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- 乙女ゲームの世界観と宿命 -

『崩壊レベルと僕の死活問題』

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『でも、だとしたら、今のキミは転生した人間とあまり変わらないってことになるよね?』

あ、確かに… そうですね。僕はこうして、今度はこの世界のオーディットとして生を受けてるんですから言われてみれば…。


   う、ん…?

首を傾げる僕にバクは話しを続けた。

『そう、そこが正規の手続きを踏んだ転生者との大きな違いがあるんだ。そして、キミの魂の不安定な理由も――。

   いいかい?

コップいっぱいに水が入ったコップに、さらに水を加えると… どうなる?』


「……溢れますね」

『そう。普通に考えれば、溢れちゃうよね?だってコップにも許容量があるんだから。

   つまりね、

僕が言いたいのは、イレギュラーのキミを受け入れた時点で処理しきれなくていっぱいいっぱいなのに、正規の転生者同様にキミにチートの力を与えちゃうと、この世界の許容量がオーバーして崩壊するレベルなんだよ』


…なるほど。つまり、従来の転生者とはそこが異なる、ということなんですね。


『ただ、キミの場合。イレギュラー中のほんとのイレギュラーだから、キミというオーディットがこの世界でどうなるかわからない』

「・・・え、嘘ですよね!?」


どうなるか、わからないとか… は?え??なんですかその不安要素は!?

『キミにしたらそれは不安要素でしかならないと思う。だけど、僕らからしても本当に今回のキミの件は異例中の中でも特に異例なんだ。
…いくら、この世界が突発的にキミにオーディットという生を与えたとしても、キミがイレギュラーというのは変えられない事実。

  それが今後、この世界にどんな影響を与えるのか…。従来の乙女ゲームのレールに沿るのか、それとも捻じ曲がった世界になるのかも… 僕らにとっても全く想像つかないんだ』


ハァ、と溜め息ついて肩を竦めるバク。何も考えずあの時、咄嗟に起こした僕の行動でそんなことになるなんて… 思ってもいませんでした。

『――‥と、そろそろ時間だね』

唐突に告げるバクに僕はハッと顔を上げる。


「ま、待ってください…!」

僕はまだ… あなたに聞かなければいけないことがあるんです!!!


『ん?なにか、わからないことでもあった?』

首を傾げるバクに僕は聞いた。


「バクは… 今の人型と、さっきのプーモ…。
 一体、どちらが本体になるんですか?」

あれ?気のせいかな??僕にはキミの目がギラついてるように見えるんだけど、と言うバクにそんなことはないですよ?と笑顔で答える。


『んー?それって、重要??』

怪訝な目を向けてくるバクに僕は拳を握りしめる。

「はい。僕の… 死活問題です!!」


くわっと目を見開く僕にバクは引き気味でした。……なぜでしょうか?

『んー… そうだね、プーモの姿は仮の姿になるから、人型のこっちの姿が本体になるんじゃないかな?』


その言葉に愕然とする僕は… そのまま、下に膝をついてガクリと項垂れた。

『なに、いきなり!?どうしたの!?』


僕の項垂れた様子に狼狽するバクに僕は意を決して言った。

「……僕、バクはずっとこのままがいいと思います」

『は?なんで??』

首を傾げるバクに僕は顔を上げた。

「だって、人型のバクに僕はなんの価値も見出せないし… 。っていうか、人の形したバクに存在価値なんて無いと思うんです!」


『……キミさぁ、言葉の暴力って知ってる?』

呆れた声の後に、

にこりと迫り来るバクの笑顔に僕は『だって…』と漏らした。
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