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- 謎多き執事の秘密ごと -

『スコットの逃亡と置いていかれた僕』

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「だ、だって…ッ」

スコットが、と言おうとしてハッとする。
……そうだ。スコットは僕以外に視えない。


あいつは、と部屋を見渡すと壁に手をかけて窓枠に足を置くスコットの姿。

「ちょ、っ」

あんたのせいでこうなってんだけどっ!!と文句を言おうとしたところで気づいたあいつが振り返る。
けど、あいつはそんな僕を視界に入れると手をひらりと振って、わりぃ☆と、ついでとばかりに片目をパチンと瞑ってウィンクを飛ばす。

───そして僕が文句を言う暇もなく、あいつはひらりと身軽に窓枠を乗り越えるや… つまりの言うところ、逃げた。


「・・・・」

は、はぁあああ!?し、信じられないっっ!!!あいつ自分だけ逃げたんだけど!?そ、それもっこの状況の僕を置いて!!

信じられない、マジで。本気でありえないんだけど。──っと唖然とヤツが逃げた窓をいつまでもガン見していたら、レオンが首を傾げた。


『……?』

『あちらの窓がどうかしたんですか?』


僕がいつまでも窓を見るものだからレオンが不思議がって同じく窓を見るも、当然視えるはずがなく──。


(…あ。そっか。レオンにはスコットが視えないんだっけ)

「ううん…。なんでもない。僕の気のせいだったみたい」


いつの間にか機嫌が直っているレオンに、ホッとしつつもこの何かと鋭い王家直属の派遣執事になぜこうも僕が振り回されなければならないのかと微かに眉を寄せる。だけど、いつも何だかんだで僕を助けてくれるのもこの執事なわけで… 胸につっかえるこのモヤモヤの正体は一体、何なのか。

───僕にはわからなかった。
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