生徒会補佐様は平凡を望む

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南条家との出会い編

南条家の『南』から取って『南くん』。貴方の新しい名前ですよ

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「あの……?」

「ちょっ… なんですか、この可愛い生き物は///」

何かをごまかすように、くしゃくしゃと少し乱暴に撫でられる頭、

「……コホンっ!」

そして一つ咳払いすると、

「私のことは… 雪斗で構いませんよ」

え・・・?


「む、無理ですよ!それに 名前も素性もわからない俺をなんで『だからですよ』…え?」

「名前も素性もわからない… 貴方自身が一番困惑しているでしょう?その不安げな表情も、私は堪らなく好きですが」

「ぇ゙」

「…はぁ、旦那様。自重なさってください」

呆れた表情のセツに諌められるも彼は笑う

「冗談ですよ」

…すみません。冗談に聞こえなかったんですが、とはさすがに言えなかった。

「貴方のその不安そうな表情を見ていると、心配なんですよ私は」


そして困ったように笑う彼に、なんとも言えなくなる。

「貴方を警察に任せても構わないのですが、見る限り、何か訳ありな感じがしますし、自身のことがわからない以上、貴方も不安でしょう?」

ふわりと笑みを浮かべて、くしゃくしゃになった髪を今度は優しく梳く

「此処で焦らず、ゆっくり思い出せばいいですよ。……とはいっても、さすがに肩書きは何かしら必要ですね」

「肩、書き… ですか?」

きょとんと見上げると彼はまたふと笑う

「ええ、南条家はこれでも日本屈指の財閥で、中でも五本指には入りますから… 屋敷に入れる人間は身元をきっちりしなければならないのですよ」

「あの、やっぱり…!それに、見ず知らずのあなた方に俺のせいでご迷惑が掛かるなんてっ」

自分の面倒を見ると言ったばかりに迷惑が掛かることを考えて慌てて断ろうと口を開きかけるも、ピン!と突き立てた人差し指を俺の唇の前に持ってくる彼の行動に一瞬思考が止まる。

「しぃーーっ…」

「………ッ//」

淡い笑みを浮かべ、耳元に囁かれる彼の低すぎない甘い美声。耳に当たるその息づかいに顔が熱くなるのを感じた。

こほんっ!

「旦那様」

彼に向けるセツさんの咎める視線にハッとする。

「フフッ、本当に可愛らしいですね。迷惑だなんて、誰も思っていません。寧ろ、私が貴方を側に置きたいと思ったから… それでは理由になりませんか?」

「………でも、俺の素性は」

そう口にすればイタズラっ子のように含んだ笑みを見せると、口角を上げた。

「素性なんてもの… 肩書きなど作るのは簡単ですよ?」

「えっ!?」

「そうですねぇ。私としては恋人設定でも…」

という彼に空かさずセツさんからツッコミが入る

「旦那様、相手はケガ人ですよ。自重ですよ自重!」

「……ということなので、貴方には私の護衛を、年もあまり離れていないので普段は義理の親子として、過ごしてもらうことになりますが」

「護衛ですか?」

急な話の展開に目が点になるも、それを見越してか、彼は困ったように笑う。

「ええ、なにぶん、南条家は大きな財閥ですからね。いろいろあるんですよ。それに独り身は少し寂しく感じていたので貴方が来てくれてちょうど良かったです。本音を言えば、話し相手が欲しかったので護衛と言っても名ばかりの『肩書き』に過ぎませんよ」


あ、…さっきの肩書きが簡単に作れると言っていたのはこういうことかと妙に納得する。

「まあ、簡単な護身術は身につけてもらいますが、最低限のことなので君が按じる必要はありませんよ」

「よろしくお願いしますね、南くん?」

「え?南…?」

くすっと微笑んだ。

「ええ、南条家の『南』から取って『南くん』。貴方の新しい名前ですよ」

小さく微笑むその慈しむ瞳に、護衛として期待されていなくても、彼の期待にそれ以上に応えたいとそう感じた。
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