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- 腐敗した王国と傀儡の王 -

『腐敗した王国と - 歪な願い - 』

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手で庇いたくても頭上で一纏めに押さえつけられて、身動きができない…っ

泣きたくないッ そう思うのに… 涙が止まらなくて、視界が滲んでいく

『───我は闇だ。闇そのものだ。【闇堕ち魔法使いの始祖】やら、【影】とも呼ばれているが、我をそんなもので一括りにするなど…嗤わせてくれる!我は…そんな純粋なる闇ではなく、あらゆる万物の心の闇を糧に蝕み侵蝕し、媒体となる宿主たる器を使い、混沌たる世界を招くモノ…』


頭に響く… それ・・は直接、頭に入ってくる。

(身体は、兄上だけど… 兄上じゃない?)

頭に直接語りかけてくるその声に、事実にほんの少し安堵する。


「……お前が絶望する度に闇は一層、力を増していく」

ニタリと歪んだ唇が近づいてくる… ハッとして顔を背けようとするけれど、思うように動けないッ

「王宮というのは昔から… そうだ。王に忠誠を誓おうがその心は全て【偽り】、内心自分の利になるかどうかしか誰も考えていない。人間とはそういう生き物だ。…だから、簡単に足元を掬われるのだ。魑魅魍魎ちみもうりょうとはよく言ったものだ…。溢れる魔窟と例えてもさほど変わらないと思わんか?

今もそうだ… 私腹を肥やし、身の保身に走る腐り切った王侯貴族のどす黒い欲望の礎。それがまた我に力を与えることも知らず」

───実に、人間は愚かだ。


「………っ」

「己の欲に忠実過ぎて、これほど愉快な生き物は… お前たち、人間くらいだろう。知っているか?我は確かに復活の兆しを見せている。だが、実際に其方を陥れたのは他でも無い… 人間だ!はッ、は…っ!」

「そ、んな…!嘘です!!デタラメな…!!!」

身を捩って、睨みつける。それを愉しむようにその目を窄めた。

「先に提案を出したのは我だ。しかし、お前たち、人間は実に面白い…!忠誠とやらはどこに行ったのか、我が唆せば簡単に堕ちたぞ?」

「…………」

「本当は皆、望んでいるのだ。何が正義で何が悪なのか。そんなことはどうでもいい、と。望むのは自分の身の保身と自分の利。ルールなど邪魔なだけだとな…。」

「そ、れは…!どういう… ッ」

「この国は表向きには豊かに見えるだろうが、民はどう考えていると思う?全てが裕福なわけじゃない。光あるところに闇があり。裕福なところがあれば貧しい暮らしをしている人間もいる。貧富の差があるのは当然のことだろう?

───だが、

そんな彼らがどうやって生計を立てていると思う?どうやって、生きてきたと思う?なに、考えなくてもわかるだろう?親は子を売り、貧しい人間は盗みを働き、生計を立てていた」


知っていたか?そう紡がれる言葉に体が震える。


「だが、それもお前の兄が即位した途端に法が変わり、無法地帯だったスラム街に法というメスを入れたのだ。横行していた人身売買もなくなった。どんな理由があろうと貧しさ故に子を売ったことが知られば捕まるのだからな!故に、貧困は増した。そして売られた子を使って魔法の実験に使っていた闇堕ちの魔法使いたちもまた手が出せなくなった。お前の兄が王宮で一斉に粛清を行ったせいで私腹を肥やした家臣たちが重い処罰を受けた。誰もが、ルールなんて望んでいない。処罰なんて望んでいない。

  皆、望んでいるものは… ただ、 一つ。

犯罪を犯罪とせず、法を認めない規律もない無法地帯… 合法的な犯罪国家に変わること。

───そう、この国は…

とっくに腐っていたのだよ」


頭が… 全てが、真っ白になった。
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