断罪フラグを回避したらヒロインの攻略対象者である自分の兄に監禁されました。

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- 陰の王国と廻りだす歯車 -

『孤独感と思いもよらぬ訪問者』

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パタン、と音を立てて閉まる扉を見つめて、兄上が出ていくのを見届けると、バサリ!と羽毛布団の中に潜り込んだ。きっとこの光景を母上が見たら卒倒するかもしれない。王族に有るまじき行為だと。
…けれど、こうせずにはいられなかった。自分が自分を保つために心細くて、権力なんて欲しくないのに、きっと周りはそっとしておいてくれない。

特に母は僕に異常に執着して、ずっと一人になれなかった。さっきだってそうです。失神する前、母上は僕を抱きしめて、その耳に囁きました。兄上に負けてはいけないと。国王に相応しいのはお前だと。それこそ国家反逆罪を問われてもおかしくない発言をあの人は僕に囁いた。

そのことを知ってか知らずか、再び目が覚めると、部屋には僕と兄上の二人だけ。

  そして、

僕を膝の上に乗せた兄上は国家反逆罪は大罪で処刑だと言いました。滝のような冷や汗と共に、身体がカタカタと震える…。兄上は僕が兄上に対し恐怖心から震えていると思ったようですが、あながち間違いでもありません。

ですが、僕が貴方への恐怖心を拭えないのは、まるでゲームのレールから逃れることは出来ないと言われているようで、兄上の口から出た『国家反逆罪は処刑になる』と言う言葉が頭の中を占めていく。

どう足掻いても、このレールから逃れることは出来ないのでしょうか…。母上はきっと近いうちに…。でも、今の自分ではどうすることも出来ない。けれど、ゲーム上で僕と母上を処刑した兄上に、相談することも出来ない。話すことも出来ない。……下手をすれば、ゲームどおりに進行してしまうかもしれない。

…こんな出会い方でなければ、母上の子供でなかったら素直に兄上を慕うことが出来たのに。今の僕には… 兄上を慕う心と兄上に対する恐怖心が混ざり合って感情がごちゃ混ぜで、自分以外が兄上も母上も全てが… 自分の敵に思えて仕方がなかった。


すっぽり被った羽毛布団の中で声を凝らして、部屋の外に聞こえないように… 嗚咽を漏らして泣いた。誰にも相談が出来なくて自分以外が怖くて、いろんな思いでごちゃ混ぜの心が壊れそうで… 

「ふ、ぅ…ッ」

嗚咽を漏らして、すっぽり被った羽毛布団の中でひっそり泣いていたときでした。

  ぽすっ!

上から何かが落ちてきたように被っていた羽毛布団に小さな重みが加わったのは一一。

何でしょうか…。涙で濡れた目尻を拭い、羽毛布団から、いそいそと頭だけ出すと…

  プモッ!

そこには、

「バ、ク…ッ?」

黒を基調とした小さな体に、鼻がほんの少し長めの… プーモが羽毛布団の上から、頭だけ出す僕を見て首を傾げていました。
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