生徒会補佐様は平凡を望む

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南条家との出会い編

南くんとこれで会えなくなると思うと寂しいですね…

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─────……
───…

「南くんとこれで会えなくなると思うと寂しいですね…」

はおった羽織りの袖口で目元を押さえる義父さんに、

「……じゃあ、やっぱり学園に行くのは」

やめます、と口にしようとした途端、セツさんが苦笑する

「そういう意味ではないんですよ南くん。旦那様は側にいた南くんが自分の側を離れるのが少し寂しいと思っているだけですよ」

今だけですから大丈夫です、と困ったように笑うセツさんに本当は学園に行くのが憂鬱だから行きたくないとは言えず、

「は、ぁ…」

今から行くことになった学園はなぜか自分が知らないうちに義父さんのいる南条自由ヶ丘学園じゃなく、中でも荒らくれ校な東条自由ヶ丘学園に行くことが決定されていることに疑問に思いつつも、内心少し安堵している自分に複雑な気持ちを抱きつつ、なるべく目立たないように地味で平凡な学生生活を送ろうと秘かに決意する。

まあ、義父さんやセツさんと違い、綺麗な顔をしていなければ大して目立たない容姿の… こんな自分に絡んで来る人間なんていないだろう。義父さんみたいに中性的な容姿でもなく、セツさんのような端正な顔立ちをしているわけでもない。

それに、義父さんやセツさんのように他人に向かって愛想笑いもするつもりもないそんな自分を誰が構うだろうか。…否、構うわけがない。

まあいいや。適当に過ごそうと思っていると、セツさんはなぜか南くんなら問題なくあの学園でやって行けますから大丈夫ですよ!と太鼓判を押されるという複雑な気持ち。あの学園で・・・・・というのが引っかかりつつ、適当に相槌を打つ。

「───不安ですか?」

新しい生活に、と困り顔で訊ねる義父さんに苦笑する

「俺なら大丈夫ですよ、義父さん…。だから、そんな表情をしないでください」

「フフッ、まさか南くんにそんなことを言われるとは…。私も親としてまだまだですね」

ひとしきりくすくすと笑うと、真っすぐに俺を見据えて、言い放つ。

「…南くんは私の自慢の息子です。大切な家族の一員です。どうか、無理だけはしないでください。いつでも帰って来てくれて大丈夫なんですよ?だって、此処は───… あなたの家なんですから」

 ふわりと柔らかな笑みを浮かべる義父さんはとても慈愛深くて、優しくて… 素性が知れない俺のことをいつも気にかけてくれる… この人に拾われてよかった、今まで家族として迎えてくれた義父さんに感謝しても感謝しきれなかった…。学園の話は別として。

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