勇者ポチは戦わない

夏目とろ

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LEVEL-2

02

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「また何か考えてんのか」
「またって……」
「なんつーかさ。お前、戦闘時とやってる最中以外いつもなんか考え込んでねえ?」
「あ……」

 ……確かにそうかも。
 そう言えばせっかくシヴァと仲間になったのに、シヴァとは会話らしい会話をまだしていない。

「……あのー、シヴァ?」
「あん?」

 やっぱ何か話した方がいいよな。コミュニケーションってすっごく大事。体に聞いてやるよとかよくシヴァに言われるけど、ホントは言葉にしなきゃ全然伝わらない。
 恐る恐る上目使いでシヴァをちら見したら、一瞬驚いた顔で俺を見て、次の瞬間には思い切り顔を背けられた。

「その顔は反則だろ……」
「え?」
「いや、なんでもねーよ」
「?」
「……っっ、こっち見んな。それより俺に聞きたいことがあるんだろ」

 そう聞かれたけど、

「えっと、あのさ」
「おお」
「……」

 聞きたいことはいっぱいあった。だけどなんだか聞いちゃいけない気がして、それ以上の言葉が口から出なかった。
 なんで格闘家なんかやってるのか。家族はどうしたのか。その代わりに、

「あのさ、何度も言ってるけど俺の名前はポチ碧人だから」

 また、そんなとんちんかんなことを言ってしまう。

「はいはい。わかってるっつーの」
「違っ、俺はポチ森尾碧人……」
「わかったわかった」

 因みに、自分では名前は碧人だって言ってるつもり。なのに氏名の森尾もりお碧人あおとで言ってみても、何故だか俺の口からはポチだとしか発言出来ない。
 これってきっと、ゲームを始める時にポチって設定したからだ。きっと、この世界だとこの名前しか通用しないんだろう。

「……本当の名前を呼んで欲しいんだけどな」

 特にやってる時には。

「なんか言ったか?」
「いや、別に。それよりシヴァっていつから一人旅してんの?」

 仕方なく、当たりさわりのないことを聞いてみた。

「さあ、忘れちまったなあ」

 続けてなんで旅してるのか聞きそうになった。けれど、すんでの所で口をつぐむ。

「ポチ?」
「あ、うん。えっと……」

 きっと複雑な事情があるんだと思う。お試しでゲームをしてるお気楽な俺とは違ってさ。

「あ、あのさ……」

 なんとか当たり障りのない話題を捜して口を開いたその時、

(――ザザザッ)

 茂みの中で何かが動いた。
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