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- アルファード王国と黒い獅子 -
『 - 戸惑う感情 - 』
しおりを挟むガウッ
『冷徹というのは否定はしないが。。君の場合はそれは仕方がないんじゃないか… 司法長サマ?』
え、、
「なん、で… 知って・・・?」
驚いたあまり、目が大きく見開くのが自分でもわかる……。
「なに、簡単なことだよ。君は私を誰だと思っているのかな?歴代随一の魔力を誇る前魔王だ。そんな私が君に纏う異端な気配に気づかないとでも?地獄界の三権神の司法サマの名前は確か、鬼澄神だったかな?」
いつの間にか、もふもふの黒い大きな獅子から人型に戻ったアラルドはニコリと穏やかな笑みを向ける。
「司法の立場は他の三権神と違い、冷酷さも持ち併さなければならない。それは… 罪を犯した十二王を含め神をも裁く断罪という執行の職務を果たす上で必要不可欠。優しいだけではその職務は果たせない… それが司法という役職だ」
「…………」
「司法となる者は罪を犯した者の執行を務める者。慈愛も大切だが、冷酷さも持ち併さなければ何れその者の心ももたない。心が壊れるのは時間の問題だ」
爽やかな笑顔を向け、私の頭に手を置くと髪をクシャリとあやすように撫でる。
「……それでもって、裁く側がどんな時でも私情を挟んで与えられた職務に支障を出すわけにはいかない。だから、司法になる者の人選はそれらも含め慎重に選ばれると聞く」
にこり、
「私が聞いた地獄界の司法の鬼澄は… 過去の出来事から人間が殺したいほど嫌いだと… 憎んでいる聞く。だが創世神により、地獄界の司法として任を与えられ就いた君は、心情を表に出さないよう極力、感情を抑えていると… 私は聞いているよ。私情を挟まないという上では完璧とまではいかないが、それでも本人は努力していると… 見ている者は見ているよ?君の努力をね」
そう締め括るアラルドに髪を撫でるその手を払い落とし、剣呑な眼差しを向ける。
「買いかぶり過ぎですよ…ッ!
それに!だいたいッなぜ、そこまで知って…ッ!それはッ 機密事項のはずです。三権神でも知っているのは限られているというのに…
歴代随一とはいえ、前魔王がなぜその話を…!」
口を荒くする私に臆することなく、アラルドは含んだ笑みを向ける。
「……ッ」
「創世神はまだ大人になりきってはいないとはいえ、殺めることに躊躇しないその冷酷さに目を付けて君を格上げし、地獄界の司法の職務に就かせたと聞く。だが、そんな司法もまた冷酷だけではやってはいけない。私情を挟んではいけないしね」
「だからっ!貴方は少々私を買い被り過ぎなんです!私は… 私は司法になる前の昔の記憶が……酷く曖昧なんです。ほとんどが抜け落ちていて、どれが正しい過去の記憶なのか、断片的な記憶は不確かで… どうしようもない不安に駆られるんです。なにか重要なことを…大切なことを忘れている気がして――‥ 」
『それは君が鬼になる前、のことかな?』
「そうかな?思い出せない記憶があるというのなら、それはまだ君にとって今は思い出す必要がない。…そう取れることもできると思うがね。それに、司法の立場も、閻魔の右腕という第一補佐官の立場も、君の実力があってことだと思うが」
「…………」
「まぁ、だけど」
ぽんぽん、と頭を撫でる優しい手のひらに意図せず心地よく思わず目を細めてしまう。けれどもそんな自分に気づかず、アラルドは優しい眼差しを向けてくる。
『───君を選んだには理由があると私は聞いたよ?』
ま、本人がどう解釈しているからはさて置き、創世神の意図は少し違うようだが、と小さく漏らしたアラルドの言葉は───… 聞こえなかった。
「…………」
ふぅ、
「本当に… 何処から聞いたのか此方が聞きたいくらい何でもご存知なんですね」
最初は剣呑な眼差しを向けていたけれど、ここまで知っているのなら隠したところで仕方がない。
「だから、君が冷酷だと言われたところで気にする必要性はないと思うが」
「…………」
今、気付いたのですが…
「もしかして、私を慰めているんですか?」
首を傾げると、そんな私になぜかアラルドは苦笑する。
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