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『本の虫と - 趣味の領域 - 』

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けれど、父上の話を聞く限り、姉上は随分早い段階でお妃教育を終え、王宮書庫室に入り浸っていたことが窺える。

   それらを考えても…

恐らく姉上は本当に王宮書庫室に保管されている蔵書を全て読破されたのではないのでしょうか?

───もし、それが本当なら…

「父上、僕も姉上の捜索に参加させてください」

『だめだ。心配なのはわかるが、お前にはソフィアのフリをして王太子の婚約者を…』


「ええ、わかっています。

もちろん、それもそうですが… 父上のその話を聞く限り、姉上が事件に巻き込まれていることも視野にいれる必要があるかと」

『……どういうことだ?』

僕の言葉に父上は剣呑な眼差しを向ける…。

「僕や姉上の本好き、というのはそこらの本好きとは違う領域なんですよ。簡単に言えば趣味の域を、その範疇を超える… つまりは、そういうことです」

そう、知識というのは武器にもなる。ましてや、姉上は王宮書庫室に自由に立ち入りができ、持ち出し禁止の禁術書も閲覧した可能性があることも踏まえると、それを悪用しようと企む輩がいてもおかしくない。

    ……つまり、そういうことだ。

「それに、僕や姉上の本好きは今に始まったことではありません。その趣味の域を超える本好きというのは大抵の貴族なら一度は耳にしたことはあるかと。不本意ながら、僕と姉上の本好きは随分有名な話らしいですから」

その言葉に父上の表情が険しくなる。

「そんな本好きで有名な姉上が王太子殿下の婚約者になれば必然と王城に登城し、妃となるべくお妃教育を受けることは誰もがわかりきっていること。ましてや、そこに本好きで趣味は本を読破!!とか、言いそうなあの姉上ですよ?持ち出し禁止物や禁術書が保管されている王宮書庫室に入り浸ることは誰もが目に見えることだと思いますが」


『ぐ…っ!確かに、言われてみれば…』

そこは盲点だった、と項垂れる父上にさらに追い打ちかけるように僕は続ける。

「───これらのことを挙げると、今回の姉上の件をただの家出と片付けるのは些か早急すぎるかと。僕は思うのですが…」

それに、と父上の表情が強張るのを無視し、さらに続けた。
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