― 閻魔庁 琥珀の備忘録 ―

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- アルファード王国と黒い獅子 -

『謎多き黒い獅子と第一補佐官サマ』

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『………』

「やっばい… もう何なんですか。この、もふもふっぷりは///」


もふもふの毛並みに顔を埋め、幸せに浸る琥珀を少し迷惑そうに見遣る黒い獅子。しかし、今の琥珀はそんなの御構い無しだ。

黒い獅子が大人しいことをいいことにモフッていた。

  ◇◇◇


『………』

いつの間にか静かになっていた。少し、伏せていた顔を横に向けると、どうやら眠ってしまったらしい。このままでは肩が凝る、と起こそうとするも、まったく起きる気配がない。

試しに、ぺろりと顔を舐めて起こそうと試みるも、少し身じろぎしただけで、なかなか起きそうにない。…いや、なにも無理に起こさなくても連れて帰ればいいのでは?とふと思う。
前々から噂を聞いて気になっていた。年齢な割にはその優秀ぶりに他の十王も頭が上がらないとか。そんな話をベルゼビュートから聞いたような気がする。

私が言えたことではないが、

なぜ、彼がこんなところにいるのかそこに首を傾げる…

なぜなら、此処は――‥ 

実際に存在している世界なのだから。どうも、彼の記憶を少し覗いてみると、彼の中では乙女ゲームとかいうゲームの世界だと認識しているようだね。

事実は違うけども。

とりあえず、彼を我が屋敷へと招こうか。


   ◇◇◇


黒い獅子はのっそりと身体を起こすと、立派なたてがみを振るう…

すると、大きな黒い獅子から、

人型になった彼は… 獅子のとき同様にキリリっとした力強い目と艶やかな黒髪のオールバック… そして、程よく引き締まった躰つき。左右の袖口には刺繍された金の縁がある他は控えめの装飾が付いた黒を基調とする… 貴族を思わせる上品な服装。ダンディーな大人の男に姿を変えた。

『十王の頂点に立つ閻魔大王の… 第一補佐官サマと、こうして、こんなところで会うことになろうとは…』

噂に聞くその優秀ぶりは魔界や天界でも有名だ。その第一補佐官サマが自分の腕の中で無防備に寝ていることに思わず苦笑してしまう。

そのまだあどけない顔に、

良からぬ考えを抱く者も何気に多いと聞く。
しかし、本人は自分は無表情だと思っているためか、そういうことには疎いらしい。仕事に関しては鬼のようだと言う話を聞くが。

普段はそんな無表情でも、啼かせてみたら、どんな表情をするのか… そういう下衆な考えを持つ者はどこの世界にもいるらしい。まぁ、中でも彼は地獄界の中でも役職に就く者達の中では最年少に近いというからその辺も一因になっているのだろう。

   しかし、

そんな彼の周りにいる十王も中には懸想を抱く者もいるという。だが、そういったことに疎い彼に代わって、仕方なく上司である閻魔大王が目を光らせているとか。そこで普段は閻魔大王の弟という設定の『椿』という式を使って、そういう輩からガードしているという話を聞いたことがある。

そんな彼らの努力も…

この子はきっと知らないのだろう。

――――――‥ 
――…
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