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- 運命の分岐点と守りたいもの -
『最後の慈悲と - 祈り - 』
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『皇太子は… 納得がいかなかった。魔素持ちで黒い髪を持って生まれた以外、自分たちと何ら変わらないのに、聞く耳を持たない父親に、兄弟たちに、ファルス皇国の民たちに… 怒りを覚え、そして失望した。そして引き金となったのが国の領土拡大のための戦だった。
彼はこう思ったのでしょうね。
神の加護さえなければ違えることはなかったんじゃないかと。ファルス皇国の民たちが他国の者を見下し、選民思想を持つことはなかったのではないかと…。
そして、彼はあの日。
理から逸脱した彼らの時を本来の時間の流れに戻すためにそれを実行したのよ』
「…っ!それ、って… !まさか」
『そう、そんなことをすれば時の流れに則って、加護を受けている彼自身も、命の終わりを迎えることになる…。でも、そんな自分の命も顧みないほど、彼はきっとファルス皇国に失望していたのね。そして、不遇な環境に置かれていた弟の自由を望んでいたこともあった… 彼にとってはそれだけでも行動に移すには十分な理由だった』
でも、と続ける…。
『彼にとって、誤算だったのはあの子に時の神の加護がなかったこと。あの子は魔素を強く持って生まれたが為に、免疫力は疎かあの子だけ流れる時の流れが違った。魔素の影響で年をとるのが遅いのよ。それに加え、しばらくは食事を取らなくても魔素で数日は補える。魔素の副産物と言ったところかしら?その影響は体質にまで及んだ。だから、彼は時の神の加護を必要とするまでもなく、丈夫な体質だったのよ。
その嬉しい誤算反面、滅びゆく国に一人残される弟が心配だった。大切な可愛い弟だったあの子に自身の死に様を見せたくなかった。
……だから、時の神に慈悲を願った。
どうか大事な弟に自身の死に様を見せたくないと、そしてファルス皇国の民が滅びた暁には弟の自由を、と… そして神はそれを聞き入れた』
『本来ならば戻った時間の法則に則って、皇太子も他の者と変わらない金の粒の分子となって消えるはずだった。でも、それだと彼の最後の祈りが叶えられない。だから、時の神は皇太子の周りを流れる時を止めた。そして、あることを条件に最後の慈悲を与えたの』
「最後の、慈悲…?」
『そう、その最後の慈悲は彼の周りを流れる時間を止める代わりに、あの子を部屋に入れて神術をかける。そして彼が祭壇で自らの心臓を短剣で止めることで、閉じ込めた部屋にかけた神術を時の神が解いて、あの子自身が自由に部屋を出られるようにするというものだった。
───本来の時の流れを加護で変えてしまった上に、
再度、時の流れを変えることで彼は他の者たちのように光の分子となって輪廻の流転に入ることができない。それでも、彼は弟の自由のためにそれを望んだのよ。…自らを犠牲にしてね』
「そ、んな…っ! そんなことって…!!!」
『でも、それを時の神も認めた。認めざるを得なかった…。魔素を持ち、不遇な環境に強いられながらも、人を怨むこともなく、真っ白な綺麗な魂を持つあの子に神々は精霊たちは愛しく感じていた。
あの子の取り巻く環境に怒りさえ覚えていた彼らもまた皇太子の考えを否定する気にはなれなかった。あの子が自由になるならば、あの子がやっと幸せになれるならば…とそんな想いで彼らはあの子の気持ちも考えずにそれを呑んでしまったのよ』
馬鹿よね、と漏らすメラフィルは鼻で笑った。
彼はこう思ったのでしょうね。
神の加護さえなければ違えることはなかったんじゃないかと。ファルス皇国の民たちが他国の者を見下し、選民思想を持つことはなかったのではないかと…。
そして、彼はあの日。
理から逸脱した彼らの時を本来の時間の流れに戻すためにそれを実行したのよ』
「…っ!それ、って… !まさか」
『そう、そんなことをすれば時の流れに則って、加護を受けている彼自身も、命の終わりを迎えることになる…。でも、そんな自分の命も顧みないほど、彼はきっとファルス皇国に失望していたのね。そして、不遇な環境に置かれていた弟の自由を望んでいたこともあった… 彼にとってはそれだけでも行動に移すには十分な理由だった』
でも、と続ける…。
『彼にとって、誤算だったのはあの子に時の神の加護がなかったこと。あの子は魔素を強く持って生まれたが為に、免疫力は疎かあの子だけ流れる時の流れが違った。魔素の影響で年をとるのが遅いのよ。それに加え、しばらくは食事を取らなくても魔素で数日は補える。魔素の副産物と言ったところかしら?その影響は体質にまで及んだ。だから、彼は時の神の加護を必要とするまでもなく、丈夫な体質だったのよ。
その嬉しい誤算反面、滅びゆく国に一人残される弟が心配だった。大切な可愛い弟だったあの子に自身の死に様を見せたくなかった。
……だから、時の神に慈悲を願った。
どうか大事な弟に自身の死に様を見せたくないと、そしてファルス皇国の民が滅びた暁には弟の自由を、と… そして神はそれを聞き入れた』
『本来ならば戻った時間の法則に則って、皇太子も他の者と変わらない金の粒の分子となって消えるはずだった。でも、それだと彼の最後の祈りが叶えられない。だから、時の神は皇太子の周りを流れる時を止めた。そして、あることを条件に最後の慈悲を与えたの』
「最後の、慈悲…?」
『そう、その最後の慈悲は彼の周りを流れる時間を止める代わりに、あの子を部屋に入れて神術をかける。そして彼が祭壇で自らの心臓を短剣で止めることで、閉じ込めた部屋にかけた神術を時の神が解いて、あの子自身が自由に部屋を出られるようにするというものだった。
───本来の時の流れを加護で変えてしまった上に、
再度、時の流れを変えることで彼は他の者たちのように光の分子となって輪廻の流転に入ることができない。それでも、彼は弟の自由のためにそれを望んだのよ。…自らを犠牲にしてね』
「そ、んな…っ! そんなことって…!!!」
『でも、それを時の神も認めた。認めざるを得なかった…。魔素を持ち、不遇な環境に強いられながらも、人を怨むこともなく、真っ白な綺麗な魂を持つあの子に神々は精霊たちは愛しく感じていた。
あの子の取り巻く環境に怒りさえ覚えていた彼らもまた皇太子の考えを否定する気にはなれなかった。あの子が自由になるならば、あの子がやっと幸せになれるならば…とそんな想いで彼らはあの子の気持ちも考えずにそれを呑んでしまったのよ』
馬鹿よね、と漏らすメラフィルは鼻で笑った。
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