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16_決闘
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「おい。俺の授業で遅刻すんなよ、リトル」
「これには事情がありまして…」
「ほぉ、俺が言い訳させるように思うか?」
「思いません…」
予想どうり遅刻した俺はみんなの前で説教中です。全部テンマ先輩にせいだ。
「はぁ、時間がねぇから今日はこのくらいで許してやるが…課題は出すぞ」
「そんなぁーーー!」
コウヤ先生の課題は半端なく多いんだよな…。テンマ先輩のせいだ。あの人は俺にとって厄病神だ!
「よし、お前のことは終わりだ。時間がねぇって言っただろ。さっさと席につけ」
「何て理不尽なんだ…」
俺は渋々席についた。
「今日は実技の授業だ。2人1組になって決闘してろ。俺が適当に回ってチェックしていく。お、そうだ。リトルは他のやつと系統が違ってパワーバランスが取れないから、属性が違うギルとペアになれ」
「はーい」
このクラスには癒し系は俺しかいない。今年の入学生は癒し系が少ないらしい。一個上の学年には結構いるって聞いたけど。それにしても先生ありがとう。毎回実技の授業怖かったんだ。技相殺させていくじゃん…。できねぇよ。攻撃系使えねぇもん。闇属性なら光属性と相性悪いからシールドでしっかり防げる(と思う)から大丈夫だろう。レベル差が心配だけど…。
「リトルのやつ、闇属性と組まされたぜ」
「かわいそうにな」
勝手に言ってろ。俺はギルと組めてラッキーと思ってるんだからな!
「んじゃ、始めろ」
先生がそう言うと周りはそれぞれ好きなやつと組んでいく。俺もギルのそばに行く。
「よっ、よろしくな」
「…俺に構うな」
ギルは目を合わさそうにせず、不機嫌な顔をしている。
「もしかして、気にしてる?」
俺は周りを見渡しながら言った。ギルは目線を泳がせる。分かりやすいやつだ。
「ありがとな」
ここまで気を使わないといけないくらいこいつは怖いんだな。人と接することで起こる傷つけあいが…。
「お前な!ちゃんとやれよ。お前は闇属性だけど、俺の単位がかかってんだよ。嫌々でもやるしかないんだよ!お前の友達演じてやるから、手加減しろよ!俺の成績のためにな!」
俺は少し大きな声で言った。俺バカだから。こういう方法しか取れないんだ。ごめん。俺はお前の友達だって胸を張って言えるほど強くない。
「リトルのやつ勇気あるな」
「そんだけヤバいんだろうよ。フリでも俺は闇属性と仲良くするなんて嫌だけどな」
「これなら問題ないだろ?」
「 …お前が良いなら…」
「よし!んじゃ、仲良く詠唱しようぜ!」
俺とギルは一定の距離をとる。俺は胸に手を当てた。
「我、天使の恩恵を授かる者。名をリトセクトル。ここに決闘を申し込む」
俺は胸に当てていた手を離す。そこには白く光る玉のようなものがある。俺はそれをギルの所まで飛ばす。ギルが受け取ったのを確認して、俺は一礼をした。
「我、悪魔に魂を捧げし者。名をギル。伝統に則りし正当な決闘をお受けする」
ギルはその玉ごと胸に手をやり、しばらくして離す。ギルの胸から出てきたその玉は、光属性の白と闇属性の黒が半々になっていた。ギルはそれを高く投げると一礼した。
すると玉は落下することなくパンッと大きい音をさせて弾けた。これが決闘開始の合図だ。魔法界の掟で決闘するときはこの儀式がいる。
俺はギルから距離を取り、詠唱をした。
「光よ。何者も拒み、我を守り給えーシールド」
俺はシールドを展開する。俺の周りは半球の白い透明なものに包まれた。
「先にシールドを展開するのか?」
「うるせぇ!俺は守り専門だ!」
「じゃあ、遠慮なく行くぞ」
「え!?」
「破壊を望む黒き闇よ。我を蝕むのなら、我の糧となれーダークボール」
ギルの手には黒い玉が3つ握られていた。ギルはそれを高く上げる。すると、3つの玉はトライアングルの位置に散らばり魔法陣を展開した。そして、そこから闇が広がった。
「うわ、真っ暗じゃん…」
しかし、シールドの中は明るいままだった。多分、シールドが闇を拒絶したからだ。
「刹那の安らぎを求め彷徨う愚か者に、悪魔の悲鳴をーデビルスクリーム」
ぎゃああああああ
「うわっ!」
俺はうるさくて耳を塞ぐ。
「見えるものは幻想に紡がれし悪魔の恨みーデビルグラッジ」
耳を襲う騒音に耐えながら俺はそっと目を開けた。
「っ!」
すると、俺の目の前には2つの死体が転がっていた。その死体を俺はよく知っている。
「あぁ…あ…あああああああ」
俺は足が震え立ってられなくなり塞ぎ込む。
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめん…許して…パパ、ママ。
「リトル!?」
ギルの叫び声が聞こえる。なんとかしなきゃ。俺は…
「わ、我、天命の罰に繋がれし咎人なり!願わくば、我…苦しみの海に消えることを…」
俺は精神安定の魔法を詠唱させる。怖い怖いよ…フィルさん…
「はぁ、はぁ」
とりあえず闇を払わなきゃおかしくなる…
「光は平等に世界を照らす救いなりーライト」
闇は次第に晴れていく。あぁ、ちょっと楽になった…。
「伝統に則りし正当なる決闘。我の名はコウヤ。ここに終焉を宣言する」
コウヤ先生は俺のそばまで来ると俺を支えて決闘に終わりを告げた。
「リトル、大丈夫か!?」
「だ、大丈夫」
「まぁ、外傷はないから問題はないだろう。んで、ギル。お前の攻撃はちっとリトルには強力みたいだな。闇属性は精神的な攻撃がメインだから大丈夫だと思ったが…悪いな。ギルの戦い方自体に問題はない。リトルは…全体的に守りに入りすぎだな。もともとそういう属性だが、そんな意識しすぎてちゃ今みたいにやられる。あと、純粋に魔力不足だ。魔力は考えて使え」
先生がさっきの戦いの評価をしていく。
「先生、俺…」
「…保健室行ってこい」
先生の気遣いに感謝しながら、俺は保健室へ向かうフリをする。先生やみんなから俺が見えなくなったところで俺は走り、校舎裏まで来た。震える手で携帯を出す。かける場所は決まっている。
「お願い、出て…」
『もしもし、リトルか?こんな時間に珍しいな』
「フィ…ルさん…っ」
俺はフィルさんの声を聞いた瞬間涙が出た。安心する…
『どうしたんだ!?泣いているのか、リトル!?』
「お、俺ヒック、闇属性との…ズズッ…決闘で…幻術…」
『そうか…思い出したんだな。大丈夫だ。怒ってない。怒ってないよ』
「うん…うん…」
『お前は悪くないんだ。大丈夫だよ、リトル』
「フィルさん…」
俺はフィルさんの声に涙を溢れさせた。優しい声色は俺の罪を一時でも安らがせてくれる。
結局俺は、次のチャイムが鳴るまで、フィルさんと電話をしていた。
「これには事情がありまして…」
「ほぉ、俺が言い訳させるように思うか?」
「思いません…」
予想どうり遅刻した俺はみんなの前で説教中です。全部テンマ先輩にせいだ。
「はぁ、時間がねぇから今日はこのくらいで許してやるが…課題は出すぞ」
「そんなぁーーー!」
コウヤ先生の課題は半端なく多いんだよな…。テンマ先輩のせいだ。あの人は俺にとって厄病神だ!
「よし、お前のことは終わりだ。時間がねぇって言っただろ。さっさと席につけ」
「何て理不尽なんだ…」
俺は渋々席についた。
「今日は実技の授業だ。2人1組になって決闘してろ。俺が適当に回ってチェックしていく。お、そうだ。リトルは他のやつと系統が違ってパワーバランスが取れないから、属性が違うギルとペアになれ」
「はーい」
このクラスには癒し系は俺しかいない。今年の入学生は癒し系が少ないらしい。一個上の学年には結構いるって聞いたけど。それにしても先生ありがとう。毎回実技の授業怖かったんだ。技相殺させていくじゃん…。できねぇよ。攻撃系使えねぇもん。闇属性なら光属性と相性悪いからシールドでしっかり防げる(と思う)から大丈夫だろう。レベル差が心配だけど…。
「リトルのやつ、闇属性と組まされたぜ」
「かわいそうにな」
勝手に言ってろ。俺はギルと組めてラッキーと思ってるんだからな!
「んじゃ、始めろ」
先生がそう言うと周りはそれぞれ好きなやつと組んでいく。俺もギルのそばに行く。
「よっ、よろしくな」
「…俺に構うな」
ギルは目を合わさそうにせず、不機嫌な顔をしている。
「もしかして、気にしてる?」
俺は周りを見渡しながら言った。ギルは目線を泳がせる。分かりやすいやつだ。
「ありがとな」
ここまで気を使わないといけないくらいこいつは怖いんだな。人と接することで起こる傷つけあいが…。
「お前な!ちゃんとやれよ。お前は闇属性だけど、俺の単位がかかってんだよ。嫌々でもやるしかないんだよ!お前の友達演じてやるから、手加減しろよ!俺の成績のためにな!」
俺は少し大きな声で言った。俺バカだから。こういう方法しか取れないんだ。ごめん。俺はお前の友達だって胸を張って言えるほど強くない。
「リトルのやつ勇気あるな」
「そんだけヤバいんだろうよ。フリでも俺は闇属性と仲良くするなんて嫌だけどな」
「これなら問題ないだろ?」
「 …お前が良いなら…」
「よし!んじゃ、仲良く詠唱しようぜ!」
俺とギルは一定の距離をとる。俺は胸に手を当てた。
「我、天使の恩恵を授かる者。名をリトセクトル。ここに決闘を申し込む」
俺は胸に当てていた手を離す。そこには白く光る玉のようなものがある。俺はそれをギルの所まで飛ばす。ギルが受け取ったのを確認して、俺は一礼をした。
「我、悪魔に魂を捧げし者。名をギル。伝統に則りし正当な決闘をお受けする」
ギルはその玉ごと胸に手をやり、しばらくして離す。ギルの胸から出てきたその玉は、光属性の白と闇属性の黒が半々になっていた。ギルはそれを高く投げると一礼した。
すると玉は落下することなくパンッと大きい音をさせて弾けた。これが決闘開始の合図だ。魔法界の掟で決闘するときはこの儀式がいる。
俺はギルから距離を取り、詠唱をした。
「光よ。何者も拒み、我を守り給えーシールド」
俺はシールドを展開する。俺の周りは半球の白い透明なものに包まれた。
「先にシールドを展開するのか?」
「うるせぇ!俺は守り専門だ!」
「じゃあ、遠慮なく行くぞ」
「え!?」
「破壊を望む黒き闇よ。我を蝕むのなら、我の糧となれーダークボール」
ギルの手には黒い玉が3つ握られていた。ギルはそれを高く上げる。すると、3つの玉はトライアングルの位置に散らばり魔法陣を展開した。そして、そこから闇が広がった。
「うわ、真っ暗じゃん…」
しかし、シールドの中は明るいままだった。多分、シールドが闇を拒絶したからだ。
「刹那の安らぎを求め彷徨う愚か者に、悪魔の悲鳴をーデビルスクリーム」
ぎゃああああああ
「うわっ!」
俺はうるさくて耳を塞ぐ。
「見えるものは幻想に紡がれし悪魔の恨みーデビルグラッジ」
耳を襲う騒音に耐えながら俺はそっと目を開けた。
「っ!」
すると、俺の目の前には2つの死体が転がっていた。その死体を俺はよく知っている。
「あぁ…あ…あああああああ」
俺は足が震え立ってられなくなり塞ぎ込む。
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめん…許して…パパ、ママ。
「リトル!?」
ギルの叫び声が聞こえる。なんとかしなきゃ。俺は…
「わ、我、天命の罰に繋がれし咎人なり!願わくば、我…苦しみの海に消えることを…」
俺は精神安定の魔法を詠唱させる。怖い怖いよ…フィルさん…
「はぁ、はぁ」
とりあえず闇を払わなきゃおかしくなる…
「光は平等に世界を照らす救いなりーライト」
闇は次第に晴れていく。あぁ、ちょっと楽になった…。
「伝統に則りし正当なる決闘。我の名はコウヤ。ここに終焉を宣言する」
コウヤ先生は俺のそばまで来ると俺を支えて決闘に終わりを告げた。
「リトル、大丈夫か!?」
「だ、大丈夫」
「まぁ、外傷はないから問題はないだろう。んで、ギル。お前の攻撃はちっとリトルには強力みたいだな。闇属性は精神的な攻撃がメインだから大丈夫だと思ったが…悪いな。ギルの戦い方自体に問題はない。リトルは…全体的に守りに入りすぎだな。もともとそういう属性だが、そんな意識しすぎてちゃ今みたいにやられる。あと、純粋に魔力不足だ。魔力は考えて使え」
先生がさっきの戦いの評価をしていく。
「先生、俺…」
「…保健室行ってこい」
先生の気遣いに感謝しながら、俺は保健室へ向かうフリをする。先生やみんなから俺が見えなくなったところで俺は走り、校舎裏まで来た。震える手で携帯を出す。かける場所は決まっている。
「お願い、出て…」
『もしもし、リトルか?こんな時間に珍しいな』
「フィ…ルさん…っ」
俺はフィルさんの声を聞いた瞬間涙が出た。安心する…
『どうしたんだ!?泣いているのか、リトル!?』
「お、俺ヒック、闇属性との…ズズッ…決闘で…幻術…」
『そうか…思い出したんだな。大丈夫だ。怒ってない。怒ってないよ』
「うん…うん…」
『お前は悪くないんだ。大丈夫だよ、リトル』
「フィルさん…」
俺はフィルさんの声に涙を溢れさせた。優しい声色は俺の罪を一時でも安らがせてくれる。
結局俺は、次のチャイムが鳴るまで、フィルさんと電話をしていた。
応援ありがとうございます!
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