102 / 117
狗なら、うちの学園にもいますよ?
しおりを挟む理玖が叫んだ『狗』、それはウィリアムズに忠誠を誓うジキル・ベオルギーとセシール・ベオルギーの双子を意味していて、言わずもがな秘書もどきのウィリアムズの番犬である。
その忠実ぶりに狂犬と呼ばれるほどで、言わずもがな…
「……すみませんね、なにせ狗が大嫌いなもので」
嫌いだ。それも、特にジキルとは険悪で… 犬猿の仲とまで呼ばれているのはもはや前の学園では周知の事実だった。
「犬…?」
「狗ですよ」
そして微妙に話が噛み合わない会計と南。そこで隣で聞いていた副会長が思い出したように口を開いた。
『狗なら、うちの学園にもいますよ?』
「「は?」」
と思わず先に声を上げたのは南なのか、誉か…。
「あ?今、なんっつった?」
途端に眼光を鋭くさせる誉に、
「………」
レンズ越しに南の瞳がスッと細められる。
「おや?理事長辺りから説明を受けてませんか?この辺り一帯は昔、忍びの里があったんですよ。学園はその昔の城の跡地で、その名残をその子孫たちが受け継いでるんですよ。一族で。
昔は山陰の大名が城主だったそうですが、子を成す前に戦で敗れ、一度は絶えたものの、そのとき生き延びた忍びの頭領が亡くなった主を偲んでその意志を継いで城主に、そしてそれに仕える親衛隊が側近の忍四人、その方たちを纏めて山陰の五人衆と呼ぶようになったとか、で…
今は、それ以外にも身体能力を買われて直接スカウトされた一般生徒もいますよ。スカウトされた一般生徒はあれですが、五人衆についてはあまり顔を知られていませんね」
え!?忍び!??と驚きの声を上げる理玖、微かに瞠目する南、顔を強張らせる誉の様子に気づくことなく副会長は尚も説明を続ける…
「それぞれが風紀とはまた別の組織といったところでしょうか。その五人衆は学園の治安を、というよりかは正確にはその中にいるこの学園の跡取りを守っているというのが正直なところですね。なにせ、忍びの末裔ですからね。全員が黒いフード付きの外套を羽織っていて、その跡取りを守る狗が誰だかわからないために五人衆又は学園の狗とも呼ばれていますよ。普段は彼らも生徒であることに変わりはないので学生服を着て一般生徒として授業を受けているらしいですね。
…理事長だけは彼らの正体を熟知してるそうですが。
あと、基本歓迎会のイベント等は理事長を通して彼らが鬼役になるのが基本なので後々に会うだろうと思いますよ。…この学園の校内が所々天井が鉄骨や柱が出ているのはそういったところが関係しているのですよ。つまりは彼らの通り道ですね。
───…しかし、そんな彼らに反感を持つグループもいまして、その反感を持っているグループは自警団と名乗っていて、こちらの方たちは主に学園で起きる強姦を防いだりしてくれています。
どちらも風紀とはまた別の組織です。風紀としては、生徒会と違って人手が足りないみたいなのでそれこそ猫の手も借りたい状況なので助かってるようですが。私としてはどの組織も胡散臭いとしか思えませんね。それに、風紀という組織の機能性においては些か疑問を持ちますし」
ま、助けるつもりもありませんが、と非協力的な生徒会の冷めた対応に誉の眉が少しつり上がる。腕を組んだまま、先ほどまで気怠そうにしていたのを一変して厳しい目を向けていた。
12
お気に入りに追加
866
あなたにおすすめの小説

室長サマの憂鬱なる日常と怠惰な日々
慎
BL
SECRET OF THE WORLD シリーズ《僕の名前はクリフェイド・シュバルク。僕は今、憂鬱すぎて溜め息ついている。なぜ、こうなったのか…。
※シリーズごとに章で分けています。
※タイトル変えました。
トラブル体質の主人公が巻き込み巻き込まれ…の問題ばかりを起こし、周囲を振り回す物語です。シリアスとコメディと半々くらいです。
ファンタジー含みます。
ザ・兄貴っ!
慎
BL
俺の兄貴は自分のことを平凡だと思ってやがる。…が、俺は言い切れる!兄貴は…
平凡という皮を被った非凡であることを!!
実際、ぎゃぎゃあ五月蝿く喚く転校生に付き纏われてる兄貴は端から見れば、脇役になるのだろう…… が、実は違う。
顔も性格も容姿も運動能力も平凡並だと思い込んでいる兄貴…
けど、その正体は――‥。
王道学園と、平凡と見せかけた非凡
壱稀
BL
定番的なBL王道学園で、日々平凡に過ごしていた哀留(非凡)。
そんなある日、ついにアンチ王道くんが現れて学園が崩壊の危機に。
風紀委員達と一緒に、なんやかんやと奮闘する哀留のドタバタコメディ。
基本総愛され一部嫌われです。王道の斜め上を爆走しながら、どう立ち向かうか?!
◆pixivでも投稿してます。
◆8月15日完結を載せてますが、その後も少しだけ番外編など掲載します。

風紀“副”委員長はギリギリモブです
柚実
BL
名家の子息ばかりが集まる全寮制の男子校、鳳凰学園。
俺、佐倉伊織はその学園で風紀“副”委員長をしている。
そう、“副”だ。あくまでも“副”。
だから、ここが王道学園だろうがなんだろうが俺はモブでしかない────はずなのに!
BL王道学園に入ってしまった男子高校生がモブであろうとしているのに、主要キャラ達から逃げられない話。

親衛隊総隊長殿は今日も大忙しっ!
慎
BL
人は山の奥深くに存在する閉鎖的な彼の学園を――‥
『‡Arcanalia‡-ア ル カ ナ リ ア-』と呼ぶ。
人里からも離れ、街からも遠く離れた閉鎖的全寮制の男子校。その一部のノーマルを除いたほとんどの者が教師も生徒も関係なく、同性愛者。バイなどが多い。
そんな学園だが、幼等部から大学部まであるこの学園を卒業すれば安定した未来が約束されている――。そう、この学園は大企業の御曹司や金持ちの坊ちゃんを教育する学園である。しかし、それが仇となり‥
権力を振りかざす者もまた多い。生徒や教師から崇拝されている美形集団、生徒会。しかし、今回の主人公は――‥
彼らの親衛隊である親衛隊総隊長、小柳 千春(コヤナギ チハル)。彼の話である。
――…さてさて、本題はここからである。‡Arcanalia‡学園には他校にはない珍しい校則がいくつかある。その中でも重要な三大原則の一つが、
『耳鳴りすれば来た道引き返せ』

私の事を調べないで!
さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と
桜華の白龍としての姿をもつ
咲夜 バレないように過ごすが
転校生が来てから騒がしくなり
みんなが私の事を調べだして…
表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓
https://picrew.me/image_maker/625951

俺の義兄弟が凄いんだが
kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・
初投稿です。感想などお待ちしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる