10 / 117
- 乙女ゲームの世界観と宿命 -
『――‥ あの日の真実』
しおりを挟む
『影は僕を撒くために、足が速くて、すばしっこいネコに姿を変えて逃げたんだ。なんとか追いつめて、あと少しのところで… ネコに変化した影はキミと出会い、
そこでキミに目を付けた。
……正確には、キミが手に持っていた乙女ゲームにだけどね。いつ発生するかわからない時空の歪みを使わずして、元の世界にも帰れるんだから、そりゃあ目を付けるよね』
いやぁ、ホントに参ったよ!とニコニコと爽やかな笑顔で盛大に溜め息ついて僕を見ながら肩を竦めるバクに罪悪感を刺激される。
ぅぐッ!チクチク、バクの視線が痛い…
「ち、ちょっと待って下さい!矛盾してませんか?魔神の分身が時空の歪みを使って僕の世界に逃げてきたとか、僕の持ってた乙女ゲームに戻るためとか」
いろいろ、おかしいですよ!と矛盾点を言えばバクはまた首を振った。
『最初らへんに言ったと思うけど、全ての万物に心があり、魂があるって言ったよね?口では語らずとも意思は宿ると。それはどこの世界でも共通することなんだ。現に、キミがいた世界も… 僕らからすればひとつの箱庭に過ぎないんだよ』
混乱する僕にバクは困ったように笑って、そして僕を見据えて言った。
『キミが僕の話を聞いて混乱するのも、なんとなく分かるよ?けど、キミが前にいた世界が全てだとどうして思う?キミがいたあの世界が中心だと考えてはいけないよ。
キミは此処を乙女ゲームの世界だと思っている…。だけどね、此処も… 一つの世界なんだよ?』
「一つの… 世界?」
『そう、僕らからすればキミがいた世界もまた別の世界のゲームとして存在しているかもしれない…。全ては箱庭の一部の世界に過ぎなくて、その乙女ゲームもキミのいた世界もまた… その箱庭の副産物の他ならない。
つまりね、僕が言いたいのは…
此処はキミが思っているような乙女ゲームの世界であって、ゲームでない…
この世界の者は皆、生きているんだ。
混乱しているだろうキミに分かりやすく要約すると、影はキミの持っていた此処をモデルにした副産物、乙女ゲームを媒体にして元の世界に戻ってきた、というのが正しいね。だけど、影にとっても想定外のことが起きた。それがキミと、飛び出してきたトラックだ。
影としてはネコのまま、キミの持っていた乙女ゲームに触れさえすればそれで済む話だった。
だけど、想定外だったのは…
飛び込んできたトラックからネコを守ろうとしたキミの行動だよ。あのとき、キミはネコをトラックから守ろうとネコを咄嗟に掴んで茂みの向こうに投げたよね?』
そういえば…
「――確かに、僕はあのとき 咄嗟にネコを向こう側に投げましたね」
『それが、影にとって想定外の出来事だったんだよ。無論、僕にとってもだけどね。キミは純粋にネコを助けるつもりで逃したのだろうけど、影にとってはそれは想定外で慌てただろうね、きっと。
だって、帰るつもりでいたら、キミにいきなり投げられたんだから。
…ま、それで慌てて引き返して影はキミの元に戻ったんだけど、キミはトラックに轢かれた直後だった。そして影は、キミの持ってた乙女ゲームを媒体に強引に次元を歪め時空間に繋げた。そしてそれはキミがトラックに轢かれた直後と絶妙なタイミングだった。
トラックに轢かれ、死んだキミの魂は影が強引にこじ開けた時空間に一緒に引き摺り込まれたんだ。
要は巻き込まれたんだよね、キミ。
――‥ そして、ここからが本題だよ。いい?
本来、転生の場合、正式な手筈が済まされた上で、いろいろ条件を満たして初めて正規の異世界に転生できるんだ。だけど、キミの場合は正規の手続きを踏んでないから転生にならないんだ』
「異世界に転生するのに、条件とかいろいろあるんですね…」
へぇ、と自分のことなのに、どこかそれが他人事のように感じるのは何故なんでしょうか…。
そこでキミに目を付けた。
……正確には、キミが手に持っていた乙女ゲームにだけどね。いつ発生するかわからない時空の歪みを使わずして、元の世界にも帰れるんだから、そりゃあ目を付けるよね』
いやぁ、ホントに参ったよ!とニコニコと爽やかな笑顔で盛大に溜め息ついて僕を見ながら肩を竦めるバクに罪悪感を刺激される。
ぅぐッ!チクチク、バクの視線が痛い…
「ち、ちょっと待って下さい!矛盾してませんか?魔神の分身が時空の歪みを使って僕の世界に逃げてきたとか、僕の持ってた乙女ゲームに戻るためとか」
いろいろ、おかしいですよ!と矛盾点を言えばバクはまた首を振った。
『最初らへんに言ったと思うけど、全ての万物に心があり、魂があるって言ったよね?口では語らずとも意思は宿ると。それはどこの世界でも共通することなんだ。現に、キミがいた世界も… 僕らからすればひとつの箱庭に過ぎないんだよ』
混乱する僕にバクは困ったように笑って、そして僕を見据えて言った。
『キミが僕の話を聞いて混乱するのも、なんとなく分かるよ?けど、キミが前にいた世界が全てだとどうして思う?キミがいたあの世界が中心だと考えてはいけないよ。
キミは此処を乙女ゲームの世界だと思っている…。だけどね、此処も… 一つの世界なんだよ?』
「一つの… 世界?」
『そう、僕らからすればキミがいた世界もまた別の世界のゲームとして存在しているかもしれない…。全ては箱庭の一部の世界に過ぎなくて、その乙女ゲームもキミのいた世界もまた… その箱庭の副産物の他ならない。
つまりね、僕が言いたいのは…
此処はキミが思っているような乙女ゲームの世界であって、ゲームでない…
この世界の者は皆、生きているんだ。
混乱しているだろうキミに分かりやすく要約すると、影はキミの持っていた此処をモデルにした副産物、乙女ゲームを媒体にして元の世界に戻ってきた、というのが正しいね。だけど、影にとっても想定外のことが起きた。それがキミと、飛び出してきたトラックだ。
影としてはネコのまま、キミの持っていた乙女ゲームに触れさえすればそれで済む話だった。
だけど、想定外だったのは…
飛び込んできたトラックからネコを守ろうとしたキミの行動だよ。あのとき、キミはネコをトラックから守ろうとネコを咄嗟に掴んで茂みの向こうに投げたよね?』
そういえば…
「――確かに、僕はあのとき 咄嗟にネコを向こう側に投げましたね」
『それが、影にとって想定外の出来事だったんだよ。無論、僕にとってもだけどね。キミは純粋にネコを助けるつもりで逃したのだろうけど、影にとってはそれは想定外で慌てただろうね、きっと。
だって、帰るつもりでいたら、キミにいきなり投げられたんだから。
…ま、それで慌てて引き返して影はキミの元に戻ったんだけど、キミはトラックに轢かれた直後だった。そして影は、キミの持ってた乙女ゲームを媒体に強引に次元を歪め時空間に繋げた。そしてそれはキミがトラックに轢かれた直後と絶妙なタイミングだった。
トラックに轢かれ、死んだキミの魂は影が強引にこじ開けた時空間に一緒に引き摺り込まれたんだ。
要は巻き込まれたんだよね、キミ。
――‥ そして、ここからが本題だよ。いい?
本来、転生の場合、正式な手筈が済まされた上で、いろいろ条件を満たして初めて正規の異世界に転生できるんだ。だけど、キミの場合は正規の手続きを踏んでないから転生にならないんだ』
「異世界に転生するのに、条件とかいろいろあるんですね…」
へぇ、と自分のことなのに、どこかそれが他人事のように感じるのは何故なんでしょうか…。
40
お気に入りに追加
3,793
あなたにおすすめの小説

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み

乙女ゲームのサポートメガネキャラに転生しました
西楓
BL
乙女ゲームのサポートキャラとして転生した俺は、ヒロインと攻略対象を無事くっつけることが出来るだろうか。どうやらヒロインの様子が違うような。距離の近いヒロインに徐々に不信感を抱く攻略対象。何故か攻略対象が接近してきて…
ほのほのです。
※有難いことに別サイトでその後の話をご希望されました(嬉しい😆)ので追加いたしました。

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)

王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。
薄明 喰
BL
アーバスノイヤー公爵家の次男として生誕した僕、ルナイス・アーバスノイヤーは日本という異世界で生きていた記憶を持って生まれてきた。
アーバスノイヤー公爵家は表向きは代々王家に仕える近衛騎士として名を挙げている一族であるが、実は陰で王家に牙を向ける者達の処分や面倒ごとを片付ける暗躍一族なのだ。
そんな公爵家に生まれた僕も将来は家業を熟さないといけないのだけど…前世でなんの才もなくぼんやりと生きてきた僕には無理ですよ!!
え?
僕には暗躍一族としての才能に恵まれている!?
※すべてフィクションであり実在する物、人、言語とは異なることをご了承ください。
色んな国の言葉をMIXさせています。

悪役令息に転生したけど…俺…嫌われすぎ?
「ARIA」
BL
階段から落ちた衝撃であっけなく死んでしまった主人公はとある乙女ゲームの悪役令息に転生したが...主人公は乙女ゲームの家族から甘やかされて育ったというのを無視して存在を抹消されていた。
王道じゃないですけど王道です(何言ってんだ?)どちらかと言うとファンタジー寄り
更新頻度=適当
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる