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- 王国の陰りと忌まわしき魔女の呪い -

『───かつては世界を守る聖女だった』

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ひそ…っ

「バク」

城の回廊を早歩きで歩いていたところで、ちょうどいい死角を見つけるとバサッと身を翻し、その名を呼ぶ…

『ジキルドのこと?』

「ええ、少し… 気になることがあるんです。先ほどの兄上は… 少し様子が違いました」

トン!と壁に背を凭れて、影から具現したバクを両手で持ち上げ、棚の上にトン、と置く

『……確かに、イヤな感じがしたね』

あれは僕らとも違う力を感じたと言うバクは小さく呟きました。

『まさか… いや、そんなはずは…』

「バク、もしかして何か心当たりが?」

『ううん。ただ… 』

「ただ?」

不意に途切れたバクの言葉に首を傾げてその先を促す

『もしかしたら、ジキルドは… 闇の魔女の呪いに掛かってるかもしれない』

僕やアイツが感知しにくい力となると、闇の魔女しか考えられない… そう漏らすバクに僕は尚も首を傾げる。

「アイツって…?」

『いや、えっと… ま、まぁ今はそのことは置いといて!と、とにかく、もしそうだとしたらそれは最悪な事態だよ!』

それは… どういう?

僕の質問をはぐらかされた感じは否めませんが、バクのいう【闇の魔女】という単語が些か気になったので、追求は後にすることにしました。

『闇の魔女とは… 闇に堕ちた巫女とも、バルディモスの… 影とも言われている。どちらにしても、最悪な事態に変わりない』

少し言葉を詰まらせたバクは僕に真摯に見つめてそして思い詰めたように、その瞳を切なげに揺らしながら悲壮感漂う表情で小さく、けれどハッキリとした重みを感じる声で告げました。

「バルディモスの… 影。闇の魔女…」

『闇の魔女はかつて、太陽の国の巫女の一人であり、月の神子と相反する力を持ったこの世界を守る聖女だった。』


「バク…?」

『そう。だけど今は… 』

何か言いたそうにしたバクに問いかけてもバクは首を横に振るだけで答えてくれない

『僕が言いたいのはね、闇の魔女=闇の巫女。彼女に呪いを受けたならジキルドの異変にも納得いく。…というよりも、それしか考えられない。でなけきゃ、僕やアイツが感知できるはず』


「どうしたら、兄上を現状から救うことが出来ますか?」

兄上を助けたい、そう口にするとバクは表情を曇らせました。

『それはまた… 難しいこと言うねルティ。現状の呪いを最小限に抑えることは出来ても、元を断たなければ意味がない。それほど彼女の力は強い。最小限に抑えることは出来てもそれは一時的なものに過ぎない。呪いを打ち消すには闇の魔女を倒すしか方法はないよ』

そんな…と落胆する僕にでも、とバクは続ける

『でも、キミなら… ルティなら彼女と戦える力が――‥ ううん、違うね。ルティなら彼女を救えるかもしれない』

バクの口から出た言葉に衝撃を受けた僕は知らず知らず目を大きく見開いていました。

「……どういうことですか?」

『ルティの生来の持つ力と彼女の持つ力は… 相反する力であり、似た力でもある。キミと彼女は… よく似ているよルティ』

「相反する力…?」

『そう、なぜなら彼女は… ううん、此処から先はキミ自身が知らなきゃいけない』


相反する力とは一体どういうことか、意味を問うけれどもバクは首を横に振り、自分で知らなくてはいけないの一点張りで、それ以上追求したところで無駄だと判断した僕は話題を変えることにしました。

「それで兄上を救う方法は… 」

そこで、ふとある考えが頭に過ぎった。いや、そんなまさか…と否定するように頭を横に振る。
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