勇者ポチは戦わない

夏目とろ

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LEVEL-2

01

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「はあ……、平和だなあ」

 レベルが一つ上がって次の村へと向かう道中に、思わずそう独りごちる。

「ポチ、気を抜くなよ。お前、弱っちいんだから」
「わ、わかってるよ」

 少し前を行くシヴァが後ろを振り向かずそう言って、歩くスピードを少しだけ落とした。

 ようやくレベルが上がった俺があの後、どうなったかと言うと。結果から言うとレベルアップしたあの時、復活したシヴァがまた盛ってきた。
 で、俺もまた感じて来ちゃってやばかったんだけど、それ以上に強烈な眠気に襲われて。

「ポチっ、ポチっっ……」

 またもやガン掘りしつつ俺の名前を連呼するシヴァの声を聞きながら、俺は意識を失った。で、

「……やっぱな」

 大方おおかたの予想通りゲームしながら寝落ちたみたいで、気付けば自分の部屋でコントローラーを握りしめたまま机に突っ伏していた。

「はあ、やっぱ夢オチか」

 だかしかし、どこかいつもと違う違和感に首をひねる。

「……あれ?」

 確かシヴァとの戦闘に突入した瞬間に寝落ちたはずなのに、俺は既にシヴァをお供にしていてレベルも2に上がっていた。

「これって……」

 おまけに何故か体中が筋肉痛になっていて、後ろ……、ってか腰は鈍く痛むし、アナルがじくじく疼く。試しに人差し指と中指を突っ込んで指をジャンケンのチョキに広げてみたら、

「うそ……」

 おそらくシヴァとやりまくったからだろう。アナルがくぱぁと簡単に口を開け、その拍子にシヴァが出したものがどろりと垂れてきた。

「ちょっと待て。落ち着け俺!」

 ということは、やっぱRPGな世界にトリップしたということにほかならなくて。おまけに今まで俺はノンケで処女だったのに、シヴァに掘られ男の味(アナルの快感)を覚えてしまった。
 実を言うと俺は、学校やバイト先で尻を狙われていたりする。部活の先輩がいつも迫って来るし、バイト先の店長からは少し度を越すセクハラ攻撃も受けている。他にも体育教師やら保健医からも過度なスキンシップを受けていて、

こっちの世界現実世界でもしやっちゃうと、やっぱ最初は痛いのかな……」

 そんなことを考えてしまって、ハッとする。もしかして俺、今まで以上に気をつけなきゃいけないんじゃ……。それが一昨日の夜の出来事だ。

「……、ポチ」

 そんな衝撃的な事実にもパニクりはしなかったけど、昨日一日はバイトも休んだし、いつも以上に慎重に過ごした。

「おい、こら」

 そんで、その時はゲームも封印しようと思ったんだけど。

「……」

 結局、シヴァとのセックスが忘れられなくて、気付けば今日の夜中過ぎ。俺はゲームを再開させたのだった。

「おいってば!」
「うおっ!?」

 び、びっくりした。気付けばシヴァの顔がどアップに迫っている。

「お前なあ」

 どうやらまた考え込んでしまったようで、シヴァが呆れ顔で言った。
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