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- 王国の陰りと忌まわしき魔女の呪い -
『驚きと動揺と――‥ 嫌な予感』
しおりを挟む「……兄上?どうかされたんですか??」
兄上に突然抱きしめられるという突拍子のない行動に驚きつつも、その意図がわからず少し躊躇してから意を決して見上げてみると、
「いや… なんでもない」
そこには天井を仰いで溜め息つく兄上がいた。
・・・なんでもないって、じゃあ何でこっちを見ないんでしょうか??疲れたような深い溜め息が兄上から聞こえるのが少し気になるところですが…。
「ッ!?////」
そして今更ながら気づいてしまった。兄上に…抱きしめられている状況に───。
今の今まで気づかなかった自分はよほど鈍かったのか、先ほどまでの赤みがやっと顔から引いたと思ったと思っていたのに、見る見る自分の顔に再度、熱が集まるのを感じた。
「オーディット…?どうしたんだ、急に黙り込んで───…」
急に黙り込んだ僕に訝しげに声を掛ける兄は困惑した表情で…
(コツン…!)
「?……熱はなさそうだが」
「ひゃぁっ//!?」
兄上の声が不意に途切れたことに違和感を感じて上を見上げると、兄上の… 無駄に整った造形顔が目の前にドアップで現れ、後ろに体を引く前に兄上は額と額をくっつけた。驚きと羞恥心と混乱と… 様々な感情が入り混じり、思わず変な声を上げてしまいました。
………恥ずかしいッ///
「……………」
恥ずかしい… けど、
この状況が、大好きな兄上に… 尊敬する兄上に、大好きな家族に抱きしめられるのは… 満更でもなくて。ちょっと恥ずかしいけれど、
でも・・・
なかなか甘えたくても甘えられなくて、何だかんだで寂しくて、ずっと孤独感を拭えなくて。
だから、
ちょっとくらい、ほんの少しだけ。
今は… 今だけは……
甘えてもいいでしょうか───… 兄上?
ギュッ、
「……オーディット?」
兄上の声を無視し、その服の裾を握りしめてぐりぐりと頭を擦り付ける。
「───ッ!」
突然の僕の行動に驚いたのか、兄上が息を潜めて微かに身じろぎするのを感じた。
やっぱり、怒ったのでしょうか…?
兄上の服を握りしめる僕の手が微かに震える。一度ギュッと目を瞑り、それから意を決して兄上を見上げると…
「───…え?」
一旦、僕から体を離した兄上は床に片膝をつき、僕の手を取ると、その先に口づけを落とした。
一瞬、自身の身に何が起きたのかわからなかった。
兄上の突然の行動に、驚きと動揺が同時に走る。それは───… かつて、前の世界で乙女ゲームの中の騎士がヒロインの聖女に愛と忠誠を誓う、そのしぐさに似ていて…
「え゙、えーっと… 兄上?」
変な汗が流れるのを感じた。
嫌な予感が… その背中を駆ける───。
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