憑かれ男子

夏目とろ

文字の大きさ
上 下
6 / 10
憑かれ男子

06

しおりを挟む
 鏡の中の自分に語りかけてるその様子は、誰かに見られたらアウトレベルのものかも知れない。だけどそんな俺を見ているのは、少しばかり個性的な三人の幽霊だけだ。
 今の時間ならまだ部屋にいるだろうと言うことで、見た目は俺一人の俺と玲先輩は拓海先輩が住むところへやって来た。

(ほえー、立派なマンションに住んでるんっすねえ)

 そんな間抜けな俺の声が聞こえているのは俺と恐らくは近くにいる幽霊ぐらいで、幸いにも今回は周りの注目を浴びずに済んだ。玲先輩は拓海先輩の隣に住んでいたらしく、先輩は十桁の暗証番号を入力してエントランスに続くドアを開ける。ここを突破するとそれぞれの部屋に行けるらしく、俺たちは拓海先輩の部屋へと急いだ。
 時間はそろそろ夕方と呼ばれる時間帯で、マンションの壁に設置されている大きな電光掲示板は午後5時ちょうどを表示している。そろそろ日が傾き始める頃で、ここに来て少し肌寒くなって来た。

「ここが俺が住んでた部屋。まだ空いてるのかな」

 その向こう側。三階の一番奥が拓海先輩が住む305号室らしく、玲先輩は迷いなく玄関まで真っ直ぐ歩いて行く。

「で、ここが拓海の部屋」

 ここに来て初めて先輩に戸惑いの色が見て取れた。インターホンを押す指が少しだけ震えている。先輩は自分の死後、初めて拓海先輩に会うんだそうだ。
 死んでからも大学に留まっていた先輩だったが、拓海先輩には見えないだろうけど、拓海先輩の前に姿を現す勇気が出なかったらしい。

 俺の姿の先輩は、それでも震える指でインターホンを押した。当然モニターに映っているのは玲先輩じゃなくて俺で、対応してくれなかったら……と少し不安になる。

『……誰?』

 何分と待たずにインターホン越しに声が聞こえてホッとした。けだるいような、眠いような低い声。

「俺だけど」
『俺……?』
「あ、そか。玲だけど」
『……は?』
「信じられないだろうけど玲だよ。拓海」

 先輩は困った声で、インターホンの前で儚げに笑って見せる。その様子を固唾を飲んで見守っていると程なくしてドアが開いて、拓海先輩らしき人が顔を見せた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

変態高校生♂〜俺、親友やめます!〜

ゆきみまんじゅう
BL
学校中の男子たちから、俺、狙われちゃいます!? ※この小説は『変態村♂〜俺、やられます!〜』の続編です。 いろいろあって、何とか村から脱出できた翔馬。 しかしまだ問題が残っていた。 その問題を解決しようとした結果、学校中の男子たちに身体を狙われてしまう事に。 果たして翔馬は、無事、平穏を取り戻せるのか? また、恋の行方は如何に。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

水泳部合宿

RIKUTO
BL
とある田舎の高校にかよう目立たない男子高校生は、快活な水泳部員に半ば強引に合宿に参加する。

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

双葉病院小児病棟

moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。 病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。 この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。 すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。 メンタル面のケアも大事になってくる。 当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。 親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。 【集中して治療をして早く治す】 それがこの病院のモットーです。 ※この物語はフィクションです。 実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。

処理中です...