110 / 117
- 腐敗した王国と傀儡の王 -
『腐敗した王国と - 歪な願い - 』
しおりを挟む
手で庇いたくても頭上で一纏めに押さえつけられて、身動きができない…っ
泣きたくないッ そう思うのに… 涙が止まらなくて、視界が滲んでいく
『───我は闇だ。闇そのものだ。【闇堕ち魔法使いの始祖】やら、【影】とも呼ばれているが、我をそんなもので一括りにするなど…嗤わせてくれる!我は…そんな純粋なる闇ではなく、あらゆる万物の心の闇を糧に蝕み侵蝕し、媒体となる宿主たる器を使い、混沌たる世界を招くモノ…』
頭に響く… それは直接、頭に入ってくる。
(身体は、兄上だけど… 兄上じゃない?)
頭に直接語りかけてくるその声に、事実にほんの少し安堵する。
「……お前が絶望する度に闇は一層、力を増していく」
ニタリと歪んだ唇が近づいてくる… ハッとして顔を背けようとするけれど、思うように動けないッ
「王宮というのは昔から… そうだ。王に忠誠を誓おうがその心は全て【偽り】、内心自分の利になるかどうかしか誰も考えていない。人間とはそういう生き物だ。…だから、簡単に足元を掬われるのだ。魑魅魍魎とはよく言ったものだ…。溢れる魔窟と例えてもさほど変わらないと思わんか?
今もそうだ… 私腹を肥やし、身の保身に走る腐り切った王侯貴族のどす黒い欲望の礎。それがまた我に力を与えることも知らず」
───実に、人間は愚かだ。
「………っ」
「己の欲に忠実過ぎて、これほど愉快な生き物は… お前たち、人間くらいだろう。知っているか?我は確かに復活の兆しを見せている。だが、実際に其方を陥れたのは他でも無い… 人間だ!はッ、は…っ!」
「そ、んな…!嘘です!!デタラメな…!!!」
身を捩って、睨みつける。それを愉しむようにその目を窄めた。
「先に提案を出したのは我だ。しかし、お前たち、人間は実に面白い…!忠誠とやらはどこに行ったのか、我が唆せば簡単に堕ちたぞ?」
「…………」
「本当は皆、望んでいるのだ。何が正義で何が悪なのか。そんなことはどうでもいい、と。望むのは自分の身の保身と自分の利。ルールなど邪魔なだけだとな…。」
「そ、れは…!どういう… ッ」
「この国は表向きには豊かに見えるだろうが、民はどう考えていると思う?全てが裕福なわけじゃない。光あるところに闇があり。裕福なところがあれば貧しい暮らしをしている人間もいる。貧富の差があるのは当然のことだろう?
───だが、
そんな彼らがどうやって生計を立てていると思う?どうやって、生きてきたと思う?なに、考えなくてもわかるだろう?親は子を売り、貧しい人間は盗みを働き、生計を立てていた」
知っていたか?そう紡がれる言葉に体が震える。
「だが、それもお前の兄が即位した途端に法が変わり、無法地帯だったスラム街に法というメスを入れたのだ。横行していた人身売買もなくなった。どんな理由があろうと貧しさ故に子を売ったことが知られば捕まるのだからな!故に、貧困は増した。そして売られた子を使って魔法の実験に使っていた闇堕ちの魔法使いたちもまた手が出せなくなった。お前の兄が王宮で一斉に粛清を行ったせいで私腹を肥やした家臣たちが重い処罰を受けた。誰もが、ルールなんて望んでいない。処罰なんて望んでいない。
皆、望んでいるものは… ただ、 一つ。
犯罪を犯罪とせず、法を認めない規律もない無法地帯… 合法的な犯罪国家に変わること。
───そう、この国は…
とっくに腐っていたのだよ」
頭が… 全てが、真っ白になった。
泣きたくないッ そう思うのに… 涙が止まらなくて、視界が滲んでいく
『───我は闇だ。闇そのものだ。【闇堕ち魔法使いの始祖】やら、【影】とも呼ばれているが、我をそんなもので一括りにするなど…嗤わせてくれる!我は…そんな純粋なる闇ではなく、あらゆる万物の心の闇を糧に蝕み侵蝕し、媒体となる宿主たる器を使い、混沌たる世界を招くモノ…』
頭に響く… それは直接、頭に入ってくる。
(身体は、兄上だけど… 兄上じゃない?)
頭に直接語りかけてくるその声に、事実にほんの少し安堵する。
「……お前が絶望する度に闇は一層、力を増していく」
ニタリと歪んだ唇が近づいてくる… ハッとして顔を背けようとするけれど、思うように動けないッ
「王宮というのは昔から… そうだ。王に忠誠を誓おうがその心は全て【偽り】、内心自分の利になるかどうかしか誰も考えていない。人間とはそういう生き物だ。…だから、簡単に足元を掬われるのだ。魑魅魍魎とはよく言ったものだ…。溢れる魔窟と例えてもさほど変わらないと思わんか?
今もそうだ… 私腹を肥やし、身の保身に走る腐り切った王侯貴族のどす黒い欲望の礎。それがまた我に力を与えることも知らず」
───実に、人間は愚かだ。
「………っ」
「己の欲に忠実過ぎて、これほど愉快な生き物は… お前たち、人間くらいだろう。知っているか?我は確かに復活の兆しを見せている。だが、実際に其方を陥れたのは他でも無い… 人間だ!はッ、は…っ!」
「そ、んな…!嘘です!!デタラメな…!!!」
身を捩って、睨みつける。それを愉しむようにその目を窄めた。
「先に提案を出したのは我だ。しかし、お前たち、人間は実に面白い…!忠誠とやらはどこに行ったのか、我が唆せば簡単に堕ちたぞ?」
「…………」
「本当は皆、望んでいるのだ。何が正義で何が悪なのか。そんなことはどうでもいい、と。望むのは自分の身の保身と自分の利。ルールなど邪魔なだけだとな…。」
「そ、れは…!どういう… ッ」
「この国は表向きには豊かに見えるだろうが、民はどう考えていると思う?全てが裕福なわけじゃない。光あるところに闇があり。裕福なところがあれば貧しい暮らしをしている人間もいる。貧富の差があるのは当然のことだろう?
───だが、
そんな彼らがどうやって生計を立てていると思う?どうやって、生きてきたと思う?なに、考えなくてもわかるだろう?親は子を売り、貧しい人間は盗みを働き、生計を立てていた」
知っていたか?そう紡がれる言葉に体が震える。
「だが、それもお前の兄が即位した途端に法が変わり、無法地帯だったスラム街に法というメスを入れたのだ。横行していた人身売買もなくなった。どんな理由があろうと貧しさ故に子を売ったことが知られば捕まるのだからな!故に、貧困は増した。そして売られた子を使って魔法の実験に使っていた闇堕ちの魔法使いたちもまた手が出せなくなった。お前の兄が王宮で一斉に粛清を行ったせいで私腹を肥やした家臣たちが重い処罰を受けた。誰もが、ルールなんて望んでいない。処罰なんて望んでいない。
皆、望んでいるものは… ただ、 一つ。
犯罪を犯罪とせず、法を認めない規律もない無法地帯… 合法的な犯罪国家に変わること。
───そう、この国は…
とっくに腐っていたのだよ」
頭が… 全てが、真っ白になった。
11
お気に入りに追加
3,783
あなたにおすすめの小説
小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~
朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」
普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。
史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。
その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。
外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。
いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。
領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。
彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。
やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。
無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。
(この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)
運命を変えるために良い子を目指したら、ハイスペ従者に溺愛されました
十夜 篁
BL
初めて会った家族や使用人に『バケモノ』として扱われ、傷ついたユーリ(5歳)は、階段から落ちたことがきっかけで神様に出会った。
そして、神様から教えてもらった未来はとんでもないものだった…。
「えぇ!僕、16歳で死んじゃうの!?
しかも、死ぬまでずっと1人ぼっちだなんて…」
ユーリは神様からもらったチートスキルを活かして未来を変えることを決意!
「いい子になってみんなに愛してもらえるように頑張ります!」
まずユーリは、1番近くにいてくれる従者のアルバートと仲良くなろうとするが…?
「ユーリ様を害する者は、すべて私が排除しましょう」
「うぇ!?は、排除はしなくていいよ!!」
健気に頑張るご主人様に、ハイスペ従者の溺愛が急成長中!?
そんなユーリの周りにはいつの間にか人が集まり…
《これは、1人ぼっちになった少年が、温かい居場所を見つけ、運命を変えるまでの物語》
【完結】もふもふ獣人転生
*
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。
ちっちゃなもふもふ獣人と、攻略対象の凛々しい少年の、両片思い? な、いちゃらぶもふもふなお話です。
本編完結しました!
おまけをちょこちょこ更新しています。
第12回BL大賞、奨励賞をいただきました、読んでくださった方、応援してくださった方、投票してくださった方のおかげです、ほんとうにありがとうございました!
目覚めたそこはBLゲームの中だった。
慎
BL
ーーパッパー!!
キキーッ! …ドンッ!!
鳴り響くトラックのクラクションと闇夜を一点だけ照らすヘッドライト‥
身体が曲線を描いて宙に浮く…
全ての景色がスローモーションで… 全身を襲う痛みと共に訪れた闇は変に心地よくて、目を開けたらそこは――‥
『ぇ゙ッ・・・ ここ、どこ!?』
異世界だった。
否、
腐女子だった姉ちゃんが愛用していた『ファンタジア王国と精霊の愛し子』とかいう… なんとも最悪なことに乙女ゲームは乙女ゲームでも… BLゲームの世界だった。
バッドエンドの異世界に悪役転生した僕は、全力でハッピーエンドを目指します!
あ
BL
16才の初川終(はつかわ しゅう)は先天性の心臓の病気だった。一縷の望みで、成功率が低い手術に挑む終だったが……。
僕は気付くと両親の泣いている風景を空から眺めていた。それから、遠くで光り輝くなにかにすごい力で引き寄せられて。
目覚めれば、そこは子どもの頃に毎日読んでいた大好きなファンタジー小説の世界だったんだ。でも、僕は呪いの悪役の10才の公爵三男エディに転生しちゃったみたい!
しかも、この世界ってバッドエンドじゃなかったっけ?
バッドエンドをハッピーエンドにする為に、僕は頑張る!
でも、本の世界と少しずつ変わってきた異世界は……ひみつが多くて?
嫌われ悪役の子どもが、愛されに変わる物語。ほのぼの日常が多いです。
◎体格差、年の差カップル
※てんぱる様の表紙をお借りしました。
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
BLゲームのモブとして転生したはずが、推し王子からの溺愛が止まらない~俺、壁になりたいって言いましたよね!~
志波咲良
BL
主人公――子爵家三男ノエル・フィニアンは、不慮の事故をきっかけに生前大好きだったBLゲームの世界に転生してしまう。
舞台は、高等学園。夢だった、美男子らの恋愛模様を壁となって見つめる日々。
そんなある日、推し――エヴァン第二王子の破局シーンに立ち会う。
次々に展開される名シーンに感極まっていたノエルだったが、偶然推しの裏の顔を知ってしまい――?
「さて。知ってしまったからには、俺に協力してもらおう」
ずっと壁(モブ)でいたかったノエルは、突然ゲーム内で勃発する色恋沙汰に巻き込まれてしまう!?
□
・感想があると作者が喜びやすいです
・お気に入り登録お願いします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる