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- 謎多き執事の秘密ごと -
『束の間の過去の思い出と - 後悔 - 』
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けれど、それを宥めるようにレオンが僕の頭を撫でできた。
「……レオン?」
ハッと顔を上げると、目を細めたレオンの瞳とかち合う。レンズ越しに僕を見つめるその眼差しは優しくて… ほんの少し瞠目してしまった。
『あの日のことは貴方が気にしなくても良いのです。あのとき、貴方は… 誘拐されそうになった姉君のソフィアお嬢様を助けようと、なさっただけではありませんか』
「───っ!」
あの日のことはあまり思い出したくないことなのに、レオンの言葉に動揺が思わず走る──。
「それは…っ」
だけど、僕が力を暴走させた事実は変わらない。
『アラン様、やはり貴方は… あのときには既に知っていたのですね?ご自分の魔力の属性が氷属性であることを──』
まさか、レオンに図星を当てられるとは思わなかった。けど、これ以上黙っておく必要もないと思った僕は重い口を開いた
「うん。レオンの言うとおりだよ」
小さかった頃を振り返って、少し困ったように笑う
「あの頃の僕も姉上も魔法というものにとても関心があったんだ。ほら、ダメだと言われたら余計に気になるものでしょ?それに、昔。母上に魔法を見せてもらったことがあったから…。だけど、幼いうちは魔力が不安定で安定していないことから魔法の属性を測る検査は初等部の年齢になってからと決まっている。
でも、あるとき姉上が父上がいないのを見計らって書斎室に忍び込んだときがあったんだ」
あのときは姉上を止めるつもりが、書斎室にあった魔法書に興味がいって、姉上と床に座り込んで気づいたら一緒に本を読んでたっけ。メイドの呼ぶ声に、窓を見たら夕日が暮れていて… そこで初めて時間がだいぶ経っていることに気づいて、見つかって二人揃って怒られたことを思い出す
「ふふっ、」
『……アラン様?』
急に笑い出した僕にレオンが怪訝な目を向けてくる
「いや、昔… 父上の書斎室に姉上と一緒に忍び込んで見つかって二人で怒られたなって…」
『アラン様が…?意外ですね』
そう言うとレオンは少し驚いたように目を僅かに大きく見開いた。
「意外?」
僕が?と首を傾げるとレオンはええまぁ…と言葉を濁らせる。
『どちらかと言えば、その… アラン様はソフィアお嬢様のストッパー役を担っていたように思えたので』
少し答えに戸惑いを感じながら、僕は首を傾げる
「そうかなぁ?まあ、確かに今は姉上を諌めることが多いけど、僕も姉上に負けず本が大好きだからね。つい本のことになると…」
困ったように笑って誤魔化す
「だけど、姉上と一緒に読んだ魔法書は初心者用のものだったんだ。…たぶん父上が何れ僕や姉上に学ばせるために用意したものだと思う。それを一足先に僕と姉上は読んだのだけど」
ほら、読んだからには試したくなるものでしょ?と眉根を寄せて肩を落とす
「だから、それから数日経ってから父上たちの目を盗んで姉上の誘いに乗ってしまって… 二人で魔法書に書かれていた魔力の感じ方から試しにやってみたんだけど、僕にはそれが全然わからなくて姉上はすぐに出来たんだけど…」
そう、あの日は僕だけ苦戦して、なのに姉上はあっさり出来てしまって… 少し拗ねた記憶がある。
「また別の日に二人で試したよ。…でも、姉上は次のステップ… 魔力の練り方もすぐに出来て僕には出来なかった。姉上は個々それぞれやり方も感じ方も違うからって、魔力が目覚めるのも一人一人違うからって。それにこれは私たちが見た本を見よう見まねでやっているだけで、まだ魔法の授業も属性の検査を受けていないからアランが気落ちする必要なんてないのよ?って慰めてくれたんだ」
僕の告白にレオンは『ソフィアお嬢様とそのようなことがあったのですね』と、僕が語る姉上との思い出の話をどこか微笑ましげに聞いてくれている…
「でも、」
『…アラン様?』
思いつめた表情の僕に何かに気づいたらしいレオンが訝しげな表情になる
「でも…っ!違うんだ。本当は…。」
あの日、本当のことを告げていたら───…。そんな後悔が今も押し寄せていた。
「……レオン?」
ハッと顔を上げると、目を細めたレオンの瞳とかち合う。レンズ越しに僕を見つめるその眼差しは優しくて… ほんの少し瞠目してしまった。
『あの日のことは貴方が気にしなくても良いのです。あのとき、貴方は… 誘拐されそうになった姉君のソフィアお嬢様を助けようと、なさっただけではありませんか』
「───っ!」
あの日のことはあまり思い出したくないことなのに、レオンの言葉に動揺が思わず走る──。
「それは…っ」
だけど、僕が力を暴走させた事実は変わらない。
『アラン様、やはり貴方は… あのときには既に知っていたのですね?ご自分の魔力の属性が氷属性であることを──』
まさか、レオンに図星を当てられるとは思わなかった。けど、これ以上黙っておく必要もないと思った僕は重い口を開いた
「うん。レオンの言うとおりだよ」
小さかった頃を振り返って、少し困ったように笑う
「あの頃の僕も姉上も魔法というものにとても関心があったんだ。ほら、ダメだと言われたら余計に気になるものでしょ?それに、昔。母上に魔法を見せてもらったことがあったから…。だけど、幼いうちは魔力が不安定で安定していないことから魔法の属性を測る検査は初等部の年齢になってからと決まっている。
でも、あるとき姉上が父上がいないのを見計らって書斎室に忍び込んだときがあったんだ」
あのときは姉上を止めるつもりが、書斎室にあった魔法書に興味がいって、姉上と床に座り込んで気づいたら一緒に本を読んでたっけ。メイドの呼ぶ声に、窓を見たら夕日が暮れていて… そこで初めて時間がだいぶ経っていることに気づいて、見つかって二人揃って怒られたことを思い出す
「ふふっ、」
『……アラン様?』
急に笑い出した僕にレオンが怪訝な目を向けてくる
「いや、昔… 父上の書斎室に姉上と一緒に忍び込んで見つかって二人で怒られたなって…」
『アラン様が…?意外ですね』
そう言うとレオンは少し驚いたように目を僅かに大きく見開いた。
「意外?」
僕が?と首を傾げるとレオンはええまぁ…と言葉を濁らせる。
『どちらかと言えば、その… アラン様はソフィアお嬢様のストッパー役を担っていたように思えたので』
少し答えに戸惑いを感じながら、僕は首を傾げる
「そうかなぁ?まあ、確かに今は姉上を諌めることが多いけど、僕も姉上に負けず本が大好きだからね。つい本のことになると…」
困ったように笑って誤魔化す
「だけど、姉上と一緒に読んだ魔法書は初心者用のものだったんだ。…たぶん父上が何れ僕や姉上に学ばせるために用意したものだと思う。それを一足先に僕と姉上は読んだのだけど」
ほら、読んだからには試したくなるものでしょ?と眉根を寄せて肩を落とす
「だから、それから数日経ってから父上たちの目を盗んで姉上の誘いに乗ってしまって… 二人で魔法書に書かれていた魔力の感じ方から試しにやってみたんだけど、僕にはそれが全然わからなくて姉上はすぐに出来たんだけど…」
そう、あの日は僕だけ苦戦して、なのに姉上はあっさり出来てしまって… 少し拗ねた記憶がある。
「また別の日に二人で試したよ。…でも、姉上は次のステップ… 魔力の練り方もすぐに出来て僕には出来なかった。姉上は個々それぞれやり方も感じ方も違うからって、魔力が目覚めるのも一人一人違うからって。それにこれは私たちが見た本を見よう見まねでやっているだけで、まだ魔法の授業も属性の検査を受けていないからアランが気落ちする必要なんてないのよ?って慰めてくれたんだ」
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「でも、」
『…アラン様?』
思いつめた表情の僕に何かに気づいたらしいレオンが訝しげな表情になる
「でも…っ!違うんだ。本当は…。」
あの日、本当のことを告げていたら───…。そんな後悔が今も押し寄せていた。
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