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- アルファード王国と黒い獅子 -
『隠り世の三権神と - それぞれの交差する想い - 』
しおりを挟む「まったく、言いたいことだけ言って消えるとは…」
彼の探るような眼差しを思い出し、思わず笑ってしまう。そんなことをせずとも、欲しいと思ったものは手段を選ばず手に入れる…。魔族とはそういう種族だ。この子に手を出すことが目的なら、とっくに掻っ攫っている。
「クッ… まだまだ、魔族の習性をわかっていないな」
可笑しくて、思わずクツリと喉で笑う。
「さて、帰ったらどんな言い訳が聞けるのか… 楽しみだ」
――‥ そんな彼らの様子を見ている二つの影。アラルドは気づいたが、軽く一瞥だけすると琥珀を横抱きに抱えてすぐにそこを後にした。
──────
───…
───
「ふぅん?アラルドが先に保護をするとは… 意外だったよ」
老若男女に受けそうなニコリと穏やかな笑みを見せる一つの人影。
「アラルドは此方に気づいていたようだが。それにしても庵、例の件、どうするつもりだ?アレにはあの子の記憶だけが頼りの綱だ」
そう言って隣に立つ、モノクルを掛けた神経質そうな青年は腕を組み、端正な眉を寄せる…。
「ん… フフッ。リハクは心配性だね」
「……それはお前もだろう?イオリ」
自分のことを棚に上がるつもりか?とリハクは、目の前の水色と灰色が混ざった短髪と青い瞳を持ち、両耳に石の付いたピアスを開けた笑みを絶やさない和服姿の青年に表情を曇らせる。
「まぁ、なるようになるさ。それに… 今はまだ機が熟していない。焦れば、リアンの存在が明るみになる。そうなったら、アイツに見つかるからねぇ…」
面倒だ、と隣に立つ、白色の少し癖毛のある髪に淡い藍色の瞳のモノクルを掛けた、これまた和服姿をした青年に困ったように笑いかけると、リハクは肩を竦める。
「お前はいつも楽観的すぎやしないか?」
「リハク、君は真面目すぎるんだよ」
もっと、肩の力を抜かないと疲れるよ?と言ってくるイオリにリハクからどこまでも深い深い覆い隠すことも忘れた溜め息が、唇から漏れていった…。
「───まぁ、とは言っても… いつまでもあの男の手のひらで転がされるのはゴメンだけどね」
ふふっ、と含み笑いするイオリにリハクの眉根が俄かに寄せられる。そんな隣から返ってくる反応を分かっていたかのように流し目を送り、そして、リハクに向けていた目をアラルドの腕の中に眠る琥珀に変え、その青い瞳を細めると、神獣が本来持つ神気が溢れ出る…
その刹那、青い瞳が金色の瞳へと変わった───。
そして、くすっと微笑む
「……それにしても、あの子の顔を見たのは随分久しぶりだねぇ」
「ああ、そうだな」
そう返すと同時にリハクの瞳も淡い藍色から金の色へと変わり、神獣としての内なる神気が溢れ出る…
「だからこそ、次は守らなければ…」
「……そうだね。あの男から… 守らなければいけないね。それから… 大妖怪、隠り世を統べる妖怪の王 鵺の行方も。今、隠り世の王と名乗るあの男のことも。そして、私たち三権神に… 行政長が存在しない欠けている理由も… あの子の記憶がそれを知っているんだろうね」
イオリの言葉にリハクの瞳がスッと細められた。
「…あの男はあの子を捜してる。恐らく、向こうも目的は同じ。鵺の所在を知りたいのだろう。…確実に成り替わる為に、消す為に。そして、鬼神であるあの子に対する執着心…」
「まさか、隠れた先が閻魔殿だとは思わなかったけどね。フフッ、まあでも… 他の十二王を含め閻魔大王に匿われてたことには意外だったよ。今はそこを飛び出したみたいだけどね」
何があったのか、気になるところだけど…と、妖艶な表情でほくそ笑むイオリに、隣に立つリハクは微かに眉を吊り上げるだけだった。
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