― 閻魔庁 琥珀の備忘録 ―

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- アルファード王国と黒い獅子 -

『鵺と - 金の腕輪 - 』

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「それに、あの子の腕に付けられた金の腕輪。あれは…」

リハクは表情を曇らせた。

「恐らく、ぬえが咄嗟に付けたものだろうね。力の封印を施した呪具の割には中途半端で不完全。…とは言っても、あの腕輪から微かにだが鵺の力を感じるのは事実。…ふふっ、よっぽど緊迫した状況だったのかな?あの鵺が施したとは思えないほどお粗末な腕輪だね」


そんなリハクに、向けるのは今の発言には不自然なほどニコリと穏やかな笑み… 


「まあ、なるようにはなるさ…。いくら、不完全な封印呪具だったとしても、彼に施したのはあの鵺だ。普通なら不完全ほどの封印呪具は危険なものはない。いつ解けるかわかったものじゃないからね…。

でも、それを施した相手が永き時を生きてきた大妖怪、妖怪の王につく鵺なら話は別だよ。不完全とは言っても、妖怪の王自ら施した封印なら… たとえ、それが不完全だろうと… 今すぐどうこうなるって確証はないし。見た感じ、今の状態なら、封印も… しばらくは持つと思うけど」


「はぁー…。イオリ、お前はそう言うがもしものことを考えるなら…」

「キミは真面目すぎるんだよ。それに、もしものことがあれば… 適度にあの子の妖力を私が奪えばいいだけの話だと思うけど」


くすっ…と笑みを浮かべるイオリに、またもや深い溜め息をつく。

「…麒麟の持つ破魔の力で、か?確かに、鬼神が破魔の力を持つお前相手では分が悪い。現に、お前があの子の側にいるときは力を抑えているのは知ってはいるが……、まさか力尽くで奪う気か?」

「止めに入るのに、それが一番あの子にとって負担は少ないと思うけどねぇ… まぁ精神的苦痛は否めないけど」


目を窄めるイオリに、リハクは頭痛をこらえるように額に手を当てている。

「精神的… 苦痛?ちょっと待て!お前、それは… 絵面的にマズいだろ」

「ん?ああ、もしかして… 接吻のことを言ってるのかい?」


そっちのほうが相手に負荷を掛ける力の調節がしやすいんだけど、と漏らすイオリに、幾度と漏れる溜め息がリハクの口から零れ落ちた───。
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