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プロローグ
おかしい
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―― 地獄界-
カツカツ…
漢服を着た一人の少年は忙しなく足を速める。その手に持つ帖を睨みながら-
「……おかしい」
その帖を暫く睨むように見ていた少年は足を止め、片眉毛を吊り上げる
「…やはり、どう見てもおかしいですね。魂の帳簿が全く合いません。
本来、死者は死神によって黄泉に連れられ、先ずはそこで天国か地獄かに振り分けられるので、本来、魂の帳簿が合わないはずがないのですが…
これは一体‥‥?」
本来、地獄に来るべき魂の数が全く合わない。
そればかりか、本来収まるべき魂の器も少しばかり違う。
説明がつくとすれば、本来死ぬべき運命だった人間の代わりに他の無関係の人間が………って、人間にそのようなことは出来ません。そんなことが出来る者と言えば、天界の住人もしくは我々地獄の住人。
よく見てみますと、パッと見ても魂の帳簿と矛盾してるのは何もここ最近だけではないようですね。
‥‥‥‥ちょっと待って下さい
「これ…」
年号をさかのぼっていくと、
「……軽く、千年前まで遡りますね」
はぁーっ‥ 困りました。まさか、しかし何故?我々、地獄の住人が人間と取引しても利益になるはずもない。やはり、仕事怠慢…でしょうか?もしくは故意による不正…… しかし、あまりにも酷い惨状です。すぐに調べなければ…
――…しかし、唯でさえ、仕事の激務で休む暇さえ時間が惜しい私にそんな時間は‥。最悪は――‥ 。
無意識に顎に指先をあてて考え込んでしまっていたらしい。
『こちらに居られましたか。琥珀さま。』
突如、名前を呼ばれて咄嗟に手に持っていた帖を後ろに隠し振りかえる…
そこには漢服を身に纏い、両拳を合わせ、頭垂れる白い髭を囃した老人がいた
「……私のことは様付けしなくていいですよ。それに私よりもあなたのほうが年齢が上なのですから呼び捨てで良いと…」
前にも言ったはずですが、と困惑気に顔をしかめる琥珀に老人は尚も顔を上げずにいる。
『そういうわけにもいきませぬ。貴方様は‥ この地獄界を統べる閻魔大王の側近であり、第一補佐官をお務めされておられる方…
そんな貴方様を呼び捨てにするなど畏れ多きこと――」
「しかし、」
「………そうですか」
少し不満げな琥珀の表情に老人は顔を上げ、苦笑を漏らす
「……ふぅ、わかりました。私も無理を強いるつもりはありません」
仕方ありませんね… と何処か諦めた表情の琥珀に老人は苦笑いを浮かべるも、柔和な目を向けた。
『ところで、琥珀様。閻魔大王様がお呼びしております』
「大王が、ですか‥?」
一瞬、不意を突かれたようにきょとん‥ と目を見開くも、
「………私に何の用でしょうかねぇ」
周囲から閻魔大王の側近やら、第一補佐官やら言われているが、これと言って、あまり閻魔大王と接点を持つどころか、仕事においても必要最低限の会話してこなかった琥珀。
関わるどころか、
寧ろ、琥珀自身が関わりを持つことを避けてるようにも見えなくもない‥ そんな自分を呼びつけるのだから、さぞ急用の仕事が出来たのだろうかと首を傾げる琥珀は‥
この直後、
出向いたことを直ぐ様、後悔するようなことが待ち受けていようとはこの時はまだ思ってもみなかった――。
カツカツ…
漢服を着た一人の少年は忙しなく足を速める。その手に持つ帖を睨みながら-
「……おかしい」
その帖を暫く睨むように見ていた少年は足を止め、片眉毛を吊り上げる
「…やはり、どう見てもおかしいですね。魂の帳簿が全く合いません。
本来、死者は死神によって黄泉に連れられ、先ずはそこで天国か地獄かに振り分けられるので、本来、魂の帳簿が合わないはずがないのですが…
これは一体‥‥?」
本来、地獄に来るべき魂の数が全く合わない。
そればかりか、本来収まるべき魂の器も少しばかり違う。
説明がつくとすれば、本来死ぬべき運命だった人間の代わりに他の無関係の人間が………って、人間にそのようなことは出来ません。そんなことが出来る者と言えば、天界の住人もしくは我々地獄の住人。
よく見てみますと、パッと見ても魂の帳簿と矛盾してるのは何もここ最近だけではないようですね。
‥‥‥‥ちょっと待って下さい
「これ…」
年号をさかのぼっていくと、
「……軽く、千年前まで遡りますね」
はぁーっ‥ 困りました。まさか、しかし何故?我々、地獄の住人が人間と取引しても利益になるはずもない。やはり、仕事怠慢…でしょうか?もしくは故意による不正…… しかし、あまりにも酷い惨状です。すぐに調べなければ…
――…しかし、唯でさえ、仕事の激務で休む暇さえ時間が惜しい私にそんな時間は‥。最悪は――‥ 。
無意識に顎に指先をあてて考え込んでしまっていたらしい。
『こちらに居られましたか。琥珀さま。』
突如、名前を呼ばれて咄嗟に手に持っていた帖を後ろに隠し振りかえる…
そこには漢服を身に纏い、両拳を合わせ、頭垂れる白い髭を囃した老人がいた
「……私のことは様付けしなくていいですよ。それに私よりもあなたのほうが年齢が上なのですから呼び捨てで良いと…」
前にも言ったはずですが、と困惑気に顔をしかめる琥珀に老人は尚も顔を上げずにいる。
『そういうわけにもいきませぬ。貴方様は‥ この地獄界を統べる閻魔大王の側近であり、第一補佐官をお務めされておられる方…
そんな貴方様を呼び捨てにするなど畏れ多きこと――」
「しかし、」
「………そうですか」
少し不満げな琥珀の表情に老人は顔を上げ、苦笑を漏らす
「……ふぅ、わかりました。私も無理を強いるつもりはありません」
仕方ありませんね… と何処か諦めた表情の琥珀に老人は苦笑いを浮かべるも、柔和な目を向けた。
『ところで、琥珀様。閻魔大王様がお呼びしております』
「大王が、ですか‥?」
一瞬、不意を突かれたようにきょとん‥ と目を見開くも、
「………私に何の用でしょうかねぇ」
周囲から閻魔大王の側近やら、第一補佐官やら言われているが、これと言って、あまり閻魔大王と接点を持つどころか、仕事においても必要最低限の会話してこなかった琥珀。
関わるどころか、
寧ろ、琥珀自身が関わりを持つことを避けてるようにも見えなくもない‥ そんな自分を呼びつけるのだから、さぞ急用の仕事が出来たのだろうかと首を傾げる琥珀は‥
この直後、
出向いたことを直ぐ様、後悔するようなことが待ち受けていようとはこの時はまだ思ってもみなかった――。
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