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- 腐敗した王国と傀儡の王 -
『蝕む闇は歪な笑みを浮かべる』
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──がぶっ!
唐突に現れたそれは兄上の腕に噛みついた。
それを心底、つまらなさげに見つめると兄上はブンッとその腕を払い、
ブモッッ!!
バクが壁に叩きつけられる──。
「───ッ!?バクっつ!!!」
押さえつけていた片方の手が離れたことで、身を捩り暴れることでそこから抜け出すことができた…。プキュッと一声鳴いて動かなくなるバクの様子にドクンッと鼓動が跳ねる。鼓動がドクドクと大きく動き、微かに手先が震えた…
血相を変えて慌てて傍に駆け寄る。
「バク…!?バク…ッ!嫌だ… そんな、バク、どうして…!」
ガクガクと小刻みに震える体は… どんなに叱咤しても震えが止まらず。
(これ以上、誰も傷つけたくないのに… 僕のせいでバクが……!!!)
「愚かな…!愛し子の守り手である神獣が随分と落ちぶれたものだ!!そんな微弱な力ごときで何ができる?ふっ、はははっ!実に滑稽な!!…己のその不甲斐なさを思い知るがいい!!!」
ぎらぎらと光る眼で見下ろし、禍々しい赤黒い光をその手にバクに振り下ろそうとする兄上の腕に飛びついた。
「やめて…ッ!」
──バシッ!
「ええいっ!邪魔だ!!」
「ぅぐ…っ!」
けれど、それはすぐに払い除けられる。そして、勢いよく壁際に向かって投げられた僕がその衝撃で咳き込んでいると、不意に頭上に影が差す──。
「……悔しいか?人の子よ」
「く…っ、」
兄上の指先で顎を持ち上げられて、いやいや顔をあげる。
「侮辱に満ちた表情ほど愉快なものはない。だが、この私の手を煩わせるなど不快だ。せっかくの余興が…こんな落ちぶれた神獣によって邪魔をされるとは。まったく、興醒めだな」
『───だが、』
ヒタリ、とその瞳が不気味に歪められる。そして目を窄めるとさらに笑みを深めた。
途端にバクに振り下ろされる手の中の禍々しい光に、咄嗟に体が動く。気づいたときには顎を掴む兄上のその手を振り払い、僕は無意識に庇うようにしてバクの前に飛び出していた。
「バクっっ!!!」
一瞬にして、禍々しい光が部屋全体を包み込む。途端に視界が、ぐにゃりと歪んだ。
「バ、ク……ッ!よか、」
プキュウ!
「バク…?」
プキュウ!キュウゥ??
目覚めたバクがおかしい。まるで、僕の言葉が理解できない… そんな感じで、、そのつぶらな瞳をひたすらパチパチ瞬きしながらこの場にそぐわず愛らしい声で甘えるように鳴く…。
その姿はあまりにも…
「バ、バク…!?」
小動物…いや、幼獣そのもので、
じゃらりと鎖が重くのし掛かる。動けない体でバクに必死に駆け寄ろうとするも動くこともできなくて、
(体が…… 、重い…っ)
「バ、ク……ッ、」
霞む意識の中、辛うじて保つ意識の中、床を這いながらバクに寄る。所々で意識が飛びそうになりつつ、バクの手を握る。
(……ち、からが… はい、らな…い…)
くっくっと笑いながら近づいてくる、聞こえる衣擦れの音に重くなる頭をなんとか少しだけ持ち上げると、目の前には凍えるような冷たい瞳に、口角をつり上げる兄上が… 立っていた──。
唐突に現れたそれは兄上の腕に噛みついた。
それを心底、つまらなさげに見つめると兄上はブンッとその腕を払い、
ブモッッ!!
バクが壁に叩きつけられる──。
「───ッ!?バクっつ!!!」
押さえつけていた片方の手が離れたことで、身を捩り暴れることでそこから抜け出すことができた…。プキュッと一声鳴いて動かなくなるバクの様子にドクンッと鼓動が跳ねる。鼓動がドクドクと大きく動き、微かに手先が震えた…
血相を変えて慌てて傍に駆け寄る。
「バク…!?バク…ッ!嫌だ… そんな、バク、どうして…!」
ガクガクと小刻みに震える体は… どんなに叱咤しても震えが止まらず。
(これ以上、誰も傷つけたくないのに… 僕のせいでバクが……!!!)
「愚かな…!愛し子の守り手である神獣が随分と落ちぶれたものだ!!そんな微弱な力ごときで何ができる?ふっ、はははっ!実に滑稽な!!…己のその不甲斐なさを思い知るがいい!!!」
ぎらぎらと光る眼で見下ろし、禍々しい赤黒い光をその手にバクに振り下ろそうとする兄上の腕に飛びついた。
「やめて…ッ!」
──バシッ!
「ええいっ!邪魔だ!!」
「ぅぐ…っ!」
けれど、それはすぐに払い除けられる。そして、勢いよく壁際に向かって投げられた僕がその衝撃で咳き込んでいると、不意に頭上に影が差す──。
「……悔しいか?人の子よ」
「く…っ、」
兄上の指先で顎を持ち上げられて、いやいや顔をあげる。
「侮辱に満ちた表情ほど愉快なものはない。だが、この私の手を煩わせるなど不快だ。せっかくの余興が…こんな落ちぶれた神獣によって邪魔をされるとは。まったく、興醒めだな」
『───だが、』
ヒタリ、とその瞳が不気味に歪められる。そして目を窄めるとさらに笑みを深めた。
途端にバクに振り下ろされる手の中の禍々しい光に、咄嗟に体が動く。気づいたときには顎を掴む兄上のその手を振り払い、僕は無意識に庇うようにしてバクの前に飛び出していた。
「バクっっ!!!」
一瞬にして、禍々しい光が部屋全体を包み込む。途端に視界が、ぐにゃりと歪んだ。
「バ、ク……ッ!よか、」
プキュウ!
「バク…?」
プキュウ!キュウゥ??
目覚めたバクがおかしい。まるで、僕の言葉が理解できない… そんな感じで、、そのつぶらな瞳をひたすらパチパチ瞬きしながらこの場にそぐわず愛らしい声で甘えるように鳴く…。
その姿はあまりにも…
「バ、バク…!?」
小動物…いや、幼獣そのもので、
じゃらりと鎖が重くのし掛かる。動けない体でバクに必死に駆け寄ろうとするも動くこともできなくて、
(体が…… 、重い…っ)
「バ、ク……ッ、」
霞む意識の中、辛うじて保つ意識の中、床を這いながらバクに寄る。所々で意識が飛びそうになりつつ、バクの手を握る。
(……ち、からが… はい、らな…い…)
くっくっと笑いながら近づいてくる、聞こえる衣擦れの音に重くなる頭をなんとか少しだけ持ち上げると、目の前には凍えるような冷たい瞳に、口角をつり上げる兄上が… 立っていた──。
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