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- アルファード王国と黒い獅子 -
『閻魔第一補佐官様は前魔王様のお気に召し』
しおりを挟む「……そのつもりだったのだけどね」
困ったように笑うアラルドに僅かに瞠目する。
「なぜ… 」
意味がわからなかった。
「どうして」
理解できなかった。
今までだってそんなことされたことがない。
───いや、もしかすると、自分が気付いていないだけで本当は…
『君は… もう少し周りを頼るべきだ』
ふと、ニコリと穏やかな笑みを向けられ居心地の悪さに身じろぎする。
「君はもう少し甘えたほうがいい」
子供なんだから、と。優しく微笑む前魔王に絆されそうになりつつもハッと我に返って自身を叱咤する。
「……私を子供扱いしないで頂きたいんですが」
少し、ムッとした表情でアラルドを睨むも、
「子供は皆そう言うが?」
子供扱いが嫌だというなら、大人扱いされたいのかな?と楽しげに目を窄めるとアラルドは笑みを深めた。
「は?」
思わず声が裏返ってしまう。
しかし、アラルドはそんなのをお構いなしに、肩をトン!と軽く押してきた。
ポフッとベッドに逆戻りし、アラルドを胡乱げに睨んだ。
「ちょっ… いきなり、何するんですか!」
『ん?なにって…』
そう言って、顎を指先で優しく持ち上げるアラルドに狼狽する。
「ちょっ!ば… な、何を考えてるんですか!?」
「何って、君が子供扱いするなと言うから、大人扱いしているんだがね?大人なりのスキンシップだよ」
ぐぐっと顔を近づけようとするアラルドを手で押しやって必死に抵抗するその様はまるで意味が成さなくて。
『くっ、』
笑うのを押し殺した声が聞こえて顔を上げると、アラルドの肩が上下に揺れていることに気付いた。
「………ちょっと!さっきから人のことをからかって何なんですか!」
そんなアラルドの様子に酷く憤慨していると、ふと気付いた。先ほどまでのシリアスな雰囲気が無くなっていることに…。いや、まさかとアラルドに限ってそんなことはないと自問自答したあとに胸の内で否定する。
「フッ… くっく、いや、だって君の反応が面白いのだから仕方がない」
クックッと喉の奥で笑う開き直るアラルドに、ああ…やっぱり。と思う反面、何故かどっと疲れたような気がした。
「……面白いって、」
モノ好きな… と気付かぬうちに溜め息が零れていた。
「君のことは… 前から気になっていたよ。まさか、こんな形で会うことになるとは思いもしなかったが」
ニコリと笑みを浮かべるアラルドに首を傾げる。
「気になっていた…って?先ほどから思っていたのですが、貴方もモノ好きな方ですね。私は別に普通ですよ?これと言って突飛てもいませんし」
真顔で言うとアラルドは固まった。
「・・・おや?まさかとは思うが」
「君はまったく自覚が無いのか?」
「…………」
どうしましょう。さっきから失礼なことばかり言ってくるのですが… 人?を殴りたいと殺意を覚えたのは自称勇者以来です。
「……君、今、失礼なことを考えなかったか?」
「……いえ、まさか」
そんな、ご想像にお任せしますよ、と続けて出そうになった言葉を呑み込む。ああ、いけませんね… せっかく最近は猫を被っていたのに、思わず素が出そうになりました。
まあ、昔の自分を振り返れば…
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そんな心内を知るはずもないアラルドをひたりと見据えた。
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