95 / 138
【第5話】腐男子プレイ
05
しおりを挟む
壱人と壱人の元カノ、そして俺。俺は一応、壱人の今の恋人だけど、傍目には単なる壱人の幼なじみに見られているんだろう。
だからこそ学校でも壱人と一緒にいられるんだけど、少し淋しく感じるのも事実。壱人が俺の目の前で手紙を渡されたり告られたりするのも日常茶飯事で、悲しいかなその状況にもすっかり慣れてしまった。
俺の目の前で手紙を突き返したり、付き合ってくださいな申し出を断ったり、瞬時に一刀両断する壱人を見て告ってきた女の子を気の毒に思うこともある。
もしも壱人に恋人がいることが分かったら、少なくとも壱人に告白してフラれる女の子も減ることになる。それもあって俺が壱人の恋人だって声を大にして言いたいけど、言えないことがまた悲しかった。
「……どうしたの。泉ちん?」
あ。いかんいかん。つい。
「ん。いや、よく喋るなって思って」
俺は笑ってごまかした。
今でもたまにこんな風にナーバスになる時がある。今は壱人と付き合い始め、こんなにも幸せで楽しい毎日を送っているのに。
その時、真ん中の結木さんを越えて伸びてきた壱人の手が俺の後頭部を撫でた。後ろ髪に指を絡めて、優しいけど少し乱暴にグシャグシャって。
ああ、やばい。この手には弱い。大事にされているのが分かるから、なぜだか泣きたくなる。
再び笑顔が戻った結木さんにホッとして、結木さんを挟んだ後ろで壱人と手を繋いだ。勿論、後ろに誰もいないことを確かめて。
自信を持っていいんだって壱人に言われているようで、まあ、実際にいつも言われてるんだけど。けど、影が薄いのは相変わらずだから、たまにちょっとだけこうなるのは許して欲しい。
南高校前のバス停からは都心に向けて直通バスが出ていて、結木さんたち利用者は都心から電車に乗り換えて帰宅する生徒が大半だ。
「あれ、お揃いで」
到着したバス停でそんな声が聞こえてよく目を懲らすと、今一番会いたくないやつらがこちらに視線を向けて笑っていた。
「あれ、おまえらもバス?」
「なんだよ今更。前からそうだっつの」
思わず壱人と結木さんの後ろに隠れてしまう。いや、恐らくばれることはないんだろうけど。
「それよりおまえら復活したの?」
「まさか。新見くんにはあんな可愛い彼女がいるのに」
「なに。結木も知ってんの?」
「もちろん」
「なんだ。単なる浮気か」
「だから違うっての」
えーと、結木さん。余計なことは言わないように。その彼女ってば、女装した俺なんだから。
二人は女装した俺の画像を見て、すっかりそれが壱人の彼女だと思い込んでいる。
だからこそ学校でも壱人と一緒にいられるんだけど、少し淋しく感じるのも事実。壱人が俺の目の前で手紙を渡されたり告られたりするのも日常茶飯事で、悲しいかなその状況にもすっかり慣れてしまった。
俺の目の前で手紙を突き返したり、付き合ってくださいな申し出を断ったり、瞬時に一刀両断する壱人を見て告ってきた女の子を気の毒に思うこともある。
もしも壱人に恋人がいることが分かったら、少なくとも壱人に告白してフラれる女の子も減ることになる。それもあって俺が壱人の恋人だって声を大にして言いたいけど、言えないことがまた悲しかった。
「……どうしたの。泉ちん?」
あ。いかんいかん。つい。
「ん。いや、よく喋るなって思って」
俺は笑ってごまかした。
今でもたまにこんな風にナーバスになる時がある。今は壱人と付き合い始め、こんなにも幸せで楽しい毎日を送っているのに。
その時、真ん中の結木さんを越えて伸びてきた壱人の手が俺の後頭部を撫でた。後ろ髪に指を絡めて、優しいけど少し乱暴にグシャグシャって。
ああ、やばい。この手には弱い。大事にされているのが分かるから、なぜだか泣きたくなる。
再び笑顔が戻った結木さんにホッとして、結木さんを挟んだ後ろで壱人と手を繋いだ。勿論、後ろに誰もいないことを確かめて。
自信を持っていいんだって壱人に言われているようで、まあ、実際にいつも言われてるんだけど。けど、影が薄いのは相変わらずだから、たまにちょっとだけこうなるのは許して欲しい。
南高校前のバス停からは都心に向けて直通バスが出ていて、結木さんたち利用者は都心から電車に乗り換えて帰宅する生徒が大半だ。
「あれ、お揃いで」
到着したバス停でそんな声が聞こえてよく目を懲らすと、今一番会いたくないやつらがこちらに視線を向けて笑っていた。
「あれ、おまえらもバス?」
「なんだよ今更。前からそうだっつの」
思わず壱人と結木さんの後ろに隠れてしまう。いや、恐らくばれることはないんだろうけど。
「それよりおまえら復活したの?」
「まさか。新見くんにはあんな可愛い彼女がいるのに」
「なに。結木も知ってんの?」
「もちろん」
「なんだ。単なる浮気か」
「だから違うっての」
えーと、結木さん。余計なことは言わないように。その彼女ってば、女装した俺なんだから。
二人は女装した俺の画像を見て、すっかりそれが壱人の彼女だと思い込んでいる。
0
お気に入りに追加
71
あなたにおすすめの小説
平凡くんと【特別】だらけの王道学園
蜂蜜
BL
自分以外の家族全員が美形という家庭に生まれ育った平凡顔な主人公(ぼっち拗らせて表情筋死んでる)が【自分】を見てくれる人を求めて家族から逃げた先の男子校(全寮制)での話。
王道の転校生や生徒会、風紀委員、不良に振り回されながら愛されていきます。
※今のところは主人公総受予定。
屋烏の愛
あこ
BL
「お前が十になった祝いだよ、何が欲しい?」
父親にそう言われた当時十歳の少年兵馬は、それから七年後人目を引く色男に成長していた。
どれだけの器量好しに秋波を送られたって一切気にかけない兵馬と、訳ありの船宿吉村のお嬢様が出会った時、兵馬は烏にさえ恋をする。
✔︎ 攻めは色男で男色な呉服屋三男坊
✔︎ 受けは船宿自慢の可愛いお嬢様(訳あり)
✔︎ 受けは常時女装
✔︎ 江戸時代でお江戸風味
✔︎ 本編は完結済み
➡︎ 番外編は時系列順に並んでいません。
➡︎ 章『さまよう、からす』は本編以前の話になっており、本編中のネタバレ(というほどではありませんが)もありますので、本編読了後をお勧めしています。
➡︎ 章『船宿吉村』は船宿吉村が舞台の「ゆづかや兵馬の登場しない」お話が入っています。BLもそうではないものも一緒になっていますが、BLではないものにはタイトルの前に『❢』がついています。
➡︎ 作品や章タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。
➡︎ 作品や章タイトルの頭に『!』があるものは、R指定(暴力・性表現など)描写が入ります。とても微々たるものですが、個人サイトと同じ基準で設定しております。多少でもその様な描写が苦手な方はご注意ください。
🔺ATTENTION🔺
時代背景を『江戸時代』で舞台を『江戸』としておりますが、時代考証は僅かばかりしかしておりません。
多大な捏造と都合のいい独自設定が有りますので、ご不快に思われる方はご遠慮下さい。
平凡腐男子なのに美形幼馴染に告白された
うた
BL
平凡受けが地雷な平凡腐男子が美形幼馴染に告白され、地雷と解釈違いに苦悩する話。
※作中で平凡受けが地雷だと散々書いていますが、作者本人は美形×平凡をこよなく愛しています。ご安心ください。
※pixivにも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる