26 / 117
- 陰の王国と廻りだす歯車 -
『孤独感と思いもよらぬ訪問者』
しおりを挟む
パタン、と音を立てて閉まる扉を見つめて、兄上が出ていくのを見届けると、バサリ!と羽毛布団の中に潜り込んだ。きっとこの光景を母上が見たら卒倒するかもしれない。王族に有るまじき行為だと。
…けれど、こうせずにはいられなかった。自分が自分を保つために心細くて、権力なんて欲しくないのに、きっと周りはそっとしておいてくれない。
特に母は僕に異常に執着して、ずっと一人になれなかった。さっきだってそうです。失神する前、母上は僕を抱きしめて、その耳に囁きました。兄上に負けてはいけないと。国王に相応しいのはお前だと。それこそ国家反逆罪を問われてもおかしくない発言をあの人は僕に囁いた。
そのことを知ってか知らずか、再び目が覚めると、部屋には僕と兄上の二人だけ。
そして、
僕を膝の上に乗せた兄上は国家反逆罪は大罪で処刑だと言いました。滝のような冷や汗と共に、身体がカタカタと震える…。兄上は僕が兄上に対し恐怖心から震えていると思ったようですが、あながち間違いでもありません。
ですが、僕が貴方への恐怖心を拭えないのは、まるでゲームのレールから逃れることは出来ないと言われているようで、兄上の口から出た『国家反逆罪は処刑になる』と言う言葉が頭の中を占めていく。
どう足掻いても、このレールから逃れることは出来ないのでしょうか…。母上はきっと近いうちに…。でも、今の自分ではどうすることも出来ない。けれど、ゲーム上で僕と母上を処刑した兄上に、相談することも出来ない。話すことも出来ない。……下手をすれば、ゲームどおりに進行してしまうかもしれない。
…こんな出会い方でなければ、母上の子供でなかったら素直に兄上を慕うことが出来たのに。今の僕には… 兄上を慕う心と兄上に対する恐怖心が混ざり合って感情がごちゃ混ぜで、自分以外が兄上も母上も全てが… 自分の敵に思えて仕方がなかった。
すっぽり被った羽毛布団の中で声を凝らして、部屋の外に聞こえないように… 嗚咽を漏らして泣いた。誰にも相談が出来なくて自分以外が怖くて、いろんな思いでごちゃ混ぜの心が壊れそうで…
「ふ、ぅ…ッ」
嗚咽を漏らして、すっぽり被った羽毛布団の中でひっそり泣いていたときでした。
ぽすっ!
上から何かが落ちてきたように被っていた羽毛布団に小さな重みが加わったのは一一。
何でしょうか…。涙で濡れた目尻を拭い、羽毛布団から、いそいそと頭だけ出すと…
プモッ!
そこには、
「バ、ク…ッ?」
黒を基調とした小さな体に、鼻がほんの少し長めの… プーモが羽毛布団の上から、頭だけ出す僕を見て首を傾げていました。
…けれど、こうせずにはいられなかった。自分が自分を保つために心細くて、権力なんて欲しくないのに、きっと周りはそっとしておいてくれない。
特に母は僕に異常に執着して、ずっと一人になれなかった。さっきだってそうです。失神する前、母上は僕を抱きしめて、その耳に囁きました。兄上に負けてはいけないと。国王に相応しいのはお前だと。それこそ国家反逆罪を問われてもおかしくない発言をあの人は僕に囁いた。
そのことを知ってか知らずか、再び目が覚めると、部屋には僕と兄上の二人だけ。
そして、
僕を膝の上に乗せた兄上は国家反逆罪は大罪で処刑だと言いました。滝のような冷や汗と共に、身体がカタカタと震える…。兄上は僕が兄上に対し恐怖心から震えていると思ったようですが、あながち間違いでもありません。
ですが、僕が貴方への恐怖心を拭えないのは、まるでゲームのレールから逃れることは出来ないと言われているようで、兄上の口から出た『国家反逆罪は処刑になる』と言う言葉が頭の中を占めていく。
どう足掻いても、このレールから逃れることは出来ないのでしょうか…。母上はきっと近いうちに…。でも、今の自分ではどうすることも出来ない。けれど、ゲーム上で僕と母上を処刑した兄上に、相談することも出来ない。話すことも出来ない。……下手をすれば、ゲームどおりに進行してしまうかもしれない。
…こんな出会い方でなければ、母上の子供でなかったら素直に兄上を慕うことが出来たのに。今の僕には… 兄上を慕う心と兄上に対する恐怖心が混ざり合って感情がごちゃ混ぜで、自分以外が兄上も母上も全てが… 自分の敵に思えて仕方がなかった。
すっぽり被った羽毛布団の中で声を凝らして、部屋の外に聞こえないように… 嗚咽を漏らして泣いた。誰にも相談が出来なくて自分以外が怖くて、いろんな思いでごちゃ混ぜの心が壊れそうで…
「ふ、ぅ…ッ」
嗚咽を漏らして、すっぽり被った羽毛布団の中でひっそり泣いていたときでした。
ぽすっ!
上から何かが落ちてきたように被っていた羽毛布団に小さな重みが加わったのは一一。
何でしょうか…。涙で濡れた目尻を拭い、羽毛布団から、いそいそと頭だけ出すと…
プモッ!
そこには、
「バ、ク…ッ?」
黒を基調とした小さな体に、鼻がほんの少し長めの… プーモが羽毛布団の上から、頭だけ出す僕を見て首を傾げていました。
41
お気に入りに追加
3,792
あなたにおすすめの小説

運命を変えるために良い子を目指したら、ハイスペ従者に溺愛されました
十夜 篁
BL
初めて会った家族や使用人に『バケモノ』として扱われ、傷ついたユーリ(5歳)は、階段から落ちたことがきっかけで神様に出会った。
そして、神様から教えてもらった未来はとんでもないものだった…。
「えぇ!僕、16歳で死んじゃうの!?
しかも、死ぬまでずっと1人ぼっちだなんて…」
ユーリは神様からもらったチートスキルを活かして未来を変えることを決意!
「いい子になってみんなに愛してもらえるように頑張ります!」
まずユーリは、1番近くにいてくれる従者のアルバートと仲良くなろうとするが…?
「ユーリ様を害する者は、すべて私が排除しましょう」
「うぇ!?は、排除はしなくていいよ!!」
健気に頑張るご主人様に、ハイスペ従者の溺愛が急成長中!?
そんなユーリの周りにはいつの間にか人が集まり…
《これは、1人ぼっちになった少年が、温かい居場所を見つけ、運命を変えるまでの物語》

田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?
下菊みこと
BL
髪色が呪われた黒であったことから両親から疎まれ、隠居した父方の祖父母のいる田舎で育ったアリスティア・ベレニス・カサンドル。カサンドル侯爵家のご令息として恥ずかしくない教養を祖父母の教えの元身につけた…のだが、農作業の手伝いの方が貴族として過ごすより好き。
そんなアリスティア十八歳に急な婚約が持ち上がった。アリスティアの双子の姉、アナイス・セレスト・カサンドル。アリスティアとは違い金の御髪の彼女は侯爵家で大変かわいがられていた。そんなアナイスに、とある同盟国の公爵家の当主との婚約が持ちかけられたのだが、アナイスは婿を取ってカサンドル家を継ぎたいからと男であるアリスティアに婚約を押し付けてしまう。アリスティアとアナイスは髪色以外は見た目がそっくりで、アリスティアは田舎に引っ込んでいたためいけてしまった。
アリスは自分の性別がバレたらどうなるか、また自分の呪われた黒を見て相手はどう思うかと心配になった。そして顔合わせすることになったが、なんと公爵家の執事長に性別が即行でバレた。
公爵家には公爵と歳の離れた腹違いの弟がいる。前公爵の正妻との唯一の子である。公爵は、正当な継承権を持つ正妻の息子があまりにも幼く家を継げないため、妾腹でありながら爵位を継承したのだ。なので公爵の後を継ぐのはこの弟と決まっている。そのため公爵に必要なのは同盟国の有力貴族との縁のみ。嫁が子供を産む必要はない。
アリスティアが男であることがバレたら捨てられると思いきや、公爵の弟に懐かれたアリスティアは公爵に「家同士の婚姻という事実だけがあれば良い」と言われてそのまま公爵家で暮らすことになる。
一方婚約者、二十五歳のクロヴィス・シリル・ドナシアンは嫁に来たのが男で困惑。しかし可愛い弟と仲良くなるのが早かったのと弟について黙って結婚しようとしていた負い目でアリスティアを追い出す気になれず婚約を結ぶことに。
これはそんなクロヴィスとアリスティアが少しずつ近づいていき、本物の夫婦になるまでの記録である。
小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。

兄たちが弟を可愛がりすぎです
クロユキ
BL
俺が風邪で寝ていた目が覚めたら異世界!?
メイド、王子って、俺も王子!?
おっと、俺の自己紹介忘れてた!俺の、名前は坂田春人高校二年、別世界にウィル王子の身体に入っていたんだ!兄王子に振り回されて、俺大丈夫か?!
涙脆く可愛い系に弱い春人の兄王子達に振り回され護衛騎士に迫って慌てていっもハラハラドキドキたまにはバカな事を言ったりとしている主人公春人の話を楽しんでくれたら嬉しいです。
1日の話しが長い物語です。
誤字脱字には気をつけてはいますが、余り気にしないよ~と言う方がいましたら嬉しいです。

転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが
松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。
ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。
あの日までは。
気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。
(無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!)
その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。
元日本人女性の異世界生活は如何に?
※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。
5月23日から毎日、昼12時更新します。

気づいたら周りの皆が僕を溺愛していた
しののめ
BL
クーレル侯爵家に末っ子として生まれたノエル・クーレルがなんだかんだあって、兄×2や学園の友達etc…に溺愛される???
家庭環境複雑だけれど、皆に愛されながら毎日を必死に生きる、ノエルの物語です。
R表現の際には※をつけさせて頂きます。当分は無い予定です。
現在文章の大工事中です。複数表現を改める、大きくシーンの描写を改める箇所があると思います。時間が取れず以降の投稿が出来ませんでしたが、現在まで多くの方に閲覧頂いている為、改稿が終わり次第完結までの展開を書き進めようと思っております。話の追加には相当な時間を要すると思いますが、宜しければお付き合いください。
(第1章の改稿が完了しました。2024/11/17)
(第2章の改稿が完了しました。2024/12/18)

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み

乙女ゲームのサポートメガネキャラに転生しました
西楓
BL
乙女ゲームのサポートキャラとして転生した俺は、ヒロインと攻略対象を無事くっつけることが出来るだろうか。どうやらヒロインの様子が違うような。距離の近いヒロインに徐々に不信感を抱く攻略対象。何故か攻略対象が接近してきて…
ほのほのです。
※有難いことに別サイトでその後の話をご希望されました(嬉しい😆)ので追加いたしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる