40 / 117
- 陰の王国と廻りだす歯車 -
ーーバクside ①
しおりを挟む
ーープギュゥ!!
ジキルドの従者ジークが部屋に来た途端に、瞬時に身を隠した。
物陰からルティと話すジークをじっと観察していると、ジキルドの従者だというジークの瞳が一瞬、妖しく輝いたのを見逃さなかった。
ーーあれが人間だって?そんな馬鹿な!!確かにさっきまではあのジークという従者からは人間の気配しかしなかった!なのに、今の今まで朝だった時間から夜へと変わった瞬間、人間の気配から僕と同じ気配に変わった。そう… 闇の眷属の、それも僕以上に濃い闇の力を纏って。
あれが人間だって?
ちがう!今ならわかる。この気配は…ッ!!
一度はルティに効かなかったジークの力も、二度目にはさらに力を強めたのか、ルティの瞼が力なく降りていく…
最後には、
ジークの袖を掴むも、力尽きたように…
だらり、と落ちる腕。くたりと崩れるルティの体を……
ドサッ!
抱きとめたジークは…
『ルティ!!』
急いで駆け寄る僕を真っすぐに見据えた。
「なんだ、もう… 隠れんぼはやめたのか?」
プキュゥ!
『ルティに何をした!?』
「うるさい。目の前にいるんだ、キャンキャン騒ぐな」
『ル…「ハァーッ。…まったく、少し落ち着け。俺は何もしていない。ただ、寝かせただけだ」
そう言って意識のないルティをベッドに寝かせて、布団をかけるジークを睨みつける。ルティに駆け寄ると、こっちの気も知らないで静かに寝息を立てていた。…本当に、ただ、寝ているだけのようだ。ホッと胸を撫で下ろす。
ルティの前で安堵する僕に、ジークは嘲笑した。
「…そんなに、この子供が大事か?」
ハッと、思い出したように後ろに振り返る。ルティを守るように… ジークと対峙した。
プギュゥッッ!
『お前…ッ!』
ジークの狙いがわからない。なんの目的があって、ルティを眠らせたのか。なんの目的があって… 朝と夜の時間を巻き戻したのか。
そして、
誰にも気付かれず、朝を象徴する陽を隠し… 夜を象徴とする陰の支配が出来たのか。それが出来るのはただ一人。
『この国の守護精霊、闇の精霊王 ジークォン!』
僕の言葉にジークはクツリと喉で笑う。
「…なんだ、知っていたのか。一つ、訂正入れるなら『元』になるがな」
プギッッ!
『ルティをどうするつもりで…ッ!』
静かに寝息を立てるルティを守るように前に出る僕はジークに詰め寄る勢いで問いただす。
だけど、
そんな僕をジークは… 見つめた。笑いもせず、真っすぐに僕を見据えて、言い放つ。
「それはこっちの台詞だ。お前こそ、こいつを巻き込んでどういうつもりだ?」
嘲笑でもなく、怒るのでもなく… ただ、静かに口を開いた。
プギュゥ!
『巻き込む…?巻き込んでなんかいない!!僕はただ…』
「巻き込んでいない、だと?…この状況でよく言える。この子を違う世界から連れてきただろう?それを巻き込んでない、と… 本当に、そう言えるのか?」
『…………』
「ルティ」
『ッ!』
ジークの口から発せられた『ルティ』という単語に、体が過剰に反応するーー。
ジキルドの従者ジークが部屋に来た途端に、瞬時に身を隠した。
物陰からルティと話すジークをじっと観察していると、ジキルドの従者だというジークの瞳が一瞬、妖しく輝いたのを見逃さなかった。
ーーあれが人間だって?そんな馬鹿な!!確かにさっきまではあのジークという従者からは人間の気配しかしなかった!なのに、今の今まで朝だった時間から夜へと変わった瞬間、人間の気配から僕と同じ気配に変わった。そう… 闇の眷属の、それも僕以上に濃い闇の力を纏って。
あれが人間だって?
ちがう!今ならわかる。この気配は…ッ!!
一度はルティに効かなかったジークの力も、二度目にはさらに力を強めたのか、ルティの瞼が力なく降りていく…
最後には、
ジークの袖を掴むも、力尽きたように…
だらり、と落ちる腕。くたりと崩れるルティの体を……
ドサッ!
抱きとめたジークは…
『ルティ!!』
急いで駆け寄る僕を真っすぐに見据えた。
「なんだ、もう… 隠れんぼはやめたのか?」
プキュゥ!
『ルティに何をした!?』
「うるさい。目の前にいるんだ、キャンキャン騒ぐな」
『ル…「ハァーッ。…まったく、少し落ち着け。俺は何もしていない。ただ、寝かせただけだ」
そう言って意識のないルティをベッドに寝かせて、布団をかけるジークを睨みつける。ルティに駆け寄ると、こっちの気も知らないで静かに寝息を立てていた。…本当に、ただ、寝ているだけのようだ。ホッと胸を撫で下ろす。
ルティの前で安堵する僕に、ジークは嘲笑した。
「…そんなに、この子供が大事か?」
ハッと、思い出したように後ろに振り返る。ルティを守るように… ジークと対峙した。
プギュゥッッ!
『お前…ッ!』
ジークの狙いがわからない。なんの目的があって、ルティを眠らせたのか。なんの目的があって… 朝と夜の時間を巻き戻したのか。
そして、
誰にも気付かれず、朝を象徴する陽を隠し… 夜を象徴とする陰の支配が出来たのか。それが出来るのはただ一人。
『この国の守護精霊、闇の精霊王 ジークォン!』
僕の言葉にジークはクツリと喉で笑う。
「…なんだ、知っていたのか。一つ、訂正入れるなら『元』になるがな」
プギッッ!
『ルティをどうするつもりで…ッ!』
静かに寝息を立てるルティを守るように前に出る僕はジークに詰め寄る勢いで問いただす。
だけど、
そんな僕をジークは… 見つめた。笑いもせず、真っすぐに僕を見据えて、言い放つ。
「それはこっちの台詞だ。お前こそ、こいつを巻き込んでどういうつもりだ?」
嘲笑でもなく、怒るのでもなく… ただ、静かに口を開いた。
プギュゥ!
『巻き込む…?巻き込んでなんかいない!!僕はただ…』
「巻き込んでいない、だと?…この状況でよく言える。この子を違う世界から連れてきただろう?それを巻き込んでない、と… 本当に、そう言えるのか?」
『…………』
「ルティ」
『ッ!』
ジークの口から発せられた『ルティ』という単語に、体が過剰に反応するーー。
14
お気に入りに追加
3,783
あなたにおすすめの小説
小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~
朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」
普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。
史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。
その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。
外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。
いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。
領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。
彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。
やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。
無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。
(この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)
運命を変えるために良い子を目指したら、ハイスペ従者に溺愛されました
十夜 篁
BL
初めて会った家族や使用人に『バケモノ』として扱われ、傷ついたユーリ(5歳)は、階段から落ちたことがきっかけで神様に出会った。
そして、神様から教えてもらった未来はとんでもないものだった…。
「えぇ!僕、16歳で死んじゃうの!?
しかも、死ぬまでずっと1人ぼっちだなんて…」
ユーリは神様からもらったチートスキルを活かして未来を変えることを決意!
「いい子になってみんなに愛してもらえるように頑張ります!」
まずユーリは、1番近くにいてくれる従者のアルバートと仲良くなろうとするが…?
「ユーリ様を害する者は、すべて私が排除しましょう」
「うぇ!?は、排除はしなくていいよ!!」
健気に頑張るご主人様に、ハイスペ従者の溺愛が急成長中!?
そんなユーリの周りにはいつの間にか人が集まり…
《これは、1人ぼっちになった少年が、温かい居場所を見つけ、運命を変えるまでの物語》
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
目覚めたそこはBLゲームの中だった。
慎
BL
ーーパッパー!!
キキーッ! …ドンッ!!
鳴り響くトラックのクラクションと闇夜を一点だけ照らすヘッドライト‥
身体が曲線を描いて宙に浮く…
全ての景色がスローモーションで… 全身を襲う痛みと共に訪れた闇は変に心地よくて、目を開けたらそこは――‥
『ぇ゙ッ・・・ ここ、どこ!?』
異世界だった。
否、
腐女子だった姉ちゃんが愛用していた『ファンタジア王国と精霊の愛し子』とかいう… なんとも最悪なことに乙女ゲームは乙女ゲームでも… BLゲームの世界だった。
【完結】もふもふ獣人転生
*
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。
ちっちゃなもふもふ獣人と、攻略対象の凛々しい少年の、両片思い? な、いちゃらぶもふもふなお話です。
本編完結しました!
おまけをちょこちょこ更新しています。
第12回BL大賞、奨励賞をいただきました、読んでくださった方、応援してくださった方、投票してくださった方のおかげです、ほんとうにありがとうございました!
バッドエンドの異世界に悪役転生した僕は、全力でハッピーエンドを目指します!
あ
BL
16才の初川終(はつかわ しゅう)は先天性の心臓の病気だった。一縷の望みで、成功率が低い手術に挑む終だったが……。
僕は気付くと両親の泣いている風景を空から眺めていた。それから、遠くで光り輝くなにかにすごい力で引き寄せられて。
目覚めれば、そこは子どもの頃に毎日読んでいた大好きなファンタジー小説の世界だったんだ。でも、僕は呪いの悪役の10才の公爵三男エディに転生しちゃったみたい!
しかも、この世界ってバッドエンドじゃなかったっけ?
バッドエンドをハッピーエンドにする為に、僕は頑張る!
でも、本の世界と少しずつ変わってきた異世界は……ひみつが多くて?
嫌われ悪役の子どもが、愛されに変わる物語。ほのぼの日常が多いです。
◎体格差、年の差カップル
※てんぱる様の表紙をお借りしました。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる