幼なじみプレイ

夏目とろ

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【第2話】夏祭り

02

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 何と言うか、どっかで息抜きでもしたいんだけどな。

「あ」
「ん、どした?」

(そう言えば今夜……)

 不意に、賑やかで華やかな夏の行事があることを思い出した。

「なあ、壱人。今夜、祭りに行かねえ?」
「祭り?」
「うん。今夜さ。花火大会があるじゃん」

 花火大会といっても町内会が開催しているこじんまりとしたものだ。それでも毎年、それなりの人が町内外から花火見物にやって来る。

「人込みだったら男二人でいても違和感ないだろうし、もしなんだったら女の子をナンパするふりだけでもしてたらいいし」

 そう提案してみたらナンパのくだりは却下されたが、壱人と二人で出掛けることになった。

 花火大会かあ……、久しぶりだな。いつだったか、確か小学生低学年の頃にお互いの家族と一緒に出掛けたきりの気がする。多分、壱人は毎年彼女と一緒に見に行ってただろうけど。
 花火大会なんていうものは男二人で行くもんじゃないし、男友達何人かで行くとしてもナンパ目的で出会いを求めて行くだけだ。彼女もいないしナンパにも興味がなかった俺は、お互いの家族と行ったそれが最後に会場で見た打ち上げ花火になっていた。

 いつもは二階のベランダから眺めていたけど、たまには出掛けるのもいい息抜きになる。子供の頃のように出店を回るのも楽しいだろうし、そう考えたら今夜が楽しみになってきた。

「と言うことで、これからおまえの部屋に行っていい?」

 そう言ってくる壱人の一言で、今朝の約束を思い出した。

「ごめん。なんか姉ちゃんが用事があるらしくてさ。早く帰ってくるように今朝、言われたんだ」

 それは学校に行こうとした時のことで、突然姉ちゃんに呼び止められた。ニコニコ笑顔で用があるって言われたんだけど、実は一抹の不安も感じていたりして。
 姉ちゃんがあの不吉な笑顔を俺に向けてくる時は、たいてい良からぬことを考えている時だ。もしかして。もしかしなくても、また何かやらかそうとか考えてるんじゃ……。

 伊達に十何年も姉ちゃんと姉弟をやってるわけじゃなく、姉ちゃんの思考パターンはある程度予測ができる。姉ちゃんには壱人の件について助けてもらったし、できるだけ期待に応えてもやりたいけどさ。

「泉、おかえりー。と言うことでここに座って」

(……やっぱり)

 家に帰った早々、嫌な予感は的中。姉ちゃんに逆らえない俺は、大人しく言われた場所に座ったのだった。
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