21 / 117
- 陰の王国と廻りだす歯車 -
『オオカミと平和ボケした ” 仔羊 ” 』
しおりを挟む真っ白な空間、そこに僕はいました。
「あっっれぇぇえ!?なんですか、このデジャヴは!?」
『……なんで、また此処に来たの?』
あ、
「バク!」
後ろから聞こえた声に振り返ると、いつかの見覚えのある… っていうか、さっき会ったばかりですが。人型バージョンのバクが何故か呆れた表情でふよふよと宙に浮いていました。
『なんで、そこで嬉しそうな表情になるかなー?キミ、自分の今の状況わかってる?』
「バクッ!なぜ、人型なんですか!?」
『いや、質問の答えになってないよ。それと、なんでそこでガッカリした表情になるのか僕にはわからないんだけど。前にも言ったけど、一応 こっちが本体だからね?』
勝手に期待されてガッカリされても困るんだけど。というバクに僕は抱きつく。
『ぅわっ!?』
『…もう!危ないなあ。抱きつくのはいいけど、いやホイホイ抱きつくのは良くないけど、勢いつけてくるのはやめて』
僕がギックリ腰になったらどうすんの?と言ってくるバクに、僕は首を傾げた。
「えっ!?精霊でも、ギックリ腰になるんですか !?」
『……ハァ、例えばの話だよ』
そもそも、僕ら精霊はキミたち人間ほど柔に出来てないからギックリ腰なんかにならないよ。と言いつつ、なんだかんだで、しっかり受け止めてくれるバクの優しさに思わず口元が緩んだ。
『まったくキミは、本当にいつもこっちが想像つかないことばかりしてくれるよね』
呆れた表情で溜め息を吐くバクに何のことかわからない僕は首を傾げる…
『前回は僕がキミの精神世界に意図的に繋げた。…だけど、今回は違う。キミ… 気絶したでしょ?』
腕を組んでふよふよと宙に浮くバクに、僕はさっきまでの記憶を振り返る。
「あ」
『ハァ、今回はキミが意識を飛ばして無意識に自ら此処に来てしまったんだよ。…女性恐怖症だっけ?』
Σえっ なんでわかったんでしょうか!?
『キミって… 良いのか悪いのか、すぐに表情に出るからわかりやすいよね。僕がキミの女性恐怖症に気づいたのはキミが此処に来た経緯を知るためにキミの記憶を読み取ったからだよ』
「記憶を読み取った…?」
『そう。ま、それが出来るのはこの世界のみの記憶だけどね。だから、この世界から逸脱しているキミが前にいた世界の記憶は僕には読み取れない』
…そうなんですね。
『―― で、話を戻すけど。
キミさぁ、さっきといい… もう少し警戒心を持ったほうがいいんじゃない?』
ほぇ?
『ほぇ?じゃないよ。キミのことを言ってるんだよ?わかってる??さっきもそうだけど、僕が悪いオオカミだったらどーするの?キミはいいとこ、草食で のほほんのんびりした仔羊。それこそ、危険の ” き ” も知らない平和ボケした仔羊。
取って喰われる前に、もう少し他人に警戒心もいうものを…』
ど、どどどうしましょう!?
バクが何やらお小言を言い始めたと思ったら、続けて本格的な説教が始まりました。そのうえに、辛辣です!酷い言いようです… 一体、何がバクにそうさせたんでしょうか?
オロオロと狼狽する僕に、バクが今度は半眼の目を向けてきます。何を言いたいのか、今ひとつわからない僕にバク様は盛大に溜め息を吐かれましたっと!
『ハァー。これだけ言ってもわからないなんて… キミ、鈍チンにも程があるよ。純粋培養?ここまで、超ド級の天然記念物は今まで見たことがないよ』
純粋… 培養?
こてん、と首を傾げて、とりあえず 「えへへっ」と笑ってみる。
『言っとくけど、褒めてないからね?』
眉をしかめるバクに僕は心配性だなあと笑う
「わかってますよ。ふふっ、ただ… 僕が純粋培養だなんて。おかしなことを言うんだなと思いまして。バクは心配のし過ぎです」
なんだか、擽ったい気持ちに照れ隠しに、
『ふふっ』と声を漏らすと、何故でしょうか。
バクが肩を竦めて、その覆い隠すことも忘れた溜息が、その唇から漏れました…
『ハァ、いや… キミ、全然。全く、僕の言ってること理解してないでしょ?』
「わかってますよ」
『いや、やっぱりわかってないよ!』
ふよふよと浮きながら額に手を置いて、『あーもう!』と唸ると、そのまま髪を掻き上げてバクは何かを吹っ切ったように僕を見つめました。
51
お気に入りに追加
3,783
あなたにおすすめの小説
小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~
朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」
普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。
史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。
その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。
外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。
いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。
領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。
彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。
やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。
無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。
(この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)
運命を変えるために良い子を目指したら、ハイスペ従者に溺愛されました
十夜 篁
BL
初めて会った家族や使用人に『バケモノ』として扱われ、傷ついたユーリ(5歳)は、階段から落ちたことがきっかけで神様に出会った。
そして、神様から教えてもらった未来はとんでもないものだった…。
「えぇ!僕、16歳で死んじゃうの!?
しかも、死ぬまでずっと1人ぼっちだなんて…」
ユーリは神様からもらったチートスキルを活かして未来を変えることを決意!
「いい子になってみんなに愛してもらえるように頑張ります!」
まずユーリは、1番近くにいてくれる従者のアルバートと仲良くなろうとするが…?
「ユーリ様を害する者は、すべて私が排除しましょう」
「うぇ!?は、排除はしなくていいよ!!」
健気に頑張るご主人様に、ハイスペ従者の溺愛が急成長中!?
そんなユーリの周りにはいつの間にか人が集まり…
《これは、1人ぼっちになった少年が、温かい居場所を見つけ、運命を変えるまでの物語》
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
目覚めたそこはBLゲームの中だった。
慎
BL
ーーパッパー!!
キキーッ! …ドンッ!!
鳴り響くトラックのクラクションと闇夜を一点だけ照らすヘッドライト‥
身体が曲線を描いて宙に浮く…
全ての景色がスローモーションで… 全身を襲う痛みと共に訪れた闇は変に心地よくて、目を開けたらそこは――‥
『ぇ゙ッ・・・ ここ、どこ!?』
異世界だった。
否、
腐女子だった姉ちゃんが愛用していた『ファンタジア王国と精霊の愛し子』とかいう… なんとも最悪なことに乙女ゲームは乙女ゲームでも… BLゲームの世界だった。
【完結】もふもふ獣人転生
*
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。
ちっちゃなもふもふ獣人と、攻略対象の凛々しい少年の、両片思い? な、いちゃらぶもふもふなお話です。
本編完結しました!
おまけをちょこちょこ更新しています。
第12回BL大賞、奨励賞をいただきました、読んでくださった方、応援してくださった方、投票してくださった方のおかげです、ほんとうにありがとうございました!
バッドエンドの異世界に悪役転生した僕は、全力でハッピーエンドを目指します!
あ
BL
16才の初川終(はつかわ しゅう)は先天性の心臓の病気だった。一縷の望みで、成功率が低い手術に挑む終だったが……。
僕は気付くと両親の泣いている風景を空から眺めていた。それから、遠くで光り輝くなにかにすごい力で引き寄せられて。
目覚めれば、そこは子どもの頃に毎日読んでいた大好きなファンタジー小説の世界だったんだ。でも、僕は呪いの悪役の10才の公爵三男エディに転生しちゃったみたい!
しかも、この世界ってバッドエンドじゃなかったっけ?
バッドエンドをハッピーエンドにする為に、僕は頑張る!
でも、本の世界と少しずつ変わってきた異世界は……ひみつが多くて?
嫌われ悪役の子どもが、愛されに変わる物語。ほのぼの日常が多いです。
◎体格差、年の差カップル
※てんぱる様の表紙をお借りしました。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
非力な守護騎士は幻想料理で聖獣様をお支えします
muku
BL
聖なる山に住む聖獣のもとへ守護騎士として送られた、伯爵令息イリス。
非力で成人しているのに子供にしか見えないイリスは、前世の記憶と山の幻想的な食材を使い、食事を拒む聖獣セフィドリーフに料理を作ることに。
両親に疎まれて居場所がないながらも、健気に生きるイリスにセフィドリーフは心動かされ始めていた。
そして人間嫌いのセフィドリーフには隠された過去があることに、イリスは気づいていく。
非力な青年×人間嫌いの人外の、料理と癒しの物語。
※全年齢向け作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる