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【第2話】スタートライン
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しっかり度の入った黒縁眼鏡に少し長めの前髪。まだ制服姿の慧は、今日はアルバイトが休みの日だ。親父の店で俺がアルバイトを始め、店の地下の音楽スタジオを活動拠点、つまりは練習場所とし始めてから少し多めに休日が取れるようになった。
なんと言ってもスタジオ代がタダだと言うのが大きく、浮いたスタジオ代とバイトの時間をバンドの練習時間に宛てられる。俺もバイトを始めたことで、本気で音楽をやっていくって強い思いを実感できた。
「いいなあ。おまえら最高」
クックッとまだ喉を鳴らすように笑っている慧は、どうやら俺と親父のやり取りがツボにはまってしまったらしい。俺の顔をちら見するたびにぷっと吹き出して、必死に笑いを噛み殺した。
相変わらず笑い上戸な慧は、最近、俺の顔を見るたびに笑っているような気がする。慧の笑顔は不思議と和むから悪い気はしないが、顔を見られるたびに笑われるのはちょっとどうなんだろうと思う。
いったん出入口まで出て、地下に続く階段を下りる。地下にあるのは小さなステージと音楽スタジオ、レコーディング用の部屋がある音楽スペースで、普段は一般には開放していない。親父主催で音楽イベントを開催したり、たまに知り合いのバンドマンに貸し出すことがあるぐらいで親父の店は知る人ぞ知る、そんな隠れた音楽の聖地となっていた。
前を行く、少し猫背な背中を追う。いつもは屈んだ時にしか見えないつむじが眼下に見えて、思わずしげしげと見つめてしまった。
左右、線対称に見事に渦を巻くつむじが二つ。珍しいそれをぼんやりと眺めていたのもつかの間、数秒で地下に着いてしまう。
駅構内のロッカーに置いてあったギターもこちらに移し、何も持たずにスタジオ入りして練習できるようになった。親父に感謝しつつ、重い鉄製のドアを開ける。シンと静まり返ったこの部屋には、間もなくご機嫌なメロディーと様々な音が溢れることになる。
なんと言ってもスタジオ代がタダだと言うのが大きく、浮いたスタジオ代とバイトの時間をバンドの練習時間に宛てられる。俺もバイトを始めたことで、本気で音楽をやっていくって強い思いを実感できた。
「いいなあ。おまえら最高」
クックッとまだ喉を鳴らすように笑っている慧は、どうやら俺と親父のやり取りがツボにはまってしまったらしい。俺の顔をちら見するたびにぷっと吹き出して、必死に笑いを噛み殺した。
相変わらず笑い上戸な慧は、最近、俺の顔を見るたびに笑っているような気がする。慧の笑顔は不思議と和むから悪い気はしないが、顔を見られるたびに笑われるのはちょっとどうなんだろうと思う。
いったん出入口まで出て、地下に続く階段を下りる。地下にあるのは小さなステージと音楽スタジオ、レコーディング用の部屋がある音楽スペースで、普段は一般には開放していない。親父主催で音楽イベントを開催したり、たまに知り合いのバンドマンに貸し出すことがあるぐらいで親父の店は知る人ぞ知る、そんな隠れた音楽の聖地となっていた。
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