俺はその頃から包丁を握っていたが、それは母さんが料理好きだからで。ただ、一般的なセレブ家庭にはハウスキーパーや使用人がいて、料理や掃除も人任せが普通だ。
それにしても日向のやつ。両手にコンビニ袋を下げてるチャラ男のくせに、なんでこんなに様になってるんだろう。黙っていれば日向はそこらの俳優やモデルよりもイケメンで、抱かれたいランキングは鷹司と橘に次いで堂々の3位なんだよな。その時、
「あの、日向様。これっ!」
「わ、ありがとー」
先にレジを終わらせていた一年生の可愛い子が、日向に手紙を手渡した。
特別棟の階段を上がり、最上階へ。校舎は四階までしかないからか、学校にエレベーターはない。生徒会室は四階で、一人で仕事をしていた時はこの階段の往復が辛かったことを不意に思い出したりなんかして。
「とーちゃーく」
手が空いてる俺が、ドアの前で腕時計をかざす。
「お疲れ」
「二人ともお疲れ様。今、紅茶淹れるね」
「どうした今日は遅かったな!! 心配したぞ!!」
「コンビニ寄ってたんだー。後でアイスとお菓子、皆で食べようね」
少し遅れて生徒会室に足を踏み入れると、S組のメンバーが一足先に椿野の淹れた紅茶でくつろいでいた。
「きゃーっ、日向様ぁ!」
「抱いてぇー!」
「はいはい、また今度ねー」
そんな中、
「わ、会長様も一緒だ!」
最近、少しずつ俺のことも気に留めてくれるようになって来た。
「ねえねえ。会長様のお名前ってなんだっけ?」
「馬鹿っ。羽柴様だよ!」
「ああ、そうそう羽柴様!」
ただ、まだまだ認知度は低くて、なかなか俺の名前が出て来ないんだよなあ。まあ、生徒会長だって認識してくれてるだけでも有り難いけど、やっぱ名前を覚えて欲しかったりする。
「やっぱ俺ってまだまだだな……」
「ん? なんか言った?」
「あ、いや。なんでもない」
生徒会室に向かう前に学校の前にあるコンビニで、久しぶりに出来合いのお惣菜と紅茶のお茶受けの洋菓子を買った何か簡単なものでも作って来ようと思ってたんだけど、進学テストが近くてゆっくり料理している暇がない。
「あ、待ってこれも買う!」
「ほどほどにしとけよ。今から生徒会室に行くんだから」
「うん」
最近、日向がコンビニに嵌まっていることが知れ渡って、一部のエリート組の生徒の間でコンビニブームが起きている。その生徒は日向と同じようなエリートの生徒達で、日向と同じ、コンビニに行ったことがなかった生徒達だ。
お湯を入れるだけで麺料理やスープが完成するのが珍しいらしく、レンチンやお湯を入れるインスタント料理が流行っているらしかった。今までキッチンを使わなかった生徒もポットやレンジ、トースターだけは使うようになったようで、それを料理だと呼んでいる生徒も少なくはない。
「あった! これこれ」
そう言って日向が手に取ったのはお湯を入れるだけのポタージュスープで、
「昨日はコーンにしたから、今日はポテトにしようかな。けど、クラムチャウダーとミネストローネも捨てがたい」
食パンをトーストするのを覚えた日向は、朝からレストランに行ったりデリバリーを頼まず、朝食を自分の部屋で取るようにしたらしかった。日向はインスタント珈琲や紅茶のティーバッグを買って自分で紅茶や珈琲を淹れているらしく、シリアルに牛乳を注ぐのも日向にとっては立派な料理の一つだ。
「温朝食ってコマーシャル、あの朝食が自分で作れるのってすごいよねー」
ご機嫌な日向はまだコンロや包丁は使ったことがないようで、進学テストと球技大会が終わったら、簡単な料理を教える約束になっている。うちの学校に調理実習があったのは初等部の高学年の頃だけで、ピアノやバイオリン教室に通う生徒が少なくない柴咲学園では生徒に包丁を持たせると親からクレームが来るんだよな。
俺はその頃から包丁を握っていたが、それは母さんが料理好きだからで。ただ、一般的なセレブ家庭にはハウスキーパーや使用人がいて、料理や掃除も人任せが普通だ。
それにしても日向のやつ。両手にコンビニ袋を下げてるチャラ男のくせに、なんでこんなに様になってるんだろう。黙っていれば日向はそこらの俳優やモデルよりもイケメンで、抱かれたいランキングは鷹司と橘に次いで堂々の3位なんだよな。その時、
「あの、日向様。これっ!」
「わ、ありがとー」
先にレジを終わらせていた一年生の可愛い子が、日向に手紙を手渡した。
特別棟の階段を上がり、最上階へ。校舎は四階までしかないからか、学校にエレベーターはない。生徒会室は四階で、一人で仕事をしていた時はこの階段の往復が辛かったことを不意に思い出したりなんかして。
「とーちゃーく」
手が空いてる俺が、ドアの前で腕時計をかざす。
「お疲れ」
「二人ともお疲れ様。今、紅茶淹れるね」
「どうした今日は遅かったな!! 心配したぞ!!」
「コンビニ寄ってたんだー。後でアイスとお菓子、皆で食べようね」
少し遅れて生徒会室に足を踏み入れると、S組のメンバーが一足先に椿野の淹れた紅茶でくつろいでいた。
0
お気に入りに追加
277
あなたにおすすめの小説
普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。
かーにゅ
BL
「君は死にました」
「…はい?」
「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」
「…てんぷれ」
「てことで転生させます」
「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」
BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。
アリスの苦難
浅葱 花
BL
主人公、有栖川 紘(アリスガワ ヒロ)
彼は生徒会の庶務だった。
突然壊れた日常。
全校生徒からの繰り返される”制裁”
それでも彼はその事実を受け入れた。
…自分は受けるべき人間だからと。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
ザ・兄貴っ!
慎
BL
俺の兄貴は自分のことを平凡だと思ってやがる。…が、俺は言い切れる!兄貴は…
平凡という皮を被った非凡であることを!!
実際、ぎゃぎゃあ五月蝿く喚く転校生に付き纏われてる兄貴は端から見れば、脇役になるのだろう…… が、実は違う。
顔も性格も容姿も運動能力も平凡並だと思い込んでいる兄貴…
けど、その正体は――‥。
真冬の痛悔
白鳩 唯斗
BL
闇を抱えた王道学園の生徒会長、東雲真冬は、完璧王子と呼ばれ、真面目に日々を送っていた。
ある日、王道転校生が訪れ、真冬の生活は狂っていく。
主人公嫌われでも無ければ、生徒会に裏切られる様な話でもありません。
むしろその逆と言いますか·····逆王道?的な感じです。
BlueRose
雨衣
BL
学園の人気者が集まる生徒会
しかし、その会計である直紘は前髪が長くメガネをかけており、あまり目立つとは言えない容姿をしていた。
その直紘には色々なウワサがあり…?
アンチ王道気味です。
加筆&修正しました。
話思いついたら追加します。
眺めるほうが好きなんだ
チョコキラー
BL
何事も見るからこそおもしろい。がモットーの主人公は、常におもしろいことの傍観者でありたいと願う。でも、彼からは周りを虜にする謎の色気がムンムンです!w
顔はクマがあり、前髪が長くて顔は見えにくいが、中々美形…!
そんな彼は王道をみて楽しむ側だったのに、気づけば自分が中心に!?
てな感じの巻き込まれくんでーす♪
室長サマの憂鬱なる日常と怠惰な日々
慎
BL
SECRET OF THE WORLD シリーズ《僕の名前はクリフェイド・シュバルク。僕は今、憂鬱すぎて溜め息ついている。なぜ、こうなったのか…。
※シリーズごとに章で分けています。
※タイトル変えました。
トラブル体質の主人公が巻き込み巻き込まれ…の問題ばかりを起こし、周囲を振り回す物語です。シリアスとコメディと半々くらいです。
ファンタジー含みます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる