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- 謎多き執事の秘密ごと -
『僕には姉上も知らない秘密がある』
しおりを挟むはぁ、普段の僕はこんなんじゃないのに。レオンの前だと子供っぽくなってしまう僕自身に、つい嫌気がさしてしまう。
『そんな顔をしないで下さい。まるで私が貴方を苛めてるみたいじゃないですか』
一体どの口がそれを言うか、
気怠げにドアに凭れ掛かって腕を組むレオンは息を吐いて、肩を竦めると眼鏡のブリッジを指先で軽く押し上げた。
『……はぁ、これでも貴方の身を按じているんですよ』
そう言ってレオンは首を傾げる。
『だって、貴方ときたらこれでもかというくらい、いろいろトラブルや事件に巻き込まれてるじゃないですか。幼少期は姉君のソフィアお嬢様と間違われて誘拐件数が二桁を超えたと旦那様から聞いていますが』
「……っ」
それでもまだ否定なさるおつもりですか?とレンズの奥から目を窄めるレオンに言葉が出てこない。
僕だって、巻き込まれたくて巻き込まれたわけじゃない。いつも、向こうからやって来るのに…。理不尽だ!と言えば、今度は肩を竦められる。
『そもそも、その中の半分はご自分から首を突っ込んで巻き込まれたとか、』
自業自得じゃないですか、とお小言を言われる。
「……つい、気になって」
本当のことなど言えない為に、そう答えるしかなかった。そう、本好きが周知されているというのは現実問題いろいろ厄介である。誰よりも博識な僕と姉君の趣味の域を超えた本好きは誰でも知っているほど有名な話で、だから、ジャンル問わずで中には図鑑なども読破している。
つまりは毒や薬などの知識も知り尽くしていてその上、自分で言うのもなんだけど洞察力は良いほうだ。…だけど、問題はそこじゃない。別に僕は自分の知識を曝け出すつもりはない。なぜなら、僕や姉上のそれはただの趣味としか認識していないからだ。じゃあ、なんで自分から首を突っ込むってことになるのか…。それは、あの姉上にも父上にも話していない僕だけの秘密に関わる。それは───…
───…見えないモノたちが視える、ということだった。
別にそれだけなら、なんの問題もなかった。いや、視える自体、問題大アリなんだけど。
ま、誘拐の件はレオンが言ったとおり、なぜか姉上と…っていうか、女の子と間違われて攫われた回数がほとんどで。それ以外の、レオンが言っている事件や不可解な事故に自ら首を突っ込んで結果、巻き込まれてる件は… 十中八九はその僕の特殊な能力のせいだ。
別に僕だって本を読めればそれで満足だし。じゃあなんで現場に赴くのか…。
それは、僕が視える人間だと何処からか聞きつけた連中(霊達)が僕のところまでわざわざ来るばかりか、ああで、こうで!と詳細を語ったあげく、お前の力で無念を晴らしてくれ、解決してくれと懇願してくるからだ。
そう、最初こそは恐ろしかった。
僕以外に誰も視えていなくて、最初に知ったのは王家開催のパーティーに家族で参加したときのことだ。半透明の貴族服を着たでっぷり超えた男が姉上とぶつかったと思ったら、何事もなかったように姉上の体の中をスーッと通過した。
目の前で起きたソレが信じられなくて、しばらくの間、開いた口が塞がらなかったのを覚えている…。開いた口が塞がらないっていうのは、まさにこういうことを言うのだろうな…と後になってそう思った。
ただ呆然と立ち尽くし、姉上を凝視していると姉上は頭に『 ? 』を浮かべながら、呆れた表情で『まあ!アランってば、なんてマヌケ面を晒してるの?』と言った後に続け、『まあ、私に見惚れるのはわかるけど… 惚れちゃダメよ?』と、ニヤニヤしながらその口元を扇で隠し、
今、自分の身に何が起こったのか知る由もない姉上は呑気にそんなことを言った。
その姉上の様子から、周りを見ても…
誰もなにも反応を見せない。周りの貴族たちはいつも通りで──…
体調が悪いと父上に申し出て、すぐに公爵邸への帰路についたことはよく覚えている。
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