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- 陰の王国と廻りだす歯車 -

『居た堪れない空気と周りとの温度差』

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「だ、大丈夫です!……あ、兄上にご心配おかけしてすみゃ・・・」

「………」

はぅっ/// か、噛んだ!!思いっきし噛んでしまいました!!もう、やだっ!穴があったら入りたいです…ッ!!!
ひぃいっ!!!兄上の視線が痛いッ!! 周りの沈黙が怖いですッ!お願いですから無言にならないでーーッッ!!!

   頬が引き攣る。

この人によって、僕の断罪フラグが掛かってると思うと、一層 恐怖心が強くなる…。

そんな僕が兄上からの視線を避けようと、挙動不審に目を彷徨わせると、兄上が不意に僕に手を伸ばした。

  ビクッ!

ああ!!ど、どど…ッどうしましょう!?いくら恐怖心が勝ったからって、あからさまに肩が跳ね上がってしまいました!!

ど、どどどうしましょう!??どうしたらいいんですか!?今ので、兄上に恐怖心を抱いていることが確実にバレたんですが!?


サーッと青ざめているだろう僕に兄上は自身の手と僕を交互にジッと見つめると、普段は笑みを浮かべることもない兄上が… 冷酷・残酷・無慈悲とも言われた、あの兄上が… 。

  兄上の笑みと言えば、

酷薄な目で相手を見据えるときに見せる嘲笑と
冷笑くらいしか知らない、あの兄上が…

温かみのある笑みを僕に向けました。


え・・・。ちょっと待って!?

これ、どういう展開!?こんな展開、ゲームになかったと思うんですが!?ぇえ!?

驚きで大きく目を見開く僕に兄上は微笑むと、今度は僕を怯えさせないようにか、


  「触れるぞ?」

と、ひと声かけて僕の頭に手を伸ばした。


クシャリ、と僕の髪を弄ぶように撫でる兄上の手に、最初は恐怖心から警戒していた心も若干ほぐれ、その手に身を委ねるように無意識のうちに、すり寄っていたことに、この時の僕は気づきませんでした。

「………ッ」

だから、兄上が息を呑んだのも、一瞬周りが変な空気になったことも… 僕が知るはずもなく、
そもそも頭を撫でられたのも… 何年ぶりなのか。前世は両親共に海外で仕事で空けてたし、甘える機会なんてそうありませんでした。

唯一の身内の妹は… 論外で、兄妹仲良くというわけにもいかなく、妹と口を聞くときは妹のパシリか罵倒か暴力を振るわれるときくらいでした。

この世界に来てからも、

兄上と関わることもなく、母上からは息子というよりも愛していた前陛下の面影を求めて熱を含んだ目で視姦され、ハグや頭を撫でられることはあっても… それは純粋に息子に対する気持ちからではなく、前陛下の面影を求めて僕に触れている、…が正しい。


  だから、

純粋に弟に対して心配し愛でる兄上の… その触れる手に不思議と嫌悪感はありませんでした。

「……気分はどうだ?大丈夫か?」

「は、はい…ッ!申し訳ありません兄上!!兄上の手を煩わせてしまって…」


この人は即位したばかりで、まだ国も安定しているとは言えない。なのに、僕のせいで…

申し訳なく思って顔を俯かせると、

そんな僕の顎に兄上は指先を添えて、そっと上に上げました。


「あ、兄上!?」

兄上の行動に困惑しながらも、兄上の意図を図ろうとするも、その為す行動の意味がわからない。
いえ、そもそも今まで関わって来なかった兄上の意図を探ろうなど無謀過ぎたのかもしれません。

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