― 閻魔庁 琥珀の備忘録 ―

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- アルファード王国と黒い獅子 -

『地獄界の三権神と - 憂鬱 - 』

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『……そういえば、以前の貴方もそんなことをおっしゃっていましたね』

イチの言葉に、そういえば…と振り返る。


獄界の三権神で、規律を重んじる司法庁の長である鬼神… 秩序の神である私がおよそ千年前のあの日、全ての書物と記録が納められている中央立書庫にて、見返していた複数冊ある帳簿の中で、冥界の死神が回収した魂魄の数と地獄に収監された魂魄、天界に迎えられた魂魄、魔界に堕ちた魂魄… の数が合わないことに気付いた。

立法長が定めた、法という名の規則に従い、司法長は十二王を含め、神をも断罪し、裁き、粛清する存在。その立場として見過ごせない状況に、すぐに行動に移したのは… もう随分前になる。

『他の三権神の… あのお二方も貴方を随分探しておられましたよ。さすがに、閻魔大王の右腕として第一補佐官となっていようとは彼らも思ってはいないでしょうね』

ああーーうん…。でしょうね。まさか、一千年以上も空けて、トラブルがあって記憶失くして、また帳簿のところから振り出しに戻っただなんて…。

思わず自分の失態に頭を抱えたくなる。


『……特に、司法庁の長である貴方が一千年以上も空席ですから、その空席を上手く埋めつつ、地獄界を円滑に廻していた行政庁の長、紫炎シエン様もニコニコと笑顔を見せつつ、大変お怒りで。

貴方でいう軟派で色男… のあの方が、老若男女問わず誘うことも出来ず、大量の仕事に追われて… 』


遣いの者たちも皆、その機嫌の悪さに困っていますよと零すイチに、シエンに見つかったら五月蝿そうだ…と憂鬱な気分になる。

『それから』

「え、まだあるんですか…!」


『はぁぁ…。一千年以上も席を空席にしてる貴方が悪いんですよ。立法庁の東雲様、の周りも… 荒れています。この意味がわかりますよね?』

「ぅぐ…っ!」

なかなか、痛いところを突いてきますね…。

東雲は元々堕天使だった。それも、ルシファー。天界と自身の矜持に疑問を持ち、一度魔界へと下ったと聞く。しかし、その絶大なる魔力に周囲に魔王へと担ぎされそうになった彼は面倒だと、

魔界へ下ったのは一瞬のことで、その後はこの地獄界に異種別転換し、この地獄界の三権神の一人として、立法庁の立法長として名を上げることになったとのことですが。いかんせん、その膨大な魔力をあり余し、その漏れた魔力は普段は何ともないのですが、彼の感情で異常気象を引き起こす… というなかなかの厄介なものです。

その姿は、闇より深い艶やかな長い黒の髪がさらりと湿った風になびき、その魔性の美貌は地獄界きっての美丈夫だという。整った鼻梁や薄い唇、顔立ちの造作も体躯も、特徴的な血濡れた紅の双眸も… 何もかもが美術品のようだと、その賛美は… あちらこちらで聞く。そして、そんな彼は・・・ そういったことには特に疎かったと記憶しています。
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