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[第3章]リコール
05 肇side (前会長)
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自室に戻って溜め息をつく。
「よう、どうだった?」
「庵」
自室に戻る前にリビングを覗いたら、弟の庵がソファーに座ってテレビのリモコンを手持ち無沙汰に弄っていた。
「まあなんとかなるんじゃない。鷹司君が会長なら」
新しく採用された腕時計は便利だが、申請が通りさえすれば必要に応じてどこの部屋でも簡単に解錠出来るように設定してくれる。その際に上が必要だと思えば相手の承諾は不要で通るから、これはちょっとした問題が起きるかも知れない。
どうやら兄弟だからと庵は僕の部屋の解錠を申請したらしく、留守中に部屋に上がり込んで我が物顔でブルーレイディスクを物色していた。反対に設定されているものを解除するのはもっと簡単で、自分に必要のない設定は自分で簡単に解除出来るようになっている。
『解除しますか?』画面で『YES』をタップするだけだ。
「そんなこったろうと思ったよ。けど、鷹司が兄貴に頭を下げたんだよな。傑作じゃん」
楽しげに笑いながら、シリーズものの第一作目を手にしてセットする庵。ちゃんと見る気もないくせに、照れ屋な庵は僕と二人で話す時は必ず音楽をかけたりテレビをつけたがる。
「まあ、ね。ちょっと気持ち良かったかな。けど、やっぱりこのままでいいはずはないね」
この一年と一ヶ月余りの間、羽柴君が生徒会活動に尽力してくれたお陰で円滑に生徒会を動かせた。リコール前に羽柴君が生徒会の仕事をしていないとか、生徒会室に親衛隊の子を連れ込んで毎日乱交パーティーをしているとかの噂が立ったがそんなの言うまでもなく全くのデマだ。そもそも羽柴君には親衛隊はなかったし。
「元凶のバカ司が……、いや。本当の元凶は新しく書記になった例の転校生だな」
どうやら最近転校して来たばかりの二年生は少しばかり問題がある生徒らしく、庵が委員長を務める風紀委員会でも幾つか問題が持ち上がっているらしい。
「うがー!」
庵は言葉にならない謎の雄叫びを上げ、ソファーに寝転ぶと頭をガシガシと両手で掻いた。
「なんつーか、ただ空気が読めないやつなだけなんだよなあ。悪気がないから余計にたちが悪い」
クッションに顔を埋め、うーうーと唸り声を上げながらジタバタするのは子供の頃からの癖で、庵の頭上の空いたスペースに座り庵の頭を撫でてやる。
「うーん。話を聞くとただ正義感が強いだけの面白い子なんだよね。うちにはいないタイプで」
ただ話を聞かずに突っ走ってしまうから、転校生がその場を去ると立つ鳥跡を濁さずという諺に反し、濁すどころか思い切り掻き回しているというわけだ。
「うざいっちゃうざいけど、なんか憎めないと言うか不思議なやつだしな」
基本的に転校生と同じで正義感が強く、世話好きな庵も珍しくその手をこまねいているらしい。それに羽柴君がいなくても、鷹司君が仕事に慣れさえすれば直ぐにでも生徒会は円滑に回って行くはずだ。
庵の頭を膝に乗せ、頭を撫でながらまた溜め息をついた。ひざ枕されて気持ち良さそうに目を細める庵の頭を撫でるのは僕の子供の頃からの癖で、こうしていると凄く落ち着くんだよね。
「庵、泊まってく?」
そう聞くと、
「ん」
返事もそこそこにクッションを抱えたまま、うとうとし始めた庵は静かに目を閉じた。
「よう、どうだった?」
「庵」
自室に戻る前にリビングを覗いたら、弟の庵がソファーに座ってテレビのリモコンを手持ち無沙汰に弄っていた。
「まあなんとかなるんじゃない。鷹司君が会長なら」
新しく採用された腕時計は便利だが、申請が通りさえすれば必要に応じてどこの部屋でも簡単に解錠出来るように設定してくれる。その際に上が必要だと思えば相手の承諾は不要で通るから、これはちょっとした問題が起きるかも知れない。
どうやら兄弟だからと庵は僕の部屋の解錠を申請したらしく、留守中に部屋に上がり込んで我が物顔でブルーレイディスクを物色していた。反対に設定されているものを解除するのはもっと簡単で、自分に必要のない設定は自分で簡単に解除出来るようになっている。
『解除しますか?』画面で『YES』をタップするだけだ。
「そんなこったろうと思ったよ。けど、鷹司が兄貴に頭を下げたんだよな。傑作じゃん」
楽しげに笑いながら、シリーズものの第一作目を手にしてセットする庵。ちゃんと見る気もないくせに、照れ屋な庵は僕と二人で話す時は必ず音楽をかけたりテレビをつけたがる。
「まあ、ね。ちょっと気持ち良かったかな。けど、やっぱりこのままでいいはずはないね」
この一年と一ヶ月余りの間、羽柴君が生徒会活動に尽力してくれたお陰で円滑に生徒会を動かせた。リコール前に羽柴君が生徒会の仕事をしていないとか、生徒会室に親衛隊の子を連れ込んで毎日乱交パーティーをしているとかの噂が立ったがそんなの言うまでもなく全くのデマだ。そもそも羽柴君には親衛隊はなかったし。
「元凶のバカ司が……、いや。本当の元凶は新しく書記になった例の転校生だな」
どうやら最近転校して来たばかりの二年生は少しばかり問題がある生徒らしく、庵が委員長を務める風紀委員会でも幾つか問題が持ち上がっているらしい。
「うがー!」
庵は言葉にならない謎の雄叫びを上げ、ソファーに寝転ぶと頭をガシガシと両手で掻いた。
「なんつーか、ただ空気が読めないやつなだけなんだよなあ。悪気がないから余計にたちが悪い」
クッションに顔を埋め、うーうーと唸り声を上げながらジタバタするのは子供の頃からの癖で、庵の頭上の空いたスペースに座り庵の頭を撫でてやる。
「うーん。話を聞くとただ正義感が強いだけの面白い子なんだよね。うちにはいないタイプで」
ただ話を聞かずに突っ走ってしまうから、転校生がその場を去ると立つ鳥跡を濁さずという諺に反し、濁すどころか思い切り掻き回しているというわけだ。
「うざいっちゃうざいけど、なんか憎めないと言うか不思議なやつだしな」
基本的に転校生と同じで正義感が強く、世話好きな庵も珍しくその手をこまねいているらしい。それに羽柴君がいなくても、鷹司君が仕事に慣れさえすれば直ぐにでも生徒会は円滑に回って行くはずだ。
庵の頭を膝に乗せ、頭を撫でながらまた溜め息をついた。ひざ枕されて気持ち良さそうに目を細める庵の頭を撫でるのは僕の子供の頃からの癖で、こうしていると凄く落ち着くんだよね。
「庵、泊まってく?」
そう聞くと、
「ん」
返事もそこそこにクッションを抱えたまま、うとうとし始めた庵は静かに目を閉じた。
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