29 / 138
【第2話】夏祭り
02
しおりを挟む
何と言うか、どっかで息抜きでもしたいんだけどな。
「あ」
「ん、どした?」
(そう言えば今夜……)
不意に、賑やかで華やかな夏の行事があることを思い出した。
「なあ、壱人。今夜、祭りに行かねえ?」
「祭り?」
「うん。今夜さ。花火大会があるじゃん」
花火大会といっても町内会が開催しているこじんまりとしたものだ。それでも毎年、それなりの人が町内外から花火見物にやって来る。
「人込みだったら男二人でいても違和感ないだろうし、もしなんだったら女の子をナンパするふりだけでもしてたらいいし」
そう提案してみたらナンパの件は却下されたが、壱人と二人で出掛けることになった。
花火大会かあ……、久しぶりだな。いつだったか、確か小学生低学年の頃にお互いの家族と一緒に出掛けたきりの気がする。多分、壱人は毎年彼女と一緒に見に行ってただろうけど。
花火大会なんていうものは男二人で行くもんじゃないし、男友達何人かで行くとしてもナンパ目的で出会いを求めて行くだけだ。彼女もいないしナンパにも興味がなかった俺は、お互いの家族と行ったそれが最後に会場で見た打ち上げ花火になっていた。
いつもは二階のベランダから眺めていたけど、たまには出掛けるのもいい息抜きになる。子供の頃のように出店を回るのも楽しいだろうし、そう考えたら今夜が楽しみになってきた。
「と言うことで、これからおまえの部屋に行っていい?」
そう言ってくる壱人の一言で、今朝の約束を思い出した。
「ごめん。なんか姉ちゃんが用事があるらしくてさ。早く帰ってくるように今朝、言われたんだ」
それは学校に行こうとした時のことで、突然姉ちゃんに呼び止められた。ニコニコ笑顔で用があるって言われたんだけど、実は一抹の不安も感じていたりして。
姉ちゃんがあの不吉な笑顔を俺に向けてくる時は、たいてい良からぬことを考えている時だ。もしかして。もしかしなくても、また何かやらかそうとか考えてるんじゃ……。
伊達に十何年も姉ちゃんと姉弟をやってるわけじゃなく、姉ちゃんの思考パターンはある程度予測ができる。姉ちゃんには壱人の件について助けてもらったし、できるだけ期待に応えてもやりたいけどさ。
「泉、おかえりー。と言うことでここに座って」
(……やっぱり)
家に帰った早々、嫌な予感は的中。姉ちゃんに逆らえない俺は、大人しく言われた場所に座ったのだった。
「あ」
「ん、どした?」
(そう言えば今夜……)
不意に、賑やかで華やかな夏の行事があることを思い出した。
「なあ、壱人。今夜、祭りに行かねえ?」
「祭り?」
「うん。今夜さ。花火大会があるじゃん」
花火大会といっても町内会が開催しているこじんまりとしたものだ。それでも毎年、それなりの人が町内外から花火見物にやって来る。
「人込みだったら男二人でいても違和感ないだろうし、もしなんだったら女の子をナンパするふりだけでもしてたらいいし」
そう提案してみたらナンパの件は却下されたが、壱人と二人で出掛けることになった。
花火大会かあ……、久しぶりだな。いつだったか、確か小学生低学年の頃にお互いの家族と一緒に出掛けたきりの気がする。多分、壱人は毎年彼女と一緒に見に行ってただろうけど。
花火大会なんていうものは男二人で行くもんじゃないし、男友達何人かで行くとしてもナンパ目的で出会いを求めて行くだけだ。彼女もいないしナンパにも興味がなかった俺は、お互いの家族と行ったそれが最後に会場で見た打ち上げ花火になっていた。
いつもは二階のベランダから眺めていたけど、たまには出掛けるのもいい息抜きになる。子供の頃のように出店を回るのも楽しいだろうし、そう考えたら今夜が楽しみになってきた。
「と言うことで、これからおまえの部屋に行っていい?」
そう言ってくる壱人の一言で、今朝の約束を思い出した。
「ごめん。なんか姉ちゃんが用事があるらしくてさ。早く帰ってくるように今朝、言われたんだ」
それは学校に行こうとした時のことで、突然姉ちゃんに呼び止められた。ニコニコ笑顔で用があるって言われたんだけど、実は一抹の不安も感じていたりして。
姉ちゃんがあの不吉な笑顔を俺に向けてくる時は、たいてい良からぬことを考えている時だ。もしかして。もしかしなくても、また何かやらかそうとか考えてるんじゃ……。
伊達に十何年も姉ちゃんと姉弟をやってるわけじゃなく、姉ちゃんの思考パターンはある程度予測ができる。姉ちゃんには壱人の件について助けてもらったし、できるだけ期待に応えてもやりたいけどさ。
「泉、おかえりー。と言うことでここに座って」
(……やっぱり)
家に帰った早々、嫌な予感は的中。姉ちゃんに逆らえない俺は、大人しく言われた場所に座ったのだった。
1
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説
変なαとΩに両脇を包囲されたβが、色々奪われながら頑張る話
ベポ田
BL
ヒトの性別が、雄と雌、さらにα、β、Ωの三種類のバース性に分類される世界。総人口の僅か5%しか存在しないαとΩは、フェロモンの分泌器官・受容体の発達度合いで、さらにI型、II型、Ⅲ型に分類される。
βである主人公・九条博人の通う私立帝高校高校は、αやΩ、さらにI型、II型が多く所属する伝統ある名門校だった。
そんな魔境のなかで、変なI型αとII型Ωに理不尽に執着されては、色々な物を奪われ、手に入れながら頑張る不憫なβの話。
イベントにて頒布予定の合同誌サンプルです。
3部構成のうち、1部まで公開予定です。
イラストは、漫画・イラスト担当のいぽいぽさんが描いたものです。
最新はTwitterに掲載しています。
平凡くんと【特別】だらけの王道学園
蜂蜜
BL
自分以外の家族全員が美形という家庭に生まれ育った平凡顔な主人公(ぼっち拗らせて表情筋死んでる)が【自分】を見てくれる人を求めて家族から逃げた先の男子校(全寮制)での話。
王道の転校生や生徒会、風紀委員、不良に振り回されながら愛されていきます。
※今のところは主人公総受予定。
友人とその恋人の浮気現場に遭遇した話
蜂蜜
BL
主人公は浮気される受の『友人』です。
終始彼の視点で話が進みます。
浮気攻×健気受(ただし、何回浮気されても好きだから離れられないと言う種類の『健気』では ありません)→受の友人である主人公総受になります。
※誰とも関係はほぼ進展しません。
※pixivにて公開している物と同内容です。
楓の散る前に。
星未めう
BL
病弱な僕と働き者の弟。でも、血は繋がってない。
甘やかしたい、甘やかされてはいけない。
1人にしたくない、1人にならなくちゃいけない。
愛したい、愛されてはいけない。
はじめまして、星見めうと申します。普段は二次創作で活動しておりますが、このたび一次創作を始めるにあたってこちらのサイトを使用させていただくことになりました。話の中に体調不良表現が多く含まれます。嘔吐等も出てくると思うので苦手な方はプラウザバックよろしくお願いします。
ゆっくりゆるゆる更新になるかと思われます。ちょくちょくネタ等呟くかもしれないTwitterを貼っておきます。
星見めう https://twitter.com/hoshimimeu_00
普段は二次垢におりますのでもしご興味がありましたらその垢にリンクあります。
お気に入り、しおり、感想等ありがとうございます!ゆっくり更新ですが、これからもよろしくお願いします(*´˘`*)♡
おれの邪魔、すんじゃねぇ!
あああ
BL
おれは山田 律(やまだ りつ)。
幼なじみでイケメンの寺田 竜(てらだ りゅう)が昔から好き。
だが、しかし、宮本 龍(みやもと たつ)という男が最近、竜と仲がいい。
くそムカついたおれは二人の仲に入ろうとしたが…
田中 優(たなか ゆう)って奴が邪魔してきやがる…。
くそ、まじ、うぜぇっ!!!
勝ち組ブスオメガの奇妙な運命
かかし
BL
※暴力的な表現があります
※オメガバースネタですが、自己解釈とオリジナル設定の追加があります
原稿の合間に息抜きしたくて書き始めたら思ったよりも筆が乗ってしまい、息抜きを通り越してしまいました。
いつも不憫なオメガバースネタばかり書いてるから、たまには恵まれてる(当社比)なオメガバース書きたくなったんです。
運が良いとは言っていない。
4/14
蛇足以下のEXを追加しました。
9/11
大幅な加筆修正の為、一話以外を全て削除しました。
一話も修正しております。
しおりを挟んでくださった方やエールをくださった方にはご迷惑をおかけ致します!
9/21
まだ思い付かないので一旦完結としますが、思い付いたらあげるかもしれません!
ありがとうございました!
目が覚めたらαのアイドルだった
アシタカ
BL
高校教師だった。
三十路も半ば、彼女はいなかったが平凡で良い人生を送っていた。
ある真夏の日、倒れてから俺の人生は平凡なんかじゃなくなった__
オメガバースの世界?!
俺がアイドル?!
しかもメンバーからめちゃくちゃ構われるんだけど、
俺ら全員αだよな?!
「大好きだよ♡」
「お前のコーディネートは、俺が一生してやるよ。」
「ずっと俺が守ってあげるよ。リーダーだもん。」
____
(※以下の内容は本編に関係あったりなかったり)
____
ドラマCD化もされた今話題のBL漫画!
『トップアイドル目指してます!』
主人公の成宮麟太郎(β)が所属するグループ"SCREAM(スクリーム)"。
そんな俺らの(社長が勝手に決めた)ライバルは、"2人組"のトップアイドルユニット"Opera(オペラ)"。
持ち前のポジティブで乗り切る麟太郎の前に、そんなトップアイドルの1人がレギュラーを務める番組に出させてもらい……?
「面白いね。本当にトップアイドルになれると思ってるの?」
憧れのトップアイドルからの厳しい言葉と現実……
だけどたまに優しくて?
「そんなに危なっかしくて…怪我でもしたらどうする。全く、ほっとけないな…」
先輩、その笑顔を俺に見せていいんですか?!
____
『続!トップアイドル目指してます!』
憧れの人との仲が深まり、最近仕事も増えてきた!
言葉にはしてないけど、俺たち恋人ってことなのかな?
なんて幸せ真っ只中!暗雲が立ち込める?!
「何で何で何で???何でお前らは笑ってられるの?あいつのこと忘れて?過去の話にして終わりってか?ふざけんじゃねぇぞ!!!こんなβなんかとつるんでるから!!」
誰?!え?先輩のグループの元メンバー?
いやいやいや変わり過ぎでしょ!!
ーーーーーーーーーー
亀更新中、頑張ります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる